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禁断のスパイクタイヤ21世紀の雪道を走る

2023年03月05日 16時00分更新

 新車を買った情報2023、私は四本淑三です。本日の話題の中心と致しますのは、もうじき春だというのにスパイクタイヤ。というのもスパイクタイヤで困ったのは、毎年この季節だったからです。

 皆様ご存知の通り、現在はスタッドレスタイヤに取って替わられ、自動車ではほとんど使われておりません。金属の鋲が舗装を削るおかげで道路の補修費がかさみ、空を舞う粉塵が健康被害をもたらす。そうした問題から国の「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」により、1991年4月1日をもって国内メーカーの販売は終了しております。

 日本でスパイクタイヤの普及が始まったのはモータリゼーションが本格化した1960年代以降のこと。当初問題にならなかったのは舗装率の低さもあったでしょう。国交省のWebサイトによりますと、簡易舗装を含めた一般道の舗装率は2020年の全国平均が約82.5%。それに対して1970年は約15%でした。

 この粉塵問題が知れ渡ったのは、仙台市民による新聞への投稿だったのは有名な話でありまして、舗装化が進むにつれ、交通量の多い寒冷地都市部から問題が顕在化していったのであります。

 とはいえ当時はスパイクタイヤに替わるものがなく、簡単に廃止するわけにもいきません。「住民の健康」「交通の安全」どちらを守るのか喧々諤々の議論がございました。タイヤメーカーはスパイクの本数を減らす、突出量を抑えるといった努力をしつつ、ついには1982年にミシュランが最初のスタッドレスタイヤ「XM+S100」を発売。以降スタッドレスは年々高性能化してゆき、安価なビスカスカップリング式四駆の普及と相まって現在に至るわけであります。

 市民の声を真摯に聞いた行政担当者、スタッドレスの研究開発に注力した技術者、法や条例にまとめた国や地方の議会、みんなが真面目に知恵を出し合った結果として、現在のスタッドレスタイヤがあるのです。先人の努力に感謝しなければなりません。

原付二輪と自転車はスパイクタイヤOK

 ただ、規制の始まったタイミングと私の免許取得時期が重なっておりまして、私はスパイクタイヤで公道を運転した経験がありません。伝え聞くところによれば氷雪路でのグリップは、いまだスタッドレスとは比べ物にならないのだとか。そのトラクションやハンドリングとはいかなるものなのか。ここはぜひ伝説のタイヤで公道を走ってみたい。

 そこで昨年買ったNESTOのマウンテンバイクに装着してみたのであります。

 おいおい、スパイクタイヤは禁止されているんじゃないのか?

 そう思われる方もいらっしゃるでしょうが、大丈夫。原動機付二輪や軽車両は規制の対象に入っておりませんし、自動車のスパイクタイヤですら全面的には禁止されていません。消防や救急のような緊急車両、自衛隊車両や災害時の輸送車両、除雪車、身体障害者が運転する車両は不問です。

 規制を受けるのも指定地域のみで、北海道、東北六県、上信越、北陸地方など降雪地だけ。規制は自治体によって異なりますが、北海道の道央・道南地域では4月1日〜11月20日を「使用規制期間」として禁止。冬季の11月21日〜3月31日は「使用抑制期間」として、いわば努力義務のようなことになっております。

 それでいいのかという話ですが、これも無問題。雪や氷が舗装を覆っていればスパイクタイヤで走っても粉塵は出ません。だから規制されるのは積雪や凍結の状態にない舗装路のみ。実際のところ粉塵被害がひどかったのは、雪が消えた春先になってもスパイク履きっぱなしのクルマが多かったからであります。

 とはいえ路面状況が変わるたびにタイヤを交換するのは非現実的ですから、履きっぱなしで行けるスタッドレス一択となったわけです。そもそも自動車のスパイクタイヤを買おうと思っても、もう普通には入手できません。

 でも自転車のスパイクタイヤなら普通に買えてしまうんですな。

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