「同時代性・共有・愛着」の究極は音楽ライブ
細野 そしてライブ感と言えば当然、音楽のライブとは切っても切り離せません。
ぴあ総研が調べた2020年までのライブ市場のデータを見ると、この黄色いバーがステージ、いわゆるコンサートやライブを全部足したもので、2019年のコロナ禍前までは、市場規模が音楽(CDなど)の倍以上あるという流れで、2011年くらいから増加傾向にありました。
実際、私がコロナ禍の前によく聞いていたのは、「音楽は簡単には儲からないから、ライブで儲けていくんだ」という話でした。
その流れは残念ながら2020年からのコロナ禍によって完全に寸断されてしまい、今はまた次のステージ、「ストリーミングの時代だ!」となっていて、音楽は色々大変な市場だなと思っています。
ですが、だからこそ見直されてもいます。音楽のライブは本当に「究極の同時代性・共有・愛着」だと感じていますので。
……こんなことを言いつつ、『ライブ感についてはみなさんのほうが本当は詳しいのでは』と思っています(笑) 現在はYouTubeのゲーム実況や、スマホで楽しんでいらっしゃるライブ配信が非常にたくさんありますから。
むしろ、みなさんのなかには『ライブ配信がなかったら見ないよ』くらいの人もいるのでは? この傾向こそ現代的なヒットの仕方なのかなと思っています。
そして当たり前ですが、マンガもライブ感というものが大事なのではと。直近でも『HUNTER×HUNTER』が久しぶりに連載再開したり、『ONE PIECE』も2022年の春くらいにルフィの正体が明らかになるなど、日本だけでなく海外でも非常に盛り上がりまして、最新話を追いかけていくみたいな流れがまた復活と言いますか、強まりました。
次のエンタメを制するのは、「場」になることができた者だ
細野 私たちにとっては「最新話」こそが同時代性だと思っています。
それを語りたくなる(共有)、そして語ることによってファンになっていく(愛着)ので。マンガをライブ感というキーワードで紐解いていくと、同時代性・共有・愛着の3つがしっかりつながってくると思っています。
従いまして我々「少年ジャンプ+」は、アプリのダウンロード後、初回全話無料という仕様を続けているわけです。これによってライブ感を感じてもらい、やがてヒットにつながっていくのでは。
ですから、繰り返しになりますが、今後のエンタメで大事なことはライブ感であり、「ライブ感を感じる場になれるか?」ということが重要かなと。
これからも「少年ジャンプ+」は、「場」になることに挑戦していきたいと思っています。……ただ、その挑戦はプラットフォーマーとのせめぎ合いになるかなとも思っておりまして。
プラットフォーマーのみなさんは、自分たちこそがライブ感を感じる場になりたいという野望があると思うので、今後は「場」を巡って戦っていくことになると言いますか、それに勝利すればエンタメを制することができるのではと。
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