好天に恵まれた、とある冬の日。パナソニックのLUMIX S5IIに70-300mmというお手頃な望遠ズームレンズを付けてカメラ用リュックに入れ、自転車で走り回ってきたのである。テーマは、「S5IIは、こっちへ歩いてくる猫の顔にピントを合わせ続けてくれるか」だ。
なにはともあれ、冬の醍醐味は“日なた猫”。日差しを浴びて、目がほそーくなってるとこがいいのだ。
まだ農地もちらほら残っている郊外の古い住宅地。庭でネコを世話してるおうちがあり、通りかかると多くの猫たちがご飯を食べてた。どうもその庭を根城にしてるのは2〜3匹で、ほかの猫たちはそこまで食事に来てるようだ。邪魔しないように、少し遠くに自転車を止めて見守ってると、食べ終わった猫たちが各方面に散っていったのである。
そのうちの1匹が、日差しの下にちょこんと座ってる。きれいに座ってるキジトラである。よく見ると真っ赤な葉の木(植物には疎いのだけど、たぶんオタフクナンテン)があり、うまくその赤を入れれば、きれいな写真が撮れそうだ。猫がじっとしてくれてるのをいいことに、木と木の隙間から猫が見えるアングルを探し、しゃがんで小さくなって望遠で撮ったのがこちら。
この猫は耳がカットされてない(のでたぶん去勢してない)が、近くにいた別のキジトラは右耳がカットされてる(ので去勢されてる)。レンズを向けたらあくびをしたので、いい感じの顔が撮れたのだった。舌がポイント。
また自転車にまたがって、別の場所へ。フェンスに囲まれてて人が入れない一角があり、それが猫にはありがたく、日なたで1匹ゴロゴロ転がってたのである。文字どおり転がってて、レンズを向けると顔だけこちらに。それが冒頭写真。このあと、ずっとあっち向いたりこっち向いたりと転がってた。日差しをため込んだアスファルトの上でごろごろって気持ちいいんだろうなあ。
冬の難点、というか、まあいいところでもあるのだが、すぐ日が傾いて赤くなっていくこと。そういうときはあえて逆光で。冬の逆光はカッコいい。
そして、あっという間に日没である。しまった。今回のテーマである「S5 IIは、こっちへ歩いてくる猫の顔にピントを合わせ続けてくれるか」をクリアしてない。
そこで、早朝や夕方に猫に出会える、とある神社へ。ここは毎夕、カメラを持って猫の世話をしにくる元カメラマンの方がいて、いつのまにか顔なじみになってるのである。その方とカメラ雑談などを楽しんでいると、猫の警戒心も解けてきたのか、こっちへ歩いてくるキジトラが。かくして連写モードにして、歩いてくる猫を望遠レンズで追いかけるのに成功。チェックしたら、ちゃんと猫の顔にピントが合い続けてた。S5IIは、猫撮りにもいいですぞ。
もう1匹、超ふさふさのタビちゃんもいた。望遠で撮ると、小さい顔に巨大な体って感じで貫禄があっていいのだけど、体がでかく見えるのは冬毛のせいなのだった。冬に撮りたい猫ですな。
そうこうしてるうちに暗くなってしまったのだが、最新のフルサイズミラーレス一眼がありがたいのは、高感度に強いこと。タビちゃんが上目遣いで周辺をチェックしながら水を飲んでたので、カメラを向けて連写したのだが、気がついたらISO感度が1万6000にまで上がってた。でも、このクオリティーならOK。
ちょっと前までは、暗くなると画質を保つのが難しかったのだけど(あまりシャッタースピードを落とすと被写体ブレしちゃうし)、時代は進んでるんだなあと感じ入る。
猫って、じっとしてるとは限らないし、前後左右のみならず、上下まで含めて3次元的に動き回るし、次の動作を予測しづらいし、撮りやすい場所にいるとは限らないしで、何かと被写体として厄介なので、カメラの性能の進化を如実に体感できて楽しいのである。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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