FCNTはスマートフォンブランド「arrows」を、地球環境を大切にするエシカルライフをリードするブランドにリニューアルし、ロゴのデザインも新しくした。リブランドの第1弾として2月10日に発売されたのが「arrows N F-51C」(ドコモ)だ。電気電子部品を除く、部品総重量の約67%にリサイクル材を使用したモデルである。
そもそもホントに約67%も使ってるのか? というASCII.jpの疑問に、FCNT側は端末を分解という力技で答えてくれたので、まずは分解したところを写真を動画で紹介しよう。
最速分解!? arrows N F-51Cをバラバラにする!
のちほど登場するFCNTの田中氏が、arrows N F-51Cを分解して中身を見せてくれた。なかなかスマホの中身は見ることはないと思うので、どのような構造になっているのかをこの機会に覚えておいてほしい。
以上のように、リサイクル材が多く使われていることがわかってもらえたかと思う。このような“地球にやさしいスマホ”を生み出す背景には、どんな苦労があったのか? 企画・開発に携わった方々に、あらためて話を聞いた。
arrows N F-51Cのターゲットは
エシカルな人たち
──まず、arrows N F-51Cのターゲット層を教えてください。
吉澤氏 arrows N F-51Cはエシカル、サステナビリティをテーマに開発したスマートフォンです。端末や個装箱に環境配慮材を使うだけではなく、中身も電池の長寿命化を実現する充電制御技術を搭載するなど、永く快適に使っていただけるよう配慮しました。すでにエシカルな行動をされている方や、関心を持っている方に選んでいただきたいのはもちろんですが、現在arrowsをお使いいただいている方にもぜひリピートしていただきたいですし、幅広いユーザーに使っていただきたいですね。
──エシカルに関心を持つ方とは、具体的にどのような方でしょうか?
吉澤氏 従来の端末ではメインターゲットとして想定する年齢層がありましたが、今回は特に年齢は定めていません。arrows N F-51Cの開発にあたって、一般の方々への調査も行ないましたが、エシカルを意識することは年齢とは関係ないようです。たとえば、若い方は、学校でエシカル消費に関する教育を受けるなど、関心を持っている方が少なくありません。お子様をお持ちの親世代は、子供の将来のために、そういうマインドで行動されている方もいらっしゃいます。会社でSDGsの取り組みが始まったことで社会問題を知り、エシカル消費に関心を持った方もいらっしゃいます。
──エシカルを訴求する上で、デザインでこだわった部分を教えてください。
淺野氏 エシカルに関心がある方は、無駄がなく質素でシンプルなものを好まれると思います。そのため、シンプルでニュートラルなデザインを目指しました。長く使っていただきたいので、なるべくクセがなく、普遍的なデザインがいいとも考えました。しかし、あまりにもクセがないと、親しみにくい印象になるので、少しアイコニックな要素を持たせるために、メインカメラの周りにはレンズ保護を兼ねたリング形状を施しています。また、よく見ないとわからない部分ではありますが、アルミのカメラフレームはストレートに立ち上げるのではなく、上に向かって少し絞り込ませることで、やさしさを感じていただけるようにしました。
──実際に手にすると、非常に持ちやすい印象を受けました。
淺野氏 持ちやすさは、従来のarrowsを踏襲しています。FCNTは日本のメーカーで、日本のお客さまに使っていただく製品を作っています。今回あらためてユーザー調査も行ないましたが、この72mmが最適なボディー幅と考えています。それから、これまでのarrowsは電源キーの下にボリュームキーを配置していましたが、arrows N F-51Cではボリュームキーを電源キーの上に配置しました。arrows以外のスマートフォンを使われている方の使い慣れた配置でもあり、初めて使う人にも快適に操作していただけると思います。
──それでは、ボディーカラーでこだわった点は?
淺野氏 カラバリはフォグホワイト、フォレストブラック、ブラッシュネイビーの3色を用意しました。フォグホワイトは、漂白された白ではなく、少し濁った風合いのある白に。フォレストブラックは、ただの黒ではなく、少し緑がかった色にしました。ブラッシュネイビーはドコモオンラインショップ限定です。フレームはブラックと同色ですが、リアパネルには、リサイクル材を使っていることを意識していただけるように細かい模様が入っています。グラデーションを入れて、朝焼け感と言いますか、これからの光を予感させる演出も施しています。
──パッケージもエシカル仕様なんですよね?
淺野氏 個装箱の素材にもこだわっています。FSC®認証紙(適正に管理された森林から産出した木材を使用)を受けた紙を使い、印字に使うインクも環境に配慮されたバイオマスのものを使っています。リサイクルに出せる素材で、リサイクルに出しやすいように簡単に折りたためるようにしました。ですが、丈夫でなければならないので、構造としては結構複雑なんですよ。
吉澤氏 箱状に固定して止める部分なども、無駄をはぶき、必要最低限の紙で作っています。
田中氏 古紙や植物繊維を使って成形したパルプモールドを用いるメーカーもありますが、自治体によっては古紙としてリサイクル出来ない地域もあります。
渡邊氏 こうした素材の選定や、環境に配慮した物づくりが評価されて、2022年のグッドデザイン賞もいただきました。
──本体のデザインで最も苦労されたことは?
淺野氏 リサイクル材を使うことによって、どういう色になるのか、ということには悩みました。事前に調べた情報では、アルミはさほど心配はないが、プラスチックは黄ばむかもしれないと言われていたので。そのため、黄ばんでも大丈夫な色を用意する必要がありました。しかし、実際に作ってみると、再生プラスチックを用いたパネルのほうがうまくいき、むしろ、アルミの色が黒く沈んだりしました。それを沈まないように持ち上げるなど、色の調整には結構苦労しましたね。
──arrows N F-51Cは従来のarrowsと同じように、MIL規格の試験をクリアしています。リサイクル材の強度は問題ないのですか?
田中氏 リサイクル材とバージン材では、まったく変わらないと言っていいほど、強度は変わりません。それは、あらゆるリサイクル材が丈夫というわけではなく、いつも使っているものと変わらない強度の材料を探して、本当に変わらないのかどうかを確認するという地道な作業を経て、素材の採用にいたっているということです。
吉澤氏 arrowsは独自の落下試験を行ない、画面割れに強いという特徴を持っていますが、arrows N F-51Cはもちろんその試験もクリアしています。
渡邊氏 リサイクル素材だからといって脆いわけではなく、今までのarrowsのDNAを受け継いで、堅牢性も備えている。それがarrows N F-51Cの大きな魅力だと思っています。
──最近は従来モデルに比べると端末価格が高くなってきていますが、リサイクル材を使った場合の製造コストはどうなんでしょうか?
田中氏 現状は、世界的にまだリサイクル材のボリュームが少ないこともあり、バージン材よりもコストがかかります。しかし、リサイクル材の利用が増えていけば、将来的に、バージン材よりもコストが下がる可能性はあると思います。
渡邊氏 価格はキャリアさんが決めていますが、エシカルの意識があるお客さまは、 安いから飛びつくという方 ではないと思います。
──外見だけではリサイクル材を使っていることがわかりにくいですよね。リサイクル材を使っていることを知らずに購入される方もいるのでは?
田中氏 普段使っているスマホと何も変わらないように置き換えたいという思いがありますから、知らずに買って普通に使っていただけたら、むしろうれしいです。たとえば、アウトドアに特化したスマホなど、それがひと目でわかるデザインになっているものもありますが、今回のarrows N F-51Cは、環境に配慮したことをわかりやすくすると、購入していただけるユーザー層を狭めてしまうかもしれません。そうならないように、リサイクル材を使いつつ、今までと変わらない見栄えを実現することを目指しました。
淺野氏 長く使っていただきたいので、今、ぱっと見てわかりやすいデザインであったとしても、4年後にはどうかなぁと思ったりもします。そういう意味で普遍的なデザインにしましたが、4年後にはリサイクル材を使うことが当たり前になっていてほしいです。
──ホーム画面のデザインも、かなり変わりましたね?
吉澤氏 arrowsのリブランドを機に、UIも刷新しました。われわれが掲げたビジョンに合わせて、あらゆる年齢層の方に、そして初めてarrowsを使っていただく方にもわかりやすいようにしました。
淺野氏 使う色合い、イラストなども一新しました。すべてを変えたわけではなく、いいところは残して、これまで足りなかった部分を底上げしました。
吉澤氏 たとえば、arrows独自の機能を紹介する「arrowsオススメ機能」アプリのデザインは全面的に変えました。初めてarrowsを使っていただく方にもわかりやすくしたので、ぜひ使ってもらいたいです。
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