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AIは産業革命レベルの技術になる?:

マイクロソフトが「OpenAI」に巨額を投じる理由

2023年01月24日 18時00分更新

文● bioshok 編集● ASCII

3年以内にそこそこ汎用的で実用的なロボットが開発される

 こうした背景から、少なくとも自然言語処理においては、指示待ち人間レベル、proto-AGIレベルのAIが1年以内に開発される可能性が高いと考えられます。

 また今回はあまり触れられませんでしたが、マルチモーダルAIやAIのロボティクス応用も発展が著しく、おそらく3年以内にはそこそこ汎用的で、かつ実用的に自然言語で指示命令を受けられる汎用ロボットが開発されていると思われます。

 マルチモーダルAIやAIのロボティクス応用に関する予測は、現状の技術のクオリティを見ていたらそうなる感覚値があるということで、言語モデルのようには定量的な予測にはなっていません。

 しかし、DeepMindの最新の強化学習手法であるAlgorithm Distillation(AD)、Dreamer V3、AdAや、OpenAIが開発したMineCraftAIのVPTは、ロボティクスに応用される技術の芽であると考えられます。また、グーグル(Saycan、Code as Policies、InstructRL、RT-1)や、エヌビディア(Peract、VIMA)、MetaAI(VIP、PGDM、StructDiffusion)は既に実際にロボティクス技術にAIを応用した基礎研究結果を出し始めています。

 先述したマルチモーダルAI研究が進めばロボティクスにも応用されるでしょう。OpenAIに関しては現状ロボティクスに関する研究はほとんどしていないようですが、音、映像、言語などのマルチモーダルな基盤モデルを作成した後、ロボティクス分野に移行する算段なのではないかと個人的には踏んでいます。

現状のAIトレンドは産業革命レベルとマイクロソフトは考えているはず

 このように大局的な視野でAIトレンドを見ると、マイクロソフトはOpenAIの技術が少なくとも言語というドメインでも1年以内に相当人間レベルに近い性能を持つようになることを、幹部同士での話し合いや、何らかの技術デモから確信したのではないかと考えます(ただし汎用AIではないことに注意)。

 また、マルチモーダルAIの展望も近い将来にあることから、世界に対して言語というドメインを超えた影響力を持てることも期待し、現時点で大規模な投資に踏み切ったものと推定できます。

 現状の生成AIの状況は様々なメディアで取り上げられていますが、どこか「クリエイティブ領域の便利ツール、またはちょっとした業務のサポートをしてくれるボット」といったニュアンスで報道されています。

 しかし、マイクロソフト幹部を含めAIトップ研究機関は現状生成AIと呼ばれるムーブメント(正確には生成AIを含む現状のAIトレンド)は単なる流行ではなく、控えめに言っても産業革命レベル、そして恐らくは人類史を根本から変えるレベルの技術になるのではないかと一部考えているものと思われます。

 これを読んでいる方は上記事実を信じられないかもしれません。令和の時代になっても、まだFAXを使っている会社があったり、デジタル化さえままならない企業が多く存在する時代です。AIへの印象もあまり興味のない多くの人にとっては「ちょっとおしゃべりできたり、そこそこの精度で画像認識できるくらいでしょ」という感覚値が正直なラインになっているかもしれません。

 しかし様々なレポートや論文から推定するに、ちょっと便利なツールが今後出てくるといった印象を超えて、社会構造や産業構造をこれから10年でAIが大きく変えていくことが想定されます。

 このような急激な変化が社会全体を良い方向に導くのか悪い方向に導くのかはひとまず置いておき、マイクロソフトの巨額投資のモチベーションを知ることで、多くの人に現状のAIトレンドがたどるだろう未来への認識と、それが及ぼす社会的影響を考えるきっかけとなればと本記事を書かせていただきました。

 何か不明点等ございましたら、TwitterでAIの最新動向から中長期的な技術トレンドの展望まで発信させていただいていますのでお気軽にご連絡ください。

 

筆者紹介──bioshok

IoTエンジニア。大学で物理学、大学院でAIを学んだのちに個人的な趣味でAIトレンドの最新動向をTwitter/ブログ/Youtubeで発信。フューチャリストコミュニティにてAIの最新動向だけではなく、中長期技術トレンドの推定なども行なっている。Twitterアカウントは@bioshok3

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