週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

奇跡の大逆転! 冨林勇佑、スーパー耐久で3年連続クラスチャンピオンに輝く

 ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第7戦 SUZUKAが11月26~27日に行われ、eスポーツ出身の冨林勇佑選手が乗る39号車「エアバスターWinmax RC350 55ガレージ TWS」は、ST-3クラス2位となり、逆転でシリーズチャンピオンに輝いた。

 最終戦はいよいよシリーズチャンピオンが決まる1戦なのだが、第6戦を終えた時点で52号車クラウンRSが大きくポイントをリードしており、39号車が自力で逆転できる可能性はほぼない状態だった。それでも、自分たちができることをやろうと、冨林をはじめチーム全員が一致団結し、週末のレースに臨んだ。

 実は、この前の週に行なわれたGR86/BRZカップのプロフェッショナルクラスで、見事シリーズチャンピオンに輝いた冨林。週末は、多くの関係者が彼のもとに祝福を伝えに駆けつけていた。また、今回もZENKAI RACING協力のもと、レーシングシミュレーターがピットウォークに登場。多くのファンが足を止めて、興味を示していた。

予選はかなりの手応えで3番手に

 26日(土)午後から始まった公式予選。まずは、Aドライバーの冨林がアタックを行なう。朝のフリー走行からコース上ではアクシデントが絶えず、赤旗中断になることが多かったが、この予選でも、さっそくストップ車両が発生しセッション中断となった。

 いきなりリズムを崩される展開となったが、冨林はしっかりとタイヤを温めてタイムアタックを敢行。ライバルの52号車より速い2分16秒243でクラス2番手につけた。このアタックは、冨林自身としても、かなり手応えがあった様子。予選後は、やりきったという表情を見せていた。

 続くBドライバー予選では伊藤鷹志がアタックを担当。果敢にコースを攻めていったものの、冨林のタイムには及ばず。2分17秒759がベストタイムとなった。これにより2人合わせての総合結果で、クラス3番手に。まずはライバルの52号車よりも前でチェッカーを受けることを意識し、決勝に向けた準備に入った。

絶望的な状況でも諦めなければ光明あり!
今年の総決算的な決勝レース

 27日(日)の決勝レースは、朝から青空が広がり、ドライコンディションで5時間の耐久レースが始まった。今回は全クラス出走で、56台ものマシンがコースをひしめき合うということで、序盤からフルコースイエローが出るなど、波乱含みの展開となった。

 ST-3クラス3番手からスタートした39号車は冨林がスタートドライバーを担当した。序盤からライバルと接戦を繰り広げるが、なかなかペースを上げることができず、7周目には4番手に後退。そのまま、トップとの差が広がっていく一方となった。

 レースは荒れに荒れた展開となり、スタートから1時間30分のうちにFCYが4回、セーフティーカーが2回導入された。少しずつ劣勢の展開になりつつあるかと思われたが、開始から1時間を過ぎたところで、信じられない事態が起きた。

 チャンピオン獲得に向けて、順調に走行していた52号車がバックストレートでトラブルのためストップ。自力での再スタートが不能となり、そのままリタイアとなってしまったのだ。これにより、難しいと思われていた39号車のチャンピオンに光が見えてきた。

 しかし、この時点でクラス3番手を走行しており、逆転チャンピオンのためには2位以内でのチェッカーが必須条件となる。29周目に冨林から伊藤にドライバー交代するも、なかなかペースを上げることができず、我慢のレース展開が続いた。

 レース後半を迎え、残り時間も1時間20分を切ったところで、再びドラマが生まれる。2位を走っていた15号車フェアレディZが他車との接触によりストップしたのだ。これによりFCYが導入されたのだが、今回も39号車は抜群のタイミングでピットストップすることに成功。レース中盤を担当していた石井から冨林が再び乗り込み、ピットアウトすると、一気にクラス2番手に浮上した。

 残り1時間10分というところでレースが再開されると、冨林は丁寧なドライビングを心がけ、マシンをゴールまで運ぶ。そして112周を走りきり、ST-3クラス2位でチェッカー。大逆転でシリーズチャンピオンを決めた。

 冨林にとっては3年連続のクラスチャンピオン。今年もレースの現場でうれしい思いや悔しい思いをしてきた彼だが、最高な形で2022シーズンを締めくくった。

DELTAモータースポーツ 田中延男代表コメント

 今回は5時間レースと長いですし、最後の冨林のスティントになる前に、何か起きるだろうと思って、準備はしていました。ペース的にみても、伊藤のスティントは多分我慢のしどころになるだろうなと思っていたので、そこをどう耐えるかを考えながらレースをしていました。結果的に15号車が止まってしまいましたけど、それがなくても逆転できる計算は成り立っていました。

 ずっと3連覇を獲ると宣言してきて、今回も有言実行になりました。ただ、3連覇をするためにレースをしているわけではないです。あくまで、これは(冨林にとって)通過点です。ただ、足跡は必ず残さないといけないので、そのためには“チャンピオン”という称号は必要不可欠です。来年は来年で、新しい挑戦になると思います。体制も大幅に変わる予定です。仕切り直して、86/BRZレースに関しても、来年は勝つことにこだわっていきます。今後とも、よろしくお願いします!

冨林勇佑選手コメント

 まさか、こうなるとは思っていませんでした。正直、自分の第1スティントが終わった段階では、どうしようかと思いました。セーフティーカーが入ったタイミングでピットに入れなくて、クラス1位との差も大きく離れてしまったので、ほぼ1周損する形になって「終わった……」と。再開後に52号車が止まって、可能性がみえてきましたが、その時点で15号車も1周前にいる状態で、ちょっと厳しいなと思っていました。しかし、石井選手のスティントからタイヤの内圧を調整したら、ペースが復活しましたし、最高のタイミングでピットに入ってきてくれて、かなり得することができました。最後のスティントはペースも良くて、何かあった時のために(3番手の)25号車を周回遅れにしておいて、最後はひたすらタイヤとクルマを温存して、気を使いながら走っていました。しっかりチェッカーを受けられてよかったです。

 今年1年間は必ずしもチャンピオンが取れるポテンシャルを持っているわけではなかったですけど、ドライバーがみんな頑張ってくれて、みんなで力を合わせた結果だったので、本当に良かったです。ただ、52号車が止まってしまったのは、正直ショックでしたが、こういうのもレースなんだなと、改めて痛感しました。

伊藤鷹志選手コメント

 このチームに入って、レースをする中で色々なプレッシャーがありましたけど、1年間を通して成長させてもらいました。予選で失敗することもあったり、迷惑をかけてしまうこともありましたが、最終戦まで起用してくれた監督と代表に感謝です。最終的にシリーズチャンピオンという形で結果につながったので、本当に良かったです。ハコ車レースでは、これが初めてのチャンピオンですし、個人では6年前のスーパーFJが最後。色々起こり過ぎたこともあって、ちょっとまだ実感は湧いていないですけど、本当に良かったです。

石井宏尚選手コメント

 冨林選手のペースが上がらなかったので、チームが色々模索してくれて、対策したもので自分がいったんですが、最初からペースが良かったです。ただ、クルマの特徴としてタイヤがすぐ消耗してしまうので、とにかく我慢しながら走って、コース上も荒れていたので、アクシデントとかに巻き込まれないように大事に走っていました。岡山の時と同様に、最高なタイミングでピットに入れました。チャンピオンを獲れて本当に良かったです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事