NTT東日本はDOORで西新宿のメタバースを構築
こうした西新宿での地元でのコミュニティ構築や地域連携を進めている企業として後半に登壇したのが、NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 地方創生推進部 都市DX推進プロジェクトチーム 山下秀樹氏だ。NTT東日本は高速ネットワークやAI、IoTを活用したスマートシティ化の支援を行なっており、こうした取り組みの1つがメタバースを用いたコミュニティ支援だ。
NTTグループは遠隔医療やテレワーク、観光、コマースなどさまざまな場面でメタバースの取り組みを展開しており、西新宿においてもコミュニティ空間が構築されている。現在は都庁前の都民広場や新宿中央公園などが仮想空間上に作られているが、今後は西新宿の企業や組織がメタバース上でさまざまな活動を展開するという。
これを実現したのが、NTT東日本が提供する「DOOR」だ。2020年に開設されたDOORは、日本初の3D空間型のオウンドメディアで、誰でも手軽にメタバース空間を構築できるという。3Dモデルを自ら作成してDOOR内に設置することができ、クリエーターが表現したい内容をカスタマイズすることが可能。無償で利用できるのも大きな特徴で、1対多に加え、多対多のコミュニケーション、そして自分の顔をアバターにすることもできる。
DOORは自治体や企業、ゲーム、音楽、イベントなどさまざまな3D空間で利用されている。たとえば、足立区では区役所や学校、体育館、消防署などをバーチャル空間上に構築し、それぞれのエリアで集団での防災訓練を実施した。また、初音ミク公式のVR/ARアミューズメントパークである「MIKULAND 2022 YOSAKURA」や国内最大のゲームショーのVR版である「TOKYO GAMESHOW 2021VR」などでもDOORが採用されているという。
コミュニティ活動のデジタル化を模索するクリアソン新宿
地域連携の事例として登壇したもう1つの団体が、新宿区をホームとするサッカーチーム「クリアソン新宿」だ。チームとしてはJ4にあたる社会人最高峰リーグJFLに所属しており、新宿区と包括連携協定を結び、スポーツの力を使ってさまざまな事業を展開している。
具体的には、NTT東日本といっしょにウォーキングイベントをやったり、新宿中央公園でこども祭りをやったり、スポーツチームでのコミュニティ構築にも携わっているという。また、前述したDOORのメタバースコミュニティにも参加しており、選手自体がアバターとして登録し、自身の部屋を持っているという。
従来オフラインでやっていたコミュニティ活動を、どのようにデジタルで実現していくかはクリアソン新宿にとっても大きなテーマだ。「西新宿という場を通して、デジタルの中で、リアルとデジタルをつなげつつ、どのようにスポーツがどんな価値を発揮できるかを模索しながら、プロジェクトに参画させてもらっている」とクリアソン新宿の西山大輝選手は語る。
クリアソン新宿の活動について宮坂副知事は、「働いている場所にサッカーチームがあるってなかなかないと思うんですよね(笑)。こんなに恵まれたところで、働いていたんだなあとつくづく思いました」と感想を語る。一方で、潜在的なファンである西新宿で働いている人とチームがつながってなかったのも事実。「オンラインでサッカーゲームができるのもスマートシティかもしれませんが、オンラインで職場や地域を越えて、働いている人、住んでいる人がいっしょに観戦に行くみたいなのがスマートシティだと思う」とコメントする。
まちがデジタル化するのではなく、デジタルによって人同士がつながり、共創される西新宿スマートシティの方向性。デジタル化やスマートシティにどこか冷たいイメージを感じていた参加者も、これなら充分受け入れられるのではないだろうか?
トークショーのまとめとして宮坂副知事は、「西新宿というまちを誰かが作るのではなく、ここに住んでいる方、働いている方、事業されている方でいっしょに作るようにしたい。そのためにデジタル技術がある。それこそがスマートシティということ。市民参加型のスマートシティをぜひみなさんといっしょに作り上げたいと思います。これからもよろしくお願いします」と語りかけた。
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