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スマートシティフェスタのトークセッション&会場レポート

お手本はバルセロナ? 宮坂副知事が語る西新宿のスマートシティ

2022年12月05日 09時00分更新

地元企業や市民団体、学生、スタートアップも巻き込む

 こうした西新宿の取り組みについて南雲氏は、「テクノロジーも使うけど、空間や設備のようなハードも使う。機能だけではなく、人間にやさしいまちにどんどん変わっていくというのがポイント」とコメント。

 宮坂副知事も、「サービスの都市実装をテストだけで終わらず、まちに根付かせていくために、西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアムを発足させた」と説明。これにより、地元企業や5Gを提供する通信事業者、市民団体、大学、ベンチャーなどが連携し、サービス実装を推進するという。

西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム

 西新宿は工学院大学やモード学園など大学や専門学校も数多い。こうした学校に通う学生に向けては、「デジタル社会人材育成プログラム」というプログラムもスタートさせ、社会課題をデジタルで解決できる力を養う。「何十年単位の取り組みもあるが、できたときの主役になっているのは今の学生さん。西新宿をどうしたらいいかというアイデアをもらったり、デジタルに詳しい専門家に学生さんを教えてもらったり、インターンで企業に参加して、まちづくりに参加してもらいたい」と宮坂副知事は抱負を述べる。

 学生向けの施策について南雲氏は「まちがキャンパスになっていくということだと思う。今までは学生のときはキャンパスにいて、社会人になってまちで仕事をするのだけど、これからは学びがずっと続いていく。若い頃から社会に出て、ゼロワンいわばないものを一から作っていける」と高く評価する。

 また、宮坂副知事はスタートアップに向けても、「今までストアの中で売るアプリを作っていたけど、これからのスタートアップはまちの中でどう使っていくのかが勝負」とコメント。こうしたスタートアップを支援するため、バラバラだった都庁での支援チームを横串で連携できるようにしたという。

 一連の都のスマートシティの取り組みを聞いた南雲氏は「最近の東京のデジタル化やスマートシティへの取り組みは、すごいスピードで進んでいるので、感動している」とコメントする。他国でもスマートシティを前提としたインフラの刷新が本格化しているが、東京のスマートシティが世界に発信できる日も近いと期待を寄せる。

都市の課題を市民参加で解決していったバルセロナの事例

 スマートシティの取り組みは2000年の初頭からヨーロッパでスタート。渋滞や騒音、大気汚染といった課題に対して、オランダはセンサーを使った見える化を進めた。また、電子政府として紹介されることの多いエストニアは、あらゆる行政サービスをデジタル化したことで知られている。こうしたスマートシティの取り組みで重要なのは「市民参加」だという。「みんなでまちを作ること。デジタルを使って、議論していくこと」の重要さを南雲氏は説く。

 こうしたヨーロッパのスマートシティとして、宮坂副知事と南雲氏が視察してきたのがスペインのバルセロナだ。宮坂氏は、道路の真ん中を公園にしたスーパーブロックのスライドを披露。「歩行者天国と違って、歩行者が中心。車の走るレーンは残っているが、道路の中心は歩行者、ベビーカー、車椅子の人たち」と宮坂氏は説明する。また、交差点の中にも公園が作られており、夜中まで市民が話したり、チェスに興じたりしていたという。

道路の真ん中を公園にしたスーパーブロック

 ここまでの話を聞くと、アナログな施策ばかりで、スマートシティとはほど遠いイメージがある。しかし、こうしたまちを作り上げるのに、オンラインコミュニティというデジタルがフル活用されている。「結果はデジタルじゃなくてもいい。デジタルを使って、まちづくりに参加できるのは素晴らしい」と宮坂副知事はコメントする。

 南雲氏は、バルセロナについて渋滞や騒音、大気汚染といった問題に対して、市民がテクノロジーとデータを用いた課題解決に乗り出し、市民参加による新しいまちづくりがスタートしたと説明。宮坂副知事は「デジタルツールの面白さって、参加できることですよね。アップロードしたり、投稿できるのは、インターネットの得意とするところ。これをまちづくりに活かしているのが、バルセロナなんですよね」と持論を披露した。

 その上で、「みなさんも家に自分の部屋があると思いますが、自分の部屋にいるよりも、西新宿にいる方が圧倒的に長いという人もいる。でも、自分の部屋のことは考えるのに、いる時間が圧倒的に長い西新宿のことを考える人はほとんどいない。考えても、まちづくりに参加する手段がなかった」と指摘。しかし、デジタルを使えば、何万人でもまちづくりに参加できる。「実際、バルセロナは170万人の人口がいるが、まちづくりに参加できるオンラインコミュニティには、全体の約10%の16万人が登録している」(宮坂副知事)という。

バルセロナの視察体験を語る宮坂副知事

 ひるがえって西新宿はどうか? 現在、西新宿ではLINEによるまちづくりコミュニティを進めているが、登録者数は1000人程度。働く人だけでも20万人近くいるのにもかかわらず、0.5%程度しか登録していないということになる。「これをいち早く2万人にして、未来の4号街路をどうするのかをみんなでいっしょに考える。これがスマートな西新宿なんだろうなと感じました」と宮坂副知事は語る。小林氏も、「まちに来てもらい、使ってもらい、意見を言ってまちを変えていく。いわば『チーム西新宿』みたいな仕組みをしっかり作れば、西新宿で働く、遊ぶ、交流するという、よいサイクルになる」と抱負を語る。

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