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ステイクテクノロジーズ渡辺創太氏が「NFT Summit Tokyo 2022 Summer」で語ったこと

IPが強い日本でのWeb3の可能性

2022年08月31日 06時00分更新

 2022年7月14日、大田区産業プラザPiO(東京都大田区)で開かれた「NFT Summit Tokyo 2022 Summer」(Pivot Tokyo主催、開催期間7月13-14日)で、Stake Technologies Pte. Ltd.(ステイクテクノロジーズ、本社・シンガポール)の代表取締役CEO 渡辺創太氏が「Web3で勝負をかける若き起業家が描く未来」と題してリモート登壇。日本発のパブリックブロックチェーン「Astar Network(アスターネットワーク)」を開発する渡辺氏は、「次の成長産業のWeb3でプラットフォームを取りにいく」と意欲を語った。

 渡辺氏は慶應義塾大学を卒業後、ブロックチェーンを開発するシリコンバレーのスタートアップに勤務。2019年にステイクテクノロジーズを日本で創業後、翌年に事業展開しやすいシンガポールに拠点を移した。日本では企業が暗号資産(仮想通貨)を保有して期末時価が取得額より高ければ評価益とされ、換金せず利益確定していなくても課税対象になるが、シンガポールでは課税対象にならないためだ。

 アスターネットワークは、異なるブロックチェーンをつなげて“Web3の基幹インフラ”を目指す「ポルカドット」のパラチェーンだ。パラチェーンとは、暗号資産の取引を高速で処理する並列型ブロックチェーンの仕組みで、アスターネットワークはそのパラチェーンに世界で3番目に選ばれた。アスターネットワーク上で動く分散型アプリケーション「dApps」の仕組みを備えていてサービスを開発しやすく、NFT(非代替性トークン)の取引にはステイクテクノロジーズが発行する「ASTR(アスター)」が使われる。

 2022年7月21日には広告大手の株式会社博報堂が、ステイクテクノロジーズと共に企業のWeb3市場参入を支援すると発表した。日本企業やIP(知的財産)コンテンツと連携しやすいアスターネットワークを活用して、Web3市場でサービスを展開する。第一弾として、CryptoGames株式会社の提供する農業体験ゲーム「Astar Farm」上で、カルビー株式会社が実施するNFTゲーム施策を開発した。

 イベント会場では、NFT東京ファウンダーで司会のNatsuko(満木夏子)氏と渡辺氏が6月末にニューヨークで対談した様子を収録したビデオが流れた。渡辺氏は、アスターネットワークの特徴について、「異なるブロックチェーンをつないでいる。アスターネットワーク上でNFTやDeFi(分散型金融)をつくると、(他のブロックチェーンの暗号資産の)イーサリアムやビットコインでNFTが買えるマルチチェーンのプラットフォームだ」と説明した。

「日本でやれずにシンガポールにいるのは?」との質問に渡辺氏は、「税制の問題が一番厳しい」としつつ、「それは政治家も正しく認識していて、さまざまな方が努力されている」とした。その上で、「税制が変わったらバンザイではなく、そこまでいって初めてスタートラインに立てる。世界で結果を目指し続けて、後ろに続く人たちの道をしっかりつくっていく」と述べた。

日本人らしく戦えばいい

 日本でのWeb3の可能性については、「こんなにIPやクリエイトの部分が強い国はグローバルにはない。ものすごく期待している。そのためには技術レイヤーの起業家が増えないといけない」と指摘した。Web3が今盛り上がっているが、ブロックチェーンのインフラにはまだ課題があり、そこに区切りをつける会社や起業家が日本からもっと出てくる必要があるのだ。

 そうしたWeb3インフラの開発に日本は向いているという。「Web3で日本発のイノベーティブなものはあまりないし、今からキャッチアップしていくのはとても難しいが、前にある事例からたくさん学んで改善し、よりよいものを届ける方が日本的な戦い方ができる」と渡辺氏は持論を展開した。

「我々の前には(暗号資産の)イーサリアムがあって、全部データが取れる。ブロックチェーンで透明性が高いので、分析してストラテジー(戦略)を立て、日々改善していいものをつくって世界に出していく。この積み重ねで十分戦える」と強調した。

「やっぱり(自分は)日本人ということを大事にしている。ソニーやトヨタのような世界を代表する会社がグローバルで覇権を取り、ニューヨークを歩いているとソニー製品やトヨタの車が走っていて誇り高い。Web 1.0以前はプロダクトで日本が世界を圧倒した。しかし、Web 1.0、Web 2.0となって負けているのが現状」と言う。だからこそ「次の成長産業がどこになるかが日本としてすごく重要。Web3でプラットフォームを取りにいく」と話した。

 Web3は実は国籍はあまり関係ない世界。「それでも日本人だから、日本の社会に貢献したいという思いが強くある。ソニーやトヨタのような会社を我々の世代でつくり出さないといけない」と渡辺氏は言う。人口が減少して日本市場が小さくなる中で、「外貨を稼いで日本に戻す人たちがこれまで以上に重要になる」。米国だけでなく、アジアならシンガポール、欧州ならドイツやイギリスで日本人が闘い、「プレゼンス(存在感)を高めていく挑戦自体に価値がある」として、「一歩踏み出して海外で競争する人たちが増えていけばいい。僕自身も結果が出せるように頑張る」と話してビデオを終えた。

ムーブメントを一緒に起こしていきたい

 続いてリモートによる質疑応答で、会場から「励ましたいがどうしたらいいか」と問われた渡辺氏は、「気持ちがうれしいです(笑)。グローバルで挑戦する中で、日本がこうだったらいいのに、ということはたくさんある。日本の税制や(株式)上場に時間がかかるとか」としつつ、「グローバルで結果を出すことで適切なフィードバックをしたい。問題提起は、この業界に関わるみなさんにもしていただき、ムーブメントを一緒に起こしていけばいい」と答えた。

 また、これまで「Web3は、20代の若手起業家が多い。30代、40代はあまりはいない」との問い渡辺氏は、「新しく生まれた技術で若い人が牽引していて、私も27歳」と話した。だが、「事業計画をつくっていくのは30代、40代の先輩方のほうが経験がある。これからの発展には事業計画をつくれる方、IPを持っている方に入っていただくのが不可欠だ」と話した。

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