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インド人は、日本のIT企業を救うか

2022年07月25日 09時00分更新

高度人材の「ポイント制」

 IT分野だけではないが、外国籍の高度人材を優遇するポイント制もある。学歴や職歴、年齢(若い方が加点が高い)などを数値化して、70点以上の人は優遇措置を受けられる。

 日本に永住するための申請を希望する外国人は、原則10年以上日本に在留していることが条件になるが、高度人材はポイントによって3年、または1年で申請できる。

 夫や妻の就労も認められるなど、日本の厳しい在留制度を考えると、「高度人材ポイント制」にはかなりの優遇措置が用意されている。

外国籍のIT人材の雇用はあまり進んでいない

 情報処理推進機構が2021年5月に公表した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」によれば、IT人材が不足していると考えている企業はとても多い。

 「御社では、事業戦略上必要なIT人材の「量」を十分に確保できていますか」という質問に対して次のように回答している。

●大幅に不足している:28.1%
●やや不足している:56.3%

 事業会社878社、IT企業979社がこの調査に回答しているが、1857社中84.4%が「大幅」、または「やや」不足していると考えていることになる。

 調査結果からは明確にIT人材が不足しているという結果が読み取れるが、外国籍の人材の雇用はそれほど進んでいない。

 「御社が直接雇用しているIT人材のうち、外国籍の割合」を訪ねた調査では、次のような結果が出ている。

●0%:66.9%
●0.1%以上2.0%以下:13.2%

 冒頭で登場したバングラデシュ人男性が働くことになった楽天は、外国籍人材の採用に積極的な企業と考えられている。同社のウェブサイトによれば、従業員の国籍比率は外国人が20.4%、国籍数は70ヵ国超とされる。

 しかし、情報処理推進機構の調査結果からは、こうした日本企業は今のところ、ごく一部であることが浮かび上がってくる。

満足度「100%」のインド高度人材

 外野の立場としては、国籍を問わず優秀な人材には日本企業でどんどん働いてもらって、GAFAやアドビ、IBMと世界市場で肩を並べる企業が出てほしいと思う。しかしそうは言っても、採用するには、さまざまな壁があるのも事実だ。

●考え方や習慣の異なる人たちと一緒に働くことができるだろうか?
●外国籍の人たちに英語で説明をして、円滑に仕事が進められるだろうか?
●海外の優秀な人材を満足させるだけの報酬を提示できるだろうか?

 ハードルは次々に頭に浮かぶが、日本のIT人材不足は待ったなしだ。経済産業省の試算によれば、2025年にはIT人材が36万人、2030年には45万人不足するという。

 日本貿易振興機構が2020年に公表した「在日インド高度人材に関する調査報告書」によれば、インドの高度人材を雇用している企業の85.7%が「ほぼ期待通りの活躍だ」と答え、14.3%が「期待以上の活躍をしてくれている」と回答した。

 調査対象が日本企業27社と、サンプル数は少ないが、「期待を下回っている」と答えた企業が1社もなかったことは、他の企業にとっても今後の採用計画の参考になるかもしれない。

 

筆者──小島寛明

1975年生まれ、上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。2000年に朝日新聞社に入社、社会部記者を経て、2012年より開発コンサルティング会社に勤務し、モザンビークやラテンアメリカ、東北の被災地などで国際協力分野の技術協力プロジェクトや調査に従事した。2017年6月よりフリーランスの記者として活動している。取材のテーマは「テクノロジーと社会」「アフリカと日本」「東北」など。著書に『仮想通貨の新ルール』(ビジネスインサイダージャパン取材班との共著)。

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