週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

「医療、ライフサイエンス、バイオの企業が知っておきたい 知財戦略と契約 by IP BASE in 神戸」レポート

バイオ分野の知財戦略とスタートアップが知りたい契約のポイント

 この記事は、特許庁のスタートアップの知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」(関連サイト)イベントレポートの転載記事です。

 特許庁スタートアップ支援班は2022年7月8日、スタートアップと知財専門家のためのコミュニティーイベント『医療、ライフサイエンス、バイオの企業が知っておきたい 知財戦略と契約 by IP BASE in 神戸』を神戸市の会員制ビジネススクエア「ANCHOR KOBE(アンカー神戸)」にて開催した。神戸市が力を入れている医療、ライフサイエンス、バイオ分野における知財戦略と契約の基礎知識の2つをテーマについて、専門家が解説した。また、スタートアップが専門家の支援を受けるときに重要なポイントについてトークセッションを実施した。

特許庁のスタートアップ向け知財支援施策

 冒頭では、総務部企画調査課 ベンチャー支援班長 芝沼 隆太氏が特許庁のスタートアップ支援施策を紹介。知財アクセラレーションプログラム(IPAS)、スタートアップ向け知財コミュニティサイト「IP BASE」、スタートアップのスピード感に対応した早期審査、特許料などの減免制度を説明した。

特許庁 企画調査課 課長補佐(スタートアップ支援班長)芝沼 隆太氏

オープンイノベーション促進のためのモデル契約書(新素材編、AI編、大学編)

 続いて、特許庁総務部企画調査課 課長 兼 オープンイノベーション推進プロジェクトチーム チーム長 仁科 雅弘氏より、オープンイノベーションポータルサイトと「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」の概要を解説した。特許庁では、オープンイノベーション促進のためのモデル契約書として、「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver2.0」の新素材編とAI編、及び、大学編を公開している。各モデル契約書およびパンフレットは、契約の具体的なシーンを想定して策定されたもので、特許庁の「オープンイノベーションポータルサイト」(関連サイト)からダウンロードして、利用可能となっている。

特許庁企画調査課長 兼 オープンイノベーション推進プロジェクトチーム長 仁科 雅弘氏

神戸市のスタートアップエコシステム

 神戸市 医療・新産業本部 医療産業都市部 調査課長 藤井 秀典氏は、神戸市におけるスタートアップエコシステム構築の取り組みを紹介。神戸市では、震災復興事業として1998年に「神戸医療産業都市構想」をスタート。ポートアイランドを拠点に、「メディカル・クラスター」、「バイオ・クラスター」、「シミュレーション・クラスターの3つのエリアに、医療に関する研究機関や企業、大学が集積し、国内最大級の医療産業都市に発展している。

 神戸医療産業都市に集積する企業・団体数372社のうち、71社はスタートアップだ。世界的ライフサイエンスベンチャーを育成するため、シード期からアーリーステージを対象とした支援に力を入れている。

 支援施策として、アクセラレーションプログラム「メドテックグランプリKOBE」、ライフサイエンス領域に特化したシェアラボ「スタートアップ・クリエイティブラボ(SCL)」、神戸ライフサイエンスギャップファンド補助金、グローバル製薬企業とのマッチングや海外のライフサイエンス集積地との連携などグローバル事業展開の支援を実施している。

神戸市 医療・新産業本部 医療産業都市部 調査課長 藤井 秀典氏

米国バイオベンチャーから学ぶ 薬事・開発戦略を見据えた特許戦略

 弁理士法人レクシード・テック 弁理士 南野 研人氏による講演「米国バイオベンチャーから学ぶ 薬事・開発戦略を見据えた特許戦略」では、米国バイオベンチャーの事例から、開発戦略・薬事戦略を考慮した特許戦略の構築について解説。

 日米ともにバイオベンチャーは、創薬基盤技術を保有していることが多いが、日本に比べて米国ベンチャーは、創業から臨床試験、医薬品の開発までのスピードが速い。米国バイオベンチャーは、早い段階から、開発、特許出願、薬事申請の準備を並行して進められており、基盤技術の開発時に、出口である開発候補品の開発戦略、薬事戦略を考慮したうえで特許戦略が構築されていると推定される。こうした海外事例は、早期の実用化や特許戦略構築の参考になりそうだ。

弁理士法人レクシード・テック 弁理士 南野研人氏

契約はオーダーメイドで~秘密保持契約を例に~

 小松法律特許事務所 弁理士・弁護士 藤野睦子氏の講演では「契約はオーダーメイドで~秘密保持契約を例に~」と題し、契約書の役割と締結時の注意点について秘密保持契約を例に解説。

 契約は1つとして同じものはなく、自社の方針をしっかりと決めておくことが大事、とし、前文では目的を明確にすること、契約の意義や限界を踏まえて提供情報を精査し、管理体制を構築すること、など契約時のポイントを説明した。

小松法律特許事所 弁理士・弁護士 藤野睦子氏

パネルディスカッション「スタートアップが専門家の支援を受けるときに重要なポイント」

 イベント後半は、弁理士の南野氏と藤野氏、特許庁の仁科氏によるパネルディスカッションを実施。司会として特許庁の芝沼氏が参加した。 「支援における大企業とスタートアップとの違い」、「スタートアップ支援における理想の弁理士・弁護士像」、「専門家がスタートアップ支援に必要な知識を獲得する方法」、「スタートアップが良い専門家に出会うには」などをテーマに体験談や意見を語った。

 スタートアップ支援に興味を持っていても、どのような知識や経験が必要なのか情報を得る機会がなく、一歩を踏み出せずにいる専門家は少なくない。より充実した支援体制をつくるためには、セミナーや勉強会を通じて専門家同士のコミュニティを広げることが重要となる。

 スタートアップは、紹介等を通じて、自らの事業分野に合った専門家を見つけ、幅広い視野からの助言を得ていく必要がある。

 イベントの模様は下記、YouTubeにて全編アーカイブ配信中です。

■タイムスケジュール再生リスト
IP BASE、スタートアップ向け知財施策の紹介&オープンイノベーション促進のためのモデル契約書
神戸市におけるスタートアップエコシステムについて
米国バイオベンチャーから学ぶ薬事・ 開発戦略を見据えた特許戦略
契約はオーダーメイドで~秘密保持契約を例に~パネルディスカッション
「スタートアップが専門家の支援を受けるときに重要なポイント」

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事