小松菜奈が、映画『余命10年』で坂口健太郎と共に主演を務めている。自分が不治の病であることを知る茉莉(小松)と、茉莉と恋に落ちる青年・和人(坂口)の10年の物語を描く今作品で、小松が見る者の心に残したのは“生きたい”というストレートな感情。彼女は美しさの中に強さと儚さという両面を演じ込められる女優である。さまざまな魅力が伝わる小松菜奈出演作をRakuten TVで配信中の作品から紹介していこう。
まず、冒頭でも触れた『余命10年』。3月4日より全国350スクリーンで公開されてから、5月2日までの60日間で、累計観客動員数が225万811人を突破し、累計興行収入は28.7億円超を記録した大ヒット作品である。感動して複数回見たという人も多く4月29日のゴールデンウィーク初日には「#ありがとう余命10年」がトレンド入りを果たし、話題となった。タイトルの通り、主人公の茉莉は二十歳で発症した難病と闘うことになってしまうのだが、和人と過ごす限られた日々のきらめきが、本当にかけがえのない時間だったということが茉莉の顔から伝わる。小松が小説の文庫化を待たずして亡くなった著者・小坂流加さんの思いを引き継いで、全身全霊で演じた作品だ。
小松の演技の幅は、後に私生活で結婚することになる菅田将暉との共演作『溺れるナイフ』と『糸』をセットで鑑賞するとさらに感じられるだろう。『溺れるナイフ』で小松は15歳で東京から遠く離れた浮雲町に越してきた人気モデルの夏芽を演じた。退屈な町で出会ったのが激しく自由なコウ(菅田)。引かれ合い交際を始めた2人は「一緒にいれば無敵!」という予感に満たされたが、夏祭りの夜にある事件が起きてしまう…。
一方、中島みゆきの同名曲をモチーフにした『糸』は、蓮(菅田)と葵(小松)が13歳で出会った後に突然別れ、再会して、31歳になるまでの人生模様が描かれる。平成元年生まれの男女がすれ違い続ける切なさを、平成史の変遷と重ねる壮大なラブストーリー。大人に近づいていく中で、自分ではどうしようもできない運命を受け入れながらも前を向く若者たちの姿が涙を誘う。小松と菅田の熱演からは、互いを信頼しきっていることが分かる。
より激しい作風がお好みであれば、共演1作目の『ディストラクション・ベイビーズ』も鑑賞してみるとより2人の関係性と縁の強さを感じるに違いない。
小松の長編映画単独初主演作は『ムーンライト・シャドウ』(2021年)。世界30ヵ国以上で翻訳されている吉本ばななのラブストーリーが原作。ある日突然に愛する人を亡くした主人公・さつき(小松)が、死者ともう一度会えるかもしれないという不思議な<月影現象>を知り、悲しみをどう乗り越えるのか、どうやって未来へ進んでいくのかを描いていく。自然体なさつきの美しさと、恋人と死別し、憔悴していくシーンの両方が描かれていく。
『恋する寄生虫』は小松と林遣都が演じた異色のラブストーリー。原案は、潔癖症に苦しむ孤独な青年と視線恐怖症の不登校女子高生のはかない恋愛を描いた三秋縋の同名小説。観客の感想に「小松菜奈が圧倒的に美しく、場面場面が彼女にいることによって映える」「生きにくさを感じている人や、心の痛みを演じるのが本当に上手」と並んでおり、演技への高評価が並ぶ作品である。
マーティン・スコセッシ監督作『沈黙―サイレンス―』(2016年)で、小松はハリウッドデビューを果たしている。江戸初期、幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎で、宣教師の弟子・ロドリゴが見た酷な世界と、弾圧を逃れた“隠れキリシタン”の日本人との交流を描く。19歳で撮影に参加した小松の役名は洗礼名のモニカ。スコセッシ監督が絶賛したという、夫のキリスト教信者に悲劇が訪れて感情をむき出しにするシーンは必見だ。
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