週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

元ウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編

福岡県柳川市で開催したシンポジウム「メタ観光都市・柳川と立花宗茂・誾千代ゆかりの地」のメタ観光地図を公開

 2021年に福岡県柳川市で開催されたシンポジウム「古地図、古文書からグルメ、観光まで重ねてみたら面白い!メタ観光都市・柳川と立花宗茂・誾千代ゆかりの地」で制作した”メタ観光”地図を公開することになった。立花宗茂のドラマチックな人生と、今に面影を残す掘割の街を重ね合わせたメタ観光の楽しさを気楽に楽しめるツールを紹介する。

※シンポジウムの様子
https://www.youtube.com/watch?v=utFl5KrfVl8&t=293s

シンポジウムの様子。鈴木親彦氏がメタ観光地図を説明。当日のYouTubeより

 柳川市のメタ観光地図は、古地図と現在の地図を重ね合わせ、戦国時代~安土桃山時代~江戸時代のスポット情報だけでなく、柳川を舞台にした映画や写真集、グルメなど、近現代の様々なレイヤーの情報まで落とし込み、一体的に可視化できる地図である。

 シンポジウムに参加した群馬県立女子大学准教授の鈴木親彦氏が、公益財団法人立花財団立花家史料館や柳川市、柳川古文書館などの協力を得て、筆者の玉置のセレクトコンテンツも加えて制作した。

 地図の土台になっているサービスは、地図を軸にした新しいコミュニケーション・サービスを提供する会社、Strolyのプラットフォームを利用している。

https://stroly.com/ja/

同じ位置情報の上に、従来の観光情報(レイヤー)に加え、地学から歴史、近現代の産業、アニメ、ドラマ、映画、ゲームまで多層レイヤーを重ねると面白い

 メタ観光とは、筆者も理事で参加している一般社団法人メタ観光推進機構(所在地:東京都渋谷区、代表理事:牧野友衛。2021年1月に立ち上げを発表)が提唱する新しい観光概念で、「GPSおよびGISにより位置情報を活用し、ある場所が本来有していた歴史的・文化的文脈に加え、複数のメタレベル情報をICTにより付与することで、多層的な観光的価値や魅力を一体的に運用する観光」と定義している。

 つまり、同じ位置情報に、従来の様々な観光レイヤー(名所旧跡。グルメなど)はもちろん、たとえば、テレビ番組のブラタモリで紹介されるように、昔の造山活動や地殻変動などを踏まえた地学や鉱物学、地形に、江戸時代の町割りや近現代の産業など多様な観光のレイヤーも重ね合わせていく楽しさが肝になる。注目が高まってきたアニメやドラマ、映画、小説などの舞台を巡るコンテンツ・ツーリズム、さらには、ポケモンGOやイングレスに代表される位置ゲームなど、レイヤーは日々増えていっている。

シンポジウム当日のメタ観光地図のメニュー。シンポジウムのYouTubeより

 シンポジウムでは、公益財団法人立花財団立花家史料館の植野かおり館長にも加わっていただき、鈴木親彦氏や筆者のメタ観光の概念や実用例を説明したのち、実際に鈴木氏が制作したメタ観光地図を見ながら、江戸時代の古地図と現在の地図を重ねながら、かつての立花家の歴史、明治、大正、昭和、平成、令和にかけての街の変遷を辿った。

 他にも、高畑勲氏の映画『柳川掘割物語』や、荒木経惟誌の写真集『センチメンタルな旅』、この写真集を背景に映画化された竹中直人氏の『東京日和』などの舞台を地図で確認したり、筆者が訪れた飲食店に触れるなどしながら「重ねてみたら面白い」を味わった。過去地図と今の地図を重ね合わせた紹介は直感的に、歴史の重なりを理解させてくれる。

当日のシンポジウム会場の様子

シンポジウムで重なる地図を見る筆者と植野館長。当日のYouTubeより

 このメタ観光地図を作成した鈴木氏は狙いを以下のように説明する。

「今回のメタ観光地図では、資料館が提供してくれた立花家の歴史的情報、現在の柳川の観光情報、柳川を舞台にしたメディアの情報、さらに玉置氏と一緒に柳川を巡った個人的な写真を重ねてみた。歴史的なコンテンツと現在のコンテンツ、さらに個人の体験をシームレスにつなぐことで、柳川の見え方も変わってくる。より多くの情報や体験が増えていくことで、メタ観光地図もリアルな体験もどんどんとリッチなものになる」

柳川の掘割をどんこ舟で回る“川下り”を楽しむ鈴木氏

 また、植野館長は、こうした取り組みについて、以下のように語った。

こういう地図が欲しい、と20年前から思っておりました。歴史はその場と強く結びつくものであり、それは現在まで流れ続け、繋がるものですが、私たちはその事を忘れがちです。戦国時代のアノ時と、今ここを貫くダイナミズムを実感できるツールとしてこれからの観光に役立つものと期待しています

植野館長と筆者。公益財団法人立花財団立花家史料館にて

 また、今回のメタ観光地図作成のサービスを公開している地図サービス会社、Strolyの高橋真知・代表取締役社長は、同社のサービスの活用について以下のコメントをくれた。

「StrolyはStory(物語)とStroll(散歩)の意味をかけ合わせたマップの投稿型サービスです。街の文脈をあぶりだして、地域を楽しむことができるサービス提供を目指しています。資料館などでみると少し難しそうに見える古地図ですが、実際に現地でスマートフォンでGPSと連動して古地図で歩くと、次々と新しい発見ができ、タイムトリップ体験が気軽に楽しめます。

 特に、このたびの柳川の古地図は、歴史ある城下町の文脈や土地に根付くストーリーが紹介されているだけではなく、玉置氏個人の視点で現在の街歩きが紹介されるなど、「メタ観光」ならではの多様な視点で編集されていてとても面白いです。今後も「メタ観光」ならではのユニークな視点やストーリーでの街歩きを、Strolyも一緒に盛り上げていきたいです」

シンポジウム後の植野館長、鈴木氏、玉置、スタッフの集合写真

■立花宗茂公・誾千代さまメタ観光マップ
Stroly今昔柳川明証図会

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります