シャオミは今日23日、新たなブランド「POCO」のスマートフォン「POCO F4 GT」を発表した。発表に先がけて、POCO F4 GTの特徴、そしてPOCOブランド日本で展開する背景についてメディア向けに説明がなされたので、その内容を紹介したい。
対象はテクノロジー愛好家
参入の契機は越境ECの多さ
シャオミの東アジア担当ゼネラルマネージャーであるスティーブン・ワン氏は、まずPOCOブランドの概要と日本進出の狙いについて説明。POCOはテクノロジー愛好家に向け、必要のない機能を取り除いて最高のコストパフォーマンスを誇る製品を提供するブランドであり、シャオミの1ブランドであり部材調達などのリソースは共有するものの、従来の「Xiaomi」「Redmi」ブランドとは違って独立した運営体制を持っているのが大きな特徴だ。
同社がPOCOブランドを立ち上げたのには、大きく理由が3つあるとスティーブン氏は話す。1つ目はテクノロジー愛好家に向けて高いパフォーマンスを誇る製品を提供するという、シャオミの初心に立ち返るため。2つ目は冒険心のある尖った機能やデザイン、遊び心を持った製品設計をするため。そして3つ目は、ブランドとして独立することで、スタートアップの精神を持ち新しいビジネスを模索するためだという。
それだけ尖ったPOCOブランドの製品を日本市場に投入するに至った背景について、スティーブン氏は1つに、日本で既に少数ながらPOCOのコアなファンが既に存在することを挙げている。実際同社のデータによると、海外向けに発売されたPOCOの新製品を越境ECで購入するユーザーのうち、10%を日本のユーザーが占めるそうで、熱心なファンの存在が参入には大きく影響したようだ。
そしてもう1つは、新しいビジネスに挑戦するためだという。日本ではここ数年のうちに、政府による端末値引き規制や携帯大手のオンライン専用プラン投入、急激な円安などによるスマートフォン価格の値上がりなど、市場環境が劇的に変化している。そこでPOCOブランドを活用し、変化の大きい日本市場で新しいビジネスを模索する狙いも大きいようだ。
なお日本におけるPOCOブランドは、海外と同様に他のブランドとは独立した体制を取っていくそうで、販売はオンライン販売に特化。マーケティングを一切かけないことで費用を極限まで抑え、低価格で提供することにより口コミで知名度を高めていきたいとしている。
またスティーブン氏によると、最高のスペックとパフォーマンスを備えながらも競合の半額程度の価格で提供する「フラッグシップキラー」と呼ばれる端末を、今後1年に1回程度投入していく方針とのこと。今回投入するPOCO F4 GTもそのフラッグシップキラーに相当するモデルになるという。
「POCO F4 GT」は最高の性能に
ゲーミング機能を付加
続いてシャオミジャパンのプロダクトプランニング部長である安達晃彦氏が、POCO F4 GTの詳細について説明。POCOブランドにおける「F」とは、一貫して端末のスピード、パフォーマンスを重視したシリーズになるとのことで、既にFシリーズだけで世界420万台以上を販売した実績があるという。
さらに「GT」が付くモデルは、スピード以外にもパワフルな付加価値を付与した最強モデルという位置付けになるとのこと。実際POCO F4 GTは単なるハードコアフラッグシップというだけでなく、ゲーミングに関する付加価値を備えたスマートフォンになるとのことだ。
とはいえ最大の特徴は性能となり、POCO F4 GTはクアルコム製のハイエンド向け最新チップセット「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載しているが、単に高速なだけでなく、その性能を長時間維持することに力が入れられているとのこと。独自の放熱技術「LiauidCool Technology 3.0」の搭載によって本体を冷却し、快適な操作を長時間維持できるのが大きなポイントになるという。
またバッテリーに関しても、POCOブランドとして初めて120Wの急速充電に対応し、4700mAhの大容量バッテリーを17分で満充電できるとのこと。対応する専用の充電器に加え、充電しながらのゲームプレイを邪魔しないようL字型の充電ケーブルも同梱するとのことで、ゲームのようなヘビーな使い方をしている状態で充電をしても、27分で満充電できるとのことだ。
一方、ゲーミングに関連する付加機能となるのが「Magnetic pop-up triggers」である。これは本体右側面、横にした状態で本体上部に位置するものであり、左右にスライドするとボタンが現れ、ゲームプレイ時にL・Rボタンとして利用できる。その名前の通り磁石で開閉するので安定性や耐久性に優れているほか、ゲームプレイ以外にもカメラやビデオの起動など、いくつかの機能を割り当てて使うことが可能だという。
他にもバイブレーションに用いるモーターや、スピーカーの配置などにも工夫を凝らし、ゲームだけでなく動画や音楽などさまざまなコンテンツを充実して楽しめる仕組みが整えられているPOCO F4 GTだが、価格は下位のメモリー8GB・ストレージ128GBのモデルで7万4800円、上位のメモリー12GB・ストレージ256GBのモデルで8万4800円と、価格は非常に抑えられている。前者は自社オンラインショップと「楽天市場」、後者は「Amazon.co.jp」とモデルによって販路が違っているのが気になるが、スティーブン氏によると「ビジネス交渉の結果、そうなってしまった」とのことだ。
ゲーミングスマホとの競合は?
より突っ込んだ話を聞いた
また今回は、スティーブン氏と安達氏に、POCOブランドとPOCO F4 GTに関して直接話を聞くことができたので、その内容も紹介したい。
──日本には確かに熱心なテクノロジー愛好家がいますが、その数は市場全体からしてみれば決して多いとは言えません。POCOブランドであえてそうした層を狙うのはなぜでしょう?
スティーブン氏 テクノロジー愛好家は非常に影響力があり、常にいろいろなメッセージを発信する人たちだと考えています。彼らに向けてベストな製品を作り、目を見張るような価格で提供することでPOCOブランドの知名度が上がるのではないかと考えています。
そしてテクノロジー愛好家が認めるスマートフォンを作ることができれば、最もスマートフォンを分かっている人たちから評価が得られたことになり、多くの一般ユーザーにとってもいい製品になると思います。それゆえPOCOの販売対象がテクノロジー愛好家だけ、という訳ではありません。
──POCO F4 GTはゲーミングスマートフォンとしての側面も強く、日本でもいくつか投入されているゲーミングスマートフォンが競合となる可能性が高いと考えられます。
安達氏 確かに日本でもいくつかのゲーミングスマートフォンが出ていますが、現時点でいうとメインのチップセットに最新のSnapdragon 8 Gen 1を搭載しているのが強みですし、価格競争力も十分にあると考えています。
ですが我々は何より、新しいPOCOを販売方式を含めて新しいブランドとして位置付けていきたいと考えています。POCO F4 GTを商品として説明するとゲームの部分が尖ってくることは確かですが、あくまで特徴の1つとして受け止めていただき、そこまでゲームに特化することなく価格やコミュニケーションなどの部分を顧客にアピールしていきたいと考えています。
──他のゲーミングスマートフォンのように、冷却ファンなどを発売する予定はありますか?
安達氏 今のところありません。ユーザーの判断で、弊社以外の製品も組み合わせて工夫して使ってもらえればと思います。
──ゲーミングスマートフォンの視点でいうと、シャオミが出資しているBlack Sharkの製品が日本でも販売されていますが、POCO F4 GTはそれらと競合してしまうのではないでしょうか。
スティーブン氏 競争が生まれるのは健全な状態だと思いますが、POCO F4 GTの位置付けはフラッグシップのパフォーマンスを最大に引き出しつつ、ゲーミング関連機能を入れてゲームにも使えるもの。あくまで追加ボーナスという位置付けです。
──では、ゲーム以外でどのような部分を顧客にアピールしていく考えでしょうか?
安達氏 まずは基本性能ですね。他社のフラッグシップモデルと比べ、パフォーマンスが同等ながら非常にリーズナブルな価格は驚かれると思っています。ゲーミングスマートフォンというより、他社のフラッグシップモデルよりお求めやすいことを特徴として伝えられるのではないでしょうか。
それに加えてPOCOブランドで初めて120Wの急速充電に対応しています。これは2021年に発売した「Xiaomi 11T Pro」でも搭載したもので、ユーザーからも好評をいただいているのですが、まだ認知が広まっていないのでしっかり伝えていきたいですね。
──一方で、カメラの性能は他のフラッグシップモデルと比べ低いように思います。
安達氏 POCO F4 GTはパフォーマンスに重点を置いています。カメラはプライオリティーを下げるというより、十分いいもの、ソニー製の大きなセンサーを搭載しています。他社はカメラに特化して開発コストをかけていますが、やはりすべての機能を載せると価格が上がってしまうので、取捨選択して商品を形作っています。
スティーブン氏 フラッグシップ機はその企業の最先端技術の粋を集めていますが、非常にコストが高くなり、売価も高くなってしまいます。一方でフラッグシップキラーというのは、フラッグシップの魂を宿しつつ、戦略的に売値を引き下げることがコンセプトです。それゆえ重要なのは引き算で、確かにカメラセンサーはフラッグシップ機と同じ効果がある訳ではありませんが、80%のユーザーが利用する上で足りる、十分なものと信じています。
──そうしたPOCOブランドのコンセプトを考慮すると、日本向けのカスタマイズは難しいように思えます。対応は検討しているのでしょうか。
スティーブン氏 カスタマイズは製品毎に検討すべきと考えています。今回のPOCO F4 GTは初の製品なのでできるだけ製品価格を安く抑えたかったので、コストを抑えることを重視しました。ただフラッグシップキラーという位置付けに沿い、できるだけ頑張って日本向けカスタマイズを実現していきたいです。
──POCOブランドはオンラインに販路を限定していますが、携帯電話会社向けに端末供給する考えはないのでしょうか。
スティーブン氏 今の所はSIMフリー市場を主体に展開していきます。ただ新しいビジネスを模索しているので、もし携帯電話会社から従来とは違う販売チャネルで一緒に、というのがあれば歓迎したいです。
──ちなみに「GT」という名前は車をイメージするのですが、関係があるのでしょうか?
スティーブン氏 「GT」にはスピード感、速いといった意味合いがありますが、作っている時に車の名前にインスパイアされた部分もあるかもしれません。私は若い時にスポーツカーがすごく好きで、一番クールに感じたスポーツカーはホンダの「NSX」でした。座席やハンドルなどがファンシーという訳ではありませんが、フェラーリと同等のスピードが出る、パフォーマンスに特化した最高レベルの車でした。POCOもぜひ、そのような製品作りをしていきたいですね。
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