第135回
PC初心者のオペレーターたちのために常駐し、相談し、改善し続ける
排泄やおむつの悩みを相談できるコールセンター オペレーターがkintoneになじむまで
オペレーターの不安に向き合うべく、現場に常駐して相談と改善
柴田氏がkintoneを選んだ理由は、「アプリ作成の自由度と手軽さ」「豊富なプラグイン」「作り込むのにCSSとJavaScriptが使えること」など。また、クラウド型電話サービスであるTwilioとの連携が可能だったことも大きな理由だった。部長からも「kintoneはどうだろうか?」というコメントがあり、製品選定の後押しになったという。
こうして柴田氏はkintoneの開発に向き合うことになる。前述した通り、カスタマイズにはCSSとJavaScriptを使うのだが、Cybozu Developer NetworkやQiita、さまざまなブログサイトが参考になったという。「困ったときはkintone ○○で検索していました」と柴田氏は語る。ただ、掲出や更新の日時が古いと、すでに使われていない技術情報であるかもしれないので、そこは注意が必要だったという。
今回構築したシステムでは、お客様からの電話がかかるとTwilio経由で受電。画面がポップアップするので、オペレーターが電話をとると、同時にkintoneの顧客情報アプリを検索し、顧客情報を表示するという。もちろん、なければ新規登録のページが表示されるという。
ただ、柴田氏には「オペレーターさんのPCに対する不安度合いがわからない」という心配があった。「苦手とは聞いていたけど、普段の仕事でPCは使っているので、郵便番号を入れれば途中まで住所が入る程度の一般的な入力補助があれば大丈夫だろうと、私は楽観的に考えていました」と柴田氏は振り返る。
しかし、その想定は見事に外れることになる。柴田氏が日常で当たり前のように使っていた「ブラウザ」や「リロード」という言葉は通じず、しかもオペレーター業務自体が初めてということもあり、苦手意識に拍車がかかっていた。そこで、柴田氏は1~3月の間、可能な限りオペレーターの仕事場に出向き、ロールプレイを見ながら、kintoneのどこを改良すればよいかを調べることにした。
たとえば、あるオペレーターは、想定した質問と回答が書かれたトークスクリプトの通りに会話をしようするあまり、手元の紙を見て、画面のカーソルが迷子になってしまった。そこで、柴田氏は画面を見るだけで、なにを話せばわかるように、トークスクリプトをkintoneアプリに登録した。
また、氏名の入力に関しても、通常は「漢字」「ふりがな」の順番でアプリに登録するが、会話の中では氏名のふりがなを聞いて、「どういう漢字ですか?」と確認するのがむしろ一般的なので、順番を「ふりがな」「漢字」に入れ換えた。さらに、ボタンを押した後の動作も予想しやすいように、「ご注文を受ける」「お問い合わせを受ける」などボタン名も文章にしている。
その他、配送の問い合わせには関しては、「配送料はいくらですか?」「送料は無料になりませんか?」などの質問が来るので、そういった回答もアプリにきちんと記載するようにした。現場でのニーズを聞いて、現場で直す。まさにkintoneならではのアプリ開発フローで、リブドゥのkintoneアプリはどんどん現場になじんでいったわけだ。
平均通話時間は増加したが、「お客様と長く会話できるのは成果」
3ヶ月の間、オペレーターはロールプレイやアプリの操作の練習にもしっかり励んだ。しかし、未経験のオペレーター業務とのことで、最後まで不安は拭いきれなかった。そこで、4月のサービス開始から、柴田氏は週3日間はコールセンターに常駐。オペレーターの不安やわからないを解消することにした。その上で、「オペレーターの状況を把握するため、同じ空間、同じ場所で働くこと」「聞かれた質問はなんでも、何度でもお答えすること」「説明の際に安易に横文字を使わず、言葉の意味やアイコンの形、操作の方法を丁寧に説明する」といった心がけでサポートに臨んだ。
こうしてスタートした「まごころサポート」のコールセンター。何でも質問できる環境で、実際のお客様の問い合わせを受けることで、オペレーターの不安は徐々に解消されていった。そして、オペレーターから改善の提案も出てくるようになった。たとえば、顧客アプリは新規登録画面がファーストビューになっており、注文履歴はスクロールしないと見えないアプリ画面の下に表示されていた。しかし、お客様とのお話中は使っている商品の話になったときに、履歴を見ようとスクロールをすると、会話のテンポが乱れてしまうため、ファーストビューにおいて欲しいという要望が出た。そこで、柴田氏は新規登録画面の右側の空きスペースに履歴を表示できるよう、CSSでカスタマイズしたという。
コールセンターの移設後、平均通話時間が3分56秒から4分54秒に伸びた。通常は多くの対応ができるため、平均通話時間は短い方がよいとされるが、「コールセンターとしてはお客様と長く会話できるのは成果だと考えている」と柴田氏は語る。なにより成果だと感じたのは、お客様からいろいろ相談できてよかったというお褒めの声をいただけたことだという。
今後は、通話内容をリアルタイムにテキスト化し、特定のワードで説明が出るようにしたり、顧客の購入間隔を分析して、メーカー側からアクションをとれるようにしたり、Webやメール、電話などコミュニケーション手段が違っても、同じ対応がとれるような通販にしていきたいという。「オペレーターさんとのいい関係性を築くことは、お客様とのいい関係性を築くための第一歩だと思っています。これからもオペレーターさんが相談に集中できる環境をkintoneで作っていきたいと思います」と柴田氏はまとめた。
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