スマホでの使い放題や充実した海外ローミングを必要としない多くのユーザーにとっては、大手キャリアの通常プランにこだわる理由がどんどん減っている。昨年末にはとうとうキャリアメールのアドレスを残しての移行も可能になった。それでも、大手キャリアから格安SIMに移行するのは嫌だという人は少なくない。彼らにどう説明・説得するか、その方法を今回考える。
格安SIMを拒否する人に無理強いする必要はないが、誤解があるならその誤解は解いておきたい。赤の他人ならば説明をあきらめてもいいが、家族ともなれば話は別。無駄な出費を節約することはもちろん、それによって自分の通信業者選びや特典に制限が出るのなら、交渉してみるのもいいだろう。
「面倒くさい」こそが「最強」の難関かもしれない
まず、一番多いと思われるのが「面倒くさい」というもの。これを言われたらどうしようもないと感じるが、その面倒くさいも誤解のうえでの話ならば解決の方法はある。筆者が聞くうえでの「面倒」は、サービスやプラン選びを理解する面倒、手続きに行く面倒、機種変更する面倒などに分けられる。
これらの面倒も、3大キャリアのオンラインプラン(ahamo、LINEMOなど)やサブブランド(UQ mobile、Y!mobile)などによって、だいぶ状況が変わった。まず、同系列のサービスに乗り換えるならば選択肢は少なく選びやすい。手続きもキャリアショップでほとんどを済ませることが可能。端末も基本的にそのまま使えるし、一部のケースで必要となるSIMロック解除にしてもキャリアショップで依頼することが可能だからだ(店頭では手数料が必要)。
具体的には、ドコモの通常プランからahamoに乗り換えるならドコモショップでdアカウントを発行もしくはパスワードを調べてもらう。ahamoへの移行における最大の難関は、このdアカウントの取得、パスワード管理と思われるからだ。dアカウントでアクセスできる状況ならば、キャリアメールの持ち運びサービスの申し込みも簡単だ(「解約してもメアドそのまま使えるキャリアメール持ち運びを体験! これで3大キャリア離脱も問題無しか?」)。
また、エコノミーMVNOとして、ドコモショップで扱われているOCN モバイル ONEへの移行も比較的簡単。NTTの冠にこだわる人にはこれをオススメするといいだろう。
auかソフトバンクのユーザーなら、キャリアショップでUQ mobileやY!mobileに乗り換えるのがいいだろう。キャリアメールを引き継ぐ場合は、オンライン申込限定だが、そのアカウントをショップで整理しておいてもらえば申し込みしやすい。
こうした作業における最大の手間は、本人をキャリアショップに向かわせることになる。事前に予定を立てる必要はあるが、最近は来店予約が基本で待ち時間は大幅に短くなっている。キャリアショップは混んでいて長時間待つという印象を持っている人もいるが、その点もしっかり説明してみよう。
今のスマホ/ケータイが気に入ってるから乗り換えたくない
これは典型的な誤解といえる。スマートフォンとキャリアが完全にくっついていて、「キャリア変更=端末を変える」と思い込んでいる人だ。当連載では使わないが、「格安スマホ」などという端末と回線をごちゃまぜにした呼び方も使われており、格安SIMにしたら格安SIM業者の用意する「安物の機種」にしなければならないと信じてる人は意外に多い。
誤解を解くには、回線契約と端末は別と説明していくしかなく、別々に用意した端末を使うことは悪いことやイレギュラーでななく、前総理大臣や政府も推している、ということも含めて説明するといいだろう。
そして、もう1つの関門はSIMカードを取り出すこと。それだけでもスマートフォンの分解や改造という認識で、壊してしまうから「専門業者」でしか触ってはいけないという人も一部にいる。これも説得するしかないが、ドコモの通常プランからahamoへは基本的にSIMカードの交換はないため少しハードルが低くなる。
そして、説明の過程で「格安スマホ」という用語は絶対に避け、あくまでおトクな契約に移行する点を強調してほしい。
なお、今のケータイが気に入っているから、と言いながらも事業者を動くとなると、そのタイミングで買い替えたくなる人は多い。キャリアショップで機種を購入したいなら移行する前がいいが、問題をややこしくしたくないなら乗り換え後の方が楽。
スマートフォンの特価販売があるMVNOの格安SIM事業者に乗り換えと同時購入する場合でも、一度は回線だけ乗り換え、落ち着いてから新しい機種を使い始めたほうがいいだろう。まずは回線を変えても問題ないことを確認してもらう、これが重要だ。
そして、一度乗り換えやSIMの交換を経験すれば、SIMフリー機の購入や中古ショップの利用など、あらゆる選択肢への抵抗もぐんと下がるからだ。
電話がつながらない、遅い、圏外になるといった誤解
MVNOの格安SIMでは、昼休みなど混雑時間帯の極端な速度低下に端を発して、通信品質について尾ヒレのついた誤解もよく聞く。実際、MVNOの格安SIMは以前ほど極端ではないが、昼休みの速度低下はハッキリ感じることもある。しかし、エリアの問題や通常時間帯の通信不良、まして通話がつながらないという点はほぼ誤解と言える。
格安SIMという言葉の意味が広すぎることもあるが、3大キャリアとそのネットワークを使ったMVNOの通信エリアは同一。もし、あるとすれば機種ごとのプラチナバンドの対応の違いということになるが、現在では世間で言われるほどバンドの違いによるエリアの差はないという印象だ。しかも、iPhoneを使っている限り、そうした問題は発生しない。
楽天モバイルを格安SIMと捉えるならばエリアの差が出てくる可能性はあるが、その程度のこと。格安SIMだとエリアが違うと言ってる人もいるが、どういう状況でそう思うのか、詳しく聞いてみたいところだ。
ちなみに、筆者の周囲の事例では、APN設定などがまったくされておらず、通信できないことがエリアの差だと信じている人もいた。また、別の例ではSMSが通らない例があり、これも格安SIMのせいと決めつけていた。実際は一部キャリア販売の機種では、汎用のSMSアプリがデフォルトで使えるようになっていなかった。
また、自分で注意しなければならない点だが、プリフィックスサービス経由の発信では番号通知に余計な番号がつくことがごく一部で発生し、かけ直しでおかしくなることがある。
通話の発信にプリフィックスを使わないahamoなどのオンラインプラン、サブブランド、日本通信系のサービスでは問題のないことだが、MVNOの格安SIMで中継電話を使う場合は確認しておいたほうがいいだろう。
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