時計業界の変質やコロナ禍など、複数の要因によって例年の新作時計発表の基盤や様式が大きく変わった。そんな折、新機軸となる世界最大級の国際時計見本市「Watches&Wonders 2022」がスイス・ジュネーブで3月30日〜4月5日(現地時間)に開催された。これと前後するかたちでほかのプラットフォームでも各社が多くの新作を発表し、時計シーンは目下「花形」が出揃った格好だ。
かつてない時代の節目に際し、新作群は従来のトレンドに鑑みつつ不透明な未来を模索するかのような、多様な試みや指向の変化が見て取れる。その中には、新時代にふさわしい性能とデザインを備えた実力派が少なくない。注目モデルに、フォーカスした。
確かな技術で裏打ちされた、華やかな美貌
グランドセイコー/エレガンスコレクション
1960年にセイコーの高級コレクションとして誕生し、2017年にひとつのブランドとして独立したグランドセイコー。出展した「Watches&Wonders 2022」以外でも今期多くの新作を発表し、世界の注目を集めている。白眉といえるのが、エレガンスコレクションの「SBGW283」だ。
一見して目を引くのは淡いブルーの端麗な文字盤。春から夏にかけての「季春」(きしゅん)と呼ばれる時節を表現したもので、夏の到来をほのめかす空、陽光が増すとともにコントラストを強める地面の影など、日本ならではの季節の情感を熟達した職人技で表現しているのだ。
ベースとなるのは、初代グランドセイコーのDNAを継承する手巻き式Cal.9S54の進化型Cal.9S64を搭載して2017年に発表されたSBGW231だ。「セイコースタイル」と呼ばれる独自のメソッドに則ったデザインはシンプルで機能性に富み、刷新したCal.9S64のクオリティと相まってたちまち人気となった。完璧な素地に、「色」でさらなる魅力を加えたのがSBGW283なのだ。加えていえば今期はシーン全般に配色で新展開を狙った新作が多く、このモデルも確かにそんな、軽やかな「旬」を感じさせる。だが、本質はグランドセイコーならではの普遍的かつ恒久的な和の美の追求であり、長く使い込むほど愛着が増しそうな、奥深い色みは別格だ。
前述のCal.9S64は、精度の要となる脱進機に、半導体で使われる最新技術を用いたMEMS(メムス)製法を採用。精度の安定化を高度に実現しながら、トルクのロスを最小限に抑えることで最大駆動時間が先代より22時間も長い約72時間となっている。さらに、グランドセイコーでは比較的手頃な価格設定も魅力のひとつだ。
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