北九州市「IoT Maker’s Project」2021年度デモデイ
浜辺ごみの自動収集ロボなど起業家、学生らと地元企業が共創 北九州市が試作コンテスト実施
ただ置くだけで導入できる駐車場サービス「RAKUTTO!」
最後に登壇した北九州高専3年(発表時)で高専起業部の部長の白石凌祐氏は、置くだけで導入できる駐車場サービス「RAKUTTO!(ラクット)」を発表した。スマホから予約情報を送ると駐車スペースに置いて縮んでいた三角コーンが伸びて立ちあがり、予約が完了する。身障者用の駐車スペースに健常者が車を止めてしまい、車いすユーザーが使えずわざわざ目的地より遠くの駐車場を探している困りごとを解決する。
車いすユーザーにヒアリングすると、「空いている身障者スペースがどこにあるか分からない」が18人、「目的地の遠くにしか車が置けない」が15人、「三角コーンを自力で動かせない」が10人だった。駐車のため車から降りて三角コーンをよけるのも大変という課題も気づいた。伸縮可能な折りたたみの三角コーンと、Wi-FiとBluetooth内蔵のマイクロコントローラー「ESP32」、CPUファンを使用した。スマホアプリ「Blynk(ブリンク)」で予約情報をサーバー送り、サーバーからESP32に予約情報と処理命令を流す。
利用者は予約可能な駐車場を地図で選んで予約。ESP32がファンに命令を出し三角コーンを膨張して立ち上げるが、駐車場に入ると今度は三角コーンを縮小。車から降りずスマホだけで駐車可能だ。駐車時間の検知とキャッシュレス決済を導入して精算機が不要になれば、車いすユーザーが車から無理やり精算機に手を伸ばすこともない。会場では、スマホに表示した「予約」ボタンを押して三角コーンを立ち上げ予約が完了。駐車場に着いて空気を抜くため「駐車」ボタンを押すとファンが逆回転して縮んだ。
駐車場運営会社は工事不要で導入が完結する。メンテナンスは3カ月に1回で、試作品のバッテリー交換は1カ月1回。競合の駐車場サービスとの比較もプレゼンでは示され、工事の有無や予約スペース先取りのトラブル予防で優位性があることを説明。特に私有地や既存の駐車場に置けば予約機能のある有料駐車場になる点を強調した。
白石氏は「まず駐車場運営会社に提供していく」とビジネス戦略を話した。BtoB(企業間取引)事業として1台20万円で提供し、防水や高耐久、デザイン改良、予約情報のクラウド管理を機能追加する。運営会社向けた販売で資金を蓄えてから身障者向けビジネスに着手する。自分の駐車場を貸し出したい一般向けにも販売していく。
プレゼン後、第一交通産業株式会社(グループの「ダイイチパーク」)は「コインパーキング事業は他社との差別化に苦労しているのが現状。伸び代があり、ブラッシュアップしていくと面白いものができてくる」と講評した。
製造業の厚い北九州地盤の共創企業とアウトプットを
3者のプレゼンを終えてメンターと開発協力者が全体講評を寄せた。
ABBALab 小笠原氏「プロトタイプまで作り続けて」
みなさん、いいプロト(タイプ)を作られた。IoT Maker's Projectはプロトまでやりきるのが続いている。プロトまで作らないとビジネスが思いつかないことがあるので、これからもプロト作りをやりきる存在であってほしい。
マクアケ 木内氏「5年の積み重ねを感じる」
身の回りの大切な人の困りごとから具体的なニーズや課題を感じて、具体的な目標を作って動くものをプレゼンするのは素敵なこと。年々レベルが上がって5年の積み重ねを感じた。製造業の厚みのある北九州地盤の共創企業とアウトプットにつなげてほしい。
Shiftall 岩佐氏「臆せず事業転換することも必要」
どうやって売り、誰が買って、どう広報・宣伝して事業として成り立たせるのかのビジネス面を補強すると、よりよくなる。三角コーンのこだわりでも話したが、壁にぶち当たったら大きく事業転換する「ピボット」で臆せずギアを切り替えていくことも必要だ。
西日本工業大学デザイン研究所 中島氏「優しさを持ち続けて」
若く爽やかでほっこりするプレゼンだった。障害者や高齢者、海のきれいさを守り、持続可能な社会に対する考えはみなさんの優しさから始まっている。その優しさや考えをずっと持ち続けて、今後も社会に影響を及ぼしていく人になってほしい。
Next Technology 渡邊氏「半年間の孤独をもっと支援したい」
2年前にここに出て私もチャレンジしたが、この半年間は孤独だっただろう。「これがやりたいことなのか」と振り返ったりするものだ。「本当にやっていいんだ」と採択者の気持ちに心に寄り添って支援できると、もっと形になる物が増えると思っている。
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