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北九州市「IoT Maker’s Project」2021年度デモデイ

浜辺ごみの自動収集ロボなど起業家、学生らと地元企業が共創 北九州市が試作コンテスト実施

2022年05月13日 07時00分更新

 北九州市はIoT(モノのインターネット)に特化した創業支援コンテスト「IoT Maker's Project」で、2021年度の成果発表会「Demo day(デモデイ)」を2022年3月26日に同市小倉北区の「COMPASS小倉イベントスペース」で開いた。地元企業と連携したIoTビジネスのチャレンジ支援で資金提供してプロトタイプ(試作品)開発しており今回で5回目。自由テーマのほか、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラル(脱炭素)、人を助けるIoTなど「共創企業」提示のテーマで事業アイデアを募り、全国61件の応募から採択された3者が、2021年10月から半年かけて事業仮説を検証して試作品を開発した。

 共創企業は、第一交通産業株式会社、株式会社ドーワテクノス、トヨタ自動車九州株式会社、株式会社ラックの4社。「IoTエキスパート」のメンターは、投資家で株式会社ABBALab代表取締役の小笠原治氏、株式会社Shiftall代表取締役CEOの岩佐琢磨氏、株式会社マクアケ共同創業者/取締役の木内文昭氏が務めた。設計/開発は、北九州工業高等専門学校(北九州高専)発ベンチャーの合同会社Next Technology(ネクストテクノロジー)代表の渡邊祥気氏、UI/UXデザインでは西日本工業大学デザイン研究所長の中島浩二氏が支援したデモデイの様子を紹介する。

玄関チャイムで振動する腕時計型デバイスで友人来訪を逃さない「こーるばー」

 最初に登壇した北九州高専3年(発表時)の原田知佳氏は、腕時計型デバイス「こーるばー」を披露した。耳が遠い祖母が玄関チャイムに気づかず、せっかく訪ねてくれた友人と過ごす時間を逃していたのが開発のきっかけだ。友達と話す時間が生きがいの祖母は庭や水場にいることも多く、チャイムを聞き逃していた。

 60代から80代の男女を調べると、チャイムが聞こえない経験者は6割を超えた。庭や水場のほか2階やテレビ視聴で気づかない。チャイムを光に変換しても寝ながらテレビを見ているので気がつかないし、音を大きくすれば家族にうるさがれるので、腕につけて振動させることにした。

 親機はインターホーンに付ける装置で、チャイム音を受信して信号を送る。腕時計型の子機がその信号を受けて振動する。省電力で通信機能付きマイコンモジュール「TWELITE(トワイライト)」を使い、Wi-Fiがない高齢者宅でも利用できる。会場で行われたデモには原田氏の祖母も登場。チャイムが鳴ると左手首の子機が振動した。

 今後は試作品を祖母と近所の65歳以上の女性5人に試してもらい、使用感をヒアリングして改善する。小型化して見た目を改良するほか、チャイムに気がついたと来訪者に知らせる音声合成を追加する。「玄関に出るまで時間がかかる」という意見を受けて、「今から行くよ!」「ちょっと待って」と音声で出す。

 クラウドファンディングの利用率が最も多い30代男性をターゲットに、祖母へのプレゼントとして販売する。原田氏は「おばあちゃんの生きがいの友達と話す楽しい時間を守るために生まれたアイデア。難聴の制限を受けずにもっと日常を楽しむことができる」と開発したIoTデバイスの意義を話した。

 プレゼン後、共創企業のラックは「コンセプトがしっかりしていて、アイデアを膨らませて実現化した。実際の販売に向けて引き続き頑張ってほしい」とコメント。トヨタ自動車九州は「誰かの困りことを解決したいという顔が明確に見える。会場に来ていただいたが(祖母の)顔が見えてよかった」と講評した。

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