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【連載】ラー博にまつわるエトセトラ Vol.3

「食べ歩き」という新たなレジャーを作り上げた「ミニラーメン」

2022年04月12日 12時00分更新

 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 今回は、今でこそ来館者の65%以上が注文し2~3軒食べ歩く「ミニラーメン」についてお話いたします。実はこのミニラーメン、創業当時から存在していたわけではありませんでした。

左がレギュラーサイズ、右がミニサイズ。具材の量も変わります

 前回の記事はこちら

ラー博歴代記録を総なめ 和歌山「井出商店」

 過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 当館のコンセプトが「飛行機に乗らずとも全国の名店の味が一ヵ所で味わえる」というものでしたので、お客さんはやはり複数のラーメンを味わいたいという思いがあり、開業直後からお客様より「小さいサイズのラーメンを提供してほしい!」というリクエストは多くありました。

 一方、当時ラーメン店でミニサイズのラーメンを提供するという文化や習慣が全くありませんでした。

 また「ミニラーメンはラーメンじゃない!」という店主様の考えもあり、すぐにミニラーメンを作るという流れにはなりませんでした。

 しかしその後もお客様からミニラーメンの要望は高まり、本格的にミニラーメンの議論がなされました。

 ミニラーメンを出すにあたり課題点は主に2つありました。

・レギュラーサイズの設計でラーメンは作られているため、ミニサイズにした場合同じ味にならないのではないか?
・大半のお客様がミニラーメンを食べることにより、回転は変わらないが客単価が落ちてしまう。

 そのような理由からラーメン店主様からの反対が多くありました。

 ひとつめの問題を解決するにあたり、私たちはどのくらいの量であればレギュラーサイズと変わらない味になるか? というテストを繰り返しました。実際に味は変わらなくとも、食べ始めから食べ終わりまでの抑揚や満足感なども考え、何度も何度も試作と試食を繰り返し、最終的にはレギュラーサイズの60%くらいのサイズが理想であるという結論になりました。

 2つめの問題についてですが、客単価は減るのは避けられませんが、これまで1人あたり1.1杯だった食べ歩き率が1.4杯に上がれば、各店を利用する人が増え、最終的にはミニラーメンを始める前よりも売上は上がるのではないかという仮説を立てました。

 0.3杯は少ないように見えますが、10万人が来館すれば11万杯が14万杯になります。3万杯を30日で割ると1日1000杯、9店舗で割っても111杯増えるということなのです。

 そして全店舗のラーメン店主様に集まってもらい、この仮説を説明しました。

 しかしながら全ての店主様が猛反対でした。

 そこで期間限定のイベントとしてミニラーメンを出していただき、仮説のような結果が出なければ今後ミニラーメンの議論は一切しないという条件付きで「緊急指令 ラー博のご当地を食べ尽くせ!」というイベントを実施しました。1999年12月1日~2000年2月29日の3ヵ月間のイベントです。

1999年に実施した食べ歩き企画のスタンプカード

 このイベントは各店でミニラーメンを食べるとスタンプがもらえ、9店全店のスタンプを集めると、もれなく3ヵ月フリーパスがもらえ、さらに抽選で100名様に「ラー博オリジナル種丼」がもらえ、そして2回以上クリアされたかの中から抽選で1組2名様に羽田・徳島の往復航空券(この当時期間限定で徳島「いのたに」が出店していたため)をプレゼントするという内容でした。

 そして企画がスタートすると、仮説を超える食べ歩き率(1.5~1.6杯)となり、各店の売上も上がり、ラーメン店主様も納得していただき、イベント終了後もミニラーメンを提供することとなりました。

ミニラーメン誕生後は館内で配布するフロアガイド等で紹介

 スタート当初はミニラーメンの認知度も低かったこともあり、最初は4割程度の注文比率でしたが、その後徐々に定着し、現在では65%前後で推移し、多い日には70%を超える時もあります。

 ミニラーメンが半分のサイズと思われている方が多くいらっしゃいますが、実際は麺が80g前後、スープは300cc前後です。

 このミニラーメンは結果的に「食べ歩き」という新しいレジャーが生まれ、「ラー博でラーメンを食べ歩く」という目的で来館される方が増えていったのです。

 次回は「創作ラーメンイベント」の誕生秘話をお話いたします。お楽しみに!

 新横浜ラーメン博物館公式HP
 https://www.raumen.co.jp/

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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。

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