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I・TOP横浜セミナー:最初の一歩はどこから?100万円でできる製造現場のIoT化で、最初の一歩を踏み出そう!

年100万円の削減で1年で投資回収も 中小製造業ができる現場のIoT化

2022年06月17日 11時00分更新

監視システムだと反発も
IoT推進には若手参加がカギ

 続くパネルディスカッションでは、横浜企業経営支援財団「IDEC横浜」でものづくりコーディネーターの後藤昌治氏も参加し、中小製造業がどのようにIoT導入に取り組めばよいのかを意見交換した。

 IoT相談の最近の傾向でアイルミッションの川人氏は「AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のはやり言葉に飛びつく状況はなくなり、課題が明確になってきた。食品系の製造加工は何かあるとすぐSNSで拡散されるので品質管理を上げたい。製造業の非効率なイメージを刷新して若手採用に向けたイメージアップにつなげたいという相談も増えている」と話した。

 青葉電子の小野氏は「(製造)ラインの改善や省力化よりも、まったく違う新しいことにチャレンジする方がうまくいく。力の入り方が違う。新しいビジネスにつながるので困難があってもどんどんやる」と話した。その一方で、工程改善の場合は「現場は忙しくて協力してくれないと担当者は悩んでいる。中小だけでなく大手企業でも」と言う。

 吉岡精工でIoT導入の旗振り役だった加藤氏は「現場から“監視システム”だと言われたので、人を監視するのではなくデータを取って(業務を)楽にするため、みんなの努力を数字で見せるのが目的だと訴えた」と話した。その結果が電力代100万円削減になったと説明して納得してもらった。

 IDEC横浜ものづくりコーディネーターの後藤氏は「支援先は10人から30人の会社が多い。中小製造業はQCD(Quality、Cost、Delivery)の品質、コスト、納期が求められるので、その課題を明確にしてからツールを示して進めている」と話した。いきなり「これ(IoTの機械)を買いたい」ではうまくいかないという。

 旗振り役が一人で頑張ってもIoT化は進まない。どのように組織を巻き込むかで加藤氏は「部署に関係なく若い人で興味をもってくれそうな4人選んでチームをつくった。社内情報の共有でどんなSNSを使ったらいいか調べてと指示すると、いいツールを持ってきてくれた。メンバーで情報発信していった」と若手参加がポイントと強調した。また数値データが出ると面白がって目標にしたくなり、「稼働率40%から50%を目指す」とITが得意ではない人が自発的に入ってきたことがあった。

 後藤氏からも若いメンバーを加えてうまく回った事例を報告された。「若い人は教えると早く覚える。こういうやり方あるよと言うと、次に行った時にはもうできていた。ちょっと背中を押すだけ。成長が早い」(後藤氏)。

 川人氏は「DX推進やIoT導入はダイエットに似ている。目指す姿は腹筋が割れた筋骨隆々なスタイルでも、まずはぜい肉を落とすところから進めないと結局途中で疲れて駄目になる」とダイエットに例えた。

 世の中の興味を引くテーマがあれば、そこ部分を伸ばして尖らせることも大事だ。成功事例を作りたいのでベンダーは費用の持ち出しになっても支援する。小野氏は「自分たちの得意な部分、1番世の中にアピールできるところをぶつけていくとベンダーが協力する。社会的に価値のあるリサイクルのような分野では協業がうまくいく」と話した。

中小製造業のIoT化の先にあるもの

 加藤氏は、電気代の年間100万円削減は副産物で本丸は先にあると考えており、いろいろなデータをリンクして予算と実績を管理する「予実管理」の実現を描いている。3~4年先の課題だ。とは言え「立派なロードマップが最初からわけではない。まず目の前にあるものからやってみたら結果が出たので次に行ける。その繰り返しだ」(加藤氏)。現場には導入時期が異なる新旧さまざまな機械があって、データ連係が難しいという。

 エフィシエントの脇坂氏は「小さな成功体験が大事で工場全体に波及する。その先にスマートファクトリーがある。いろいろなデータをつなぎ、管理システムなど在庫を含めて工場の全データを管理するのが最終形」と将来構想を示した。

 川人氏は「見えなかったことが見えて、できなかったことができるようになると自然と現場からもっとこうしたという発想が出てくる。データ化してどうなるのと半信半疑があっても、一歩を踏み出して社内の雰囲気が変わることがDXの第一歩だ。できるところから勇気を出してやってみることが必要」と説いた。

 小野氏は「この5年でAIもIoTもすごく簡単になった。できると分かれば使ってみたくなり、面白いので楽しんで取り組めて、後は自走できる。日本の製造業は現場の創意工夫があるから、(IoTも)その一つだと取り入れれば楽しくなる」と付け加えた。

 加藤氏は「センサーをつけて赤いランプが点灯するだけも違う。とにかく第一歩で何かデジタル的に変えてみる。やってみると本当に楽しいし思ったよりも工数が縮まる。1回やってしまうと手放せなくなる」と話した。

 モデレーターを務めたI・TOP横浜プロジェクト創出事務局で三菱UFJリサーチ&コンサルティング東京本部地域戦略ユニット主任研究員の中田雄介氏は「まずはやってみて、ステップアップを踏んでいくのがIoT化に共通している。参考事例集をWebサイトに掲載しているので参照してほしい」と話してイベントを締めくくった。

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