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I・TOP横浜セミナー:最初の一歩はどこから?100万円でできる製造現場のIoT化で、最初の一歩を踏み出そう!

年100万円の削減で1年で投資回収も 中小製造業ができる現場のIoT化

2022年06月17日 11時00分更新

お詫びと訂正:掲載当初、一部表現に誤りがありました。該当部分を訂正すると共にお詫び申し上げます。(2022年7月4日)

 横浜市のスタートアップ成長支援拠点「YOXO BOX(よくぞボックス)」が2022年3月8日、オンラインイベント「I・TOP横浜(アイトップヨコハマ)セミナー:最初の一歩はどこから?100万円でできる製造現場のIoT化で、最初の一歩を踏み出そう!」を開いた。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用して中小製造業の生産性向上を支援する「I・TOP横浜」と連携したセミナーで、100万円の設備投資でできるIoT化を紹介し、パネルディスカッションで課題の乗り越え方を議論した。イベントの模様を紹介する。

スモールスタートの事例集作成

 I・TOP横浜は「IoTオープンイノベーションパートナーズ」の略称で、業種や企業規模の枠組みを超えて約600の企業・団体が参加する横浜市のIoTビジネスプラットフォームだ。事業化促進と生産性向上を通じて新たなビジネスモデルを創出するため、国家戦略特区を活用した実証実験や企業間のマッチングを支援している。

 2021年度は「中小製造業の生産性向上に関するIoT導入」をワーキンググループで議論した。IoT導入で何をしたらどんな効果があるのかが分からず、最新設備で劇的に解決する万能論があるとの課題が分かった。そこで、目指すべき目標を描いてステップアップする中小企業が、横浜市や神奈川県の補助金を利用することを想定してスモールスタートの「100万円で導入可能な事例集」を作成した。

 横浜市は、横浜企業経営支援財団「IDEC横浜」を通じて「中小企業のデジタル化相談」を行っており、専門家が企業を訪問して課題抽出や導入提案をしている。コスト負担では設備投資導入の助成金を用意。助成率が2分の1で、限度額50万円の導入型と、レベルの高い取り組みへの限度額200万円の発展型がある。

年間100万円の電力代削減、投資は1年で回収

 イベントでは導入事例として、ワーキンググループに参加した株式会社吉岡精工(横浜市鶴見区)の加藤誠司氏が報告した。吉岡精工は、自動車のエンジンバルブの金型と、半導体製造装置に載せる高精度部品を設計製造する2つの事業を展開している従業員約20人の企業だ。

 吉岡精工は機械稼働情報の可視化に100万円投資して、年間100万円の電気代削減を実現した。周辺機器を含めて200万円以上かかっているが、横浜市と神奈川県の助成金に応募して採択され、実際の投資は100万円で済んでいる。加藤氏は「電気代削減で投資は1年足らずで回収され、毎年100万円の電気代がかからなくなる」と成果を話した。

 導入したのは、トヨタ系工作機械メーカーでジェイテクト(JTEKT)の「稼働アップNavi」だ。機械稼働監視システムは世の中に多くあるが、ジェイテクトの工場を訪問して自社工場内で稼働している様子を見学して決めた。センサーを機械に貼り付けてデータを見える状態にする。まず機械5台からスタートして現在は20台のデータを集めている。

 その結果、無駄な「暖機運転」がわかったので削った。早朝に来る人がすべての機械を起動して温めていたが、せっかく暖機運転した機械も今日は予定がないからと電源を落とすことがあったので、稼働予定に合わせて電源を入れるようにした。加工が終わっても業務終了の17時まで放置されていた機械の電源も切った。さらに午前8時に始業してもミーティング後の9時から生産していたので、情報伝達は朝礼での口頭からSNSに切り替え、始業直後から生産開始するようにした。

 データは、アラームかプログラムが動くと緑や赤のライトが点灯する「表示灯」を設置して光センサーでその光を拾ったり、電気信号が流れているところから信号を分けたりして集めている。IoT導入のコツについて加藤氏は「機械全部ではなく、すぐできるところから可視化してみる」と指摘した。またベンダーにすべて任せるのではなく自分たちで試行錯誤することも必要で、「データを集めただけでは宝の持ち腐れ。何を分析して可視化したいのかを明確にする」と付け加えた。

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