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豊田市のものづくり企業が新しい取り組みを披露「SENTAN Maker’s Pitch」

ティーチング大幅削減AIロボ、ドローンの有線給電など豊田市の光るモノづくり7社

2022年04月08日 06時00分更新

 愛知県豊田市は2022年1月18日、ピッチイベント「SENTAN Maker’s Pitch」の第3回を「ものづくり創造拠点SENTAN」にて開催した。本イベントは、豊田市のモノづくり企業や団体が企業や投資家に自社のアイデアや技術、製品をプレゼンすることで、販路拡大や事業提携の促進を目的としたもの。今回は「SENTAN発の新規性・独創性のある製品・技術等」をテーマに7社が登壇し、各5分間のピッチを行なった。

62人の従業員とつくる“いい感じ”の鉄製雑貨ブランド「62fe」

 株式会社市川鉄工所は、鉄の切削加工で自動車部品などの工業製品を製作する1962年創業のものづくり企業だ。コロナ禍でテレワークの普及が進むなか、将来的にも現場で働く仕事に誇りを感じてもらえるように、“いい感じ”の働き方を目指して、労働環境の改善や新しいものづくりに取り組んでいる。そのひとつが『工業製品のスペックと本気を、机に』をコンセプトとした雑貨ブランド「62fe」の立ち上げだ。ブランド名は、創業1962年で従業員数の62と、鉄の元素記号「fe」から名づけられたもの。現在、一輪挿しやスマホスタンドをオンライン販売しており、商品価格は4000円~6000円と若干高めだが、工業製品ならではの武骨さにファンを集めているそうだ。

株式会社市川鉄工所. 取締役社長 市川 暢啓氏

軽くて丈夫で地震に強い「張る」ファイバーシート天井システム

 太啓建設株式会社は、地震対策に適した新しい天井「ファイバーシート天井システム」を開発。大地震が発生すると、天井だけが落ちることがある。2016年4月の熊本地震では、耐震性のあるはずの避難所指定の建物のうち43%が天井の崩落で使用できなくなったという。従来工法の天井が落下しやすいのは、揺れにより天井を吊っているフックが変形するのが原因だ。

 ファイバーシート天井システムは、「吊る」から「張る」に発想を転換。部屋の4辺に金具を取り付けて膜材を張る工法で、短工期かつ安価に施工できる。天井のシートは、厚さ0.5ミリの丈夫なグラスファイバー製で平米あたり700グラムと軽く、最大300平米に対応。シートなので、もし落下しても室内にある物品の損傷が少なく、また天井の高さを自由に調整できるので、空調効率の改善にもつながる。足場なしで取り付けられるので、これまで天井のなかった工場や倉庫にも手軽に施工可能だ。

 現在は、一般社団法人ファイバーシート天井協会として全国展開しており、正会員と施工業者、設計士を募集している。また防災・減災に取り組む企業や、電気や設備などの業種と広く連携していきたいとのこと。

ファイバーシート天井システム

AIを搭載した協働ロボット「MAIRA」

 株式会社日栄機工は、AIを搭載した協働ロボット「MAIRA」を紹介。同社は1973年の創業以来、自動車産業機メーカーとして自動車部品工場向けに機械装置の製造を手掛けてきたが、近年の電動化の波を受け、駆動系設備投資が減少。次なる事業の軸として、独NEURA社と提携してロボット販売を開始している。

 AIを搭載する協働ロボット「MAIRA」は、AIがものの形状などを自己判別できるため、従来の産業ロボットに比べてセッティングとティーチングにかかるコストを大幅削減できるのが特徴だ。すでにドイツや欧州ではメルセデス社やエアバス社での導入実績があり、トヨタ自動車株式会社が購入を決定しているとのこと。当面は自動車産業を中心に、将来的には精密機器の製造や医療サポートロボット、食品・化粧品・医薬品への展開を目指す。

独NEURA Robotics製ロボット「MAIRA」によるバラ積みピッキング

ドローンの長時間飛行を可能に!ドローン有線給電システム

 ドローンは保守点検作業などに利用されているが、連続飛行時間が約30分と短く、バッテリー交換や充電の手間がかかり、今ひとつ使い勝手が悪い。株式会社フカデンは、ドローンに有線で電源を供給するシステムを開発。有線なので、機動性や飛行距離、電源必須という制限はあるが、例えば、風力発電のブレードの点検、スポーツなどのライブ中継、災害時にはドローンに通信基地局を搭載して通信インフラを維持する、などの活用が考えられる。導入価格は約100万円から。ドローンとシステムは分割方式なので機種を問わず対応可能だ。

 標準ではコードリールの巻取りは手動だが、新たに自動巻取りシステムを開発・製品化している。また給電線自動巻取り機の30メートルタイプ(航空法上の許可承認が不要)、国産フライトコントローラーも開発中だ。

自動車部品のスクラップを再び自動車部品にリサイクル

 三井屋工業株式会社は、廃棄プラスチックのリサイクルシステム「MPS」を紹介。MPS(Mitsuya Pelletize System)は、自動車の部品を生産する際に発生するスクラップを同社独自技術で粉砕・造粒し、板に押し出して再び自動車部品にリサイクルする仕組みだ。現在はトランク内装品の生産に導入されおり、従来の製造方法に比べてCO2 排出量38%削減、また他社製品に比べて40%軽量のため、走行時のCO2削減効果も期待できる。

 現在は社内で発生したプラスチックのリサイクルのみだが、多様な廃プラの再加工技術へと発展させ、自動車部品以外への利活用も目指している。技術開発、資源回収から加工後の販路拡大に協力してくれる仲間を募集中だ。

 有志団体DreamOn/「未来生活体験テーマパーク『FLEX Park Aich』  有志団体DreamOnは、空飛ぶクルマを開発してきたCARTIVATOR を前身とする団体だ。2020年にはSkyDriveとの共同で日本発の有人デモフライトを実施、2021年から団体名をDream Onに改称し、新たなテーマ「未来へのタイムマシン」の実現へ向けて活動している。そのプロジェクトのひとつが、未来生活体験テーマパーク「Future Life EXperience(FLEX)Park」だ。その第1弾として、東京・虎ノ門にFLEX Park Tokyoを開設し、空飛ぶクルマや宇宙旅行などのVR体験コンテンツを提供している。2022年は「FLEX Park Aichi」を企画しており、ものづくり創造拠点SENTANにて2022年中にオープン予定だ。

家庭料理の下ごしらえが楽になる調理ロボット「明日煌」

 ものづくりミライ塾第5期生によるチーム「ASU☆KIRA」は、家庭用料理ロボット「明日煌(あすきら)」を開発している。家庭料理の中でも手間がかかる、野菜の「皮むき」や「カット」、時間のかかる「炒める」の3つの機能を搭載。皮むきは野菜ごとに最適化し、身崩れや削り過ぎなどの食品ロスを抑えられる。業務用には自動調理ロボットや専用の調理機はあるが、いずれも大きく高価だ。明日煌は、家庭向けに小型・低価格とし、介護施設や給食センターなどの導入も想定している。今後は、洗浄、自動搬送、かくはん、味付けなどの自動化機能を拡充し、スマホアプリとの連携機能を搭載していく予定だ。

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