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2022年2月22日開催「起業前から知っておきたい知財基礎知識by IP BASE in 神奈川」レポート

スタートアップで起こりやすい知財トラブルを防ぐには?

2022年03月30日 16時00分更新

中小企業基盤整備機構の創業・ベンチャー支援事業

 第4部は、中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)の大原氏が、中小機構の創業・ベンチャー支援事業を紹介。中小機構は、起業前後のステージごとに7つの支援メニューを提供している。このうちインキュベーション事業、アクセラレーションプログラムFASTAR、Japan Venture Awardsについて説明した。

 インキュベーション施設は、ベンチャー企業向けの事業用賃貸施設。中小機構では全国に29施設を運営しており、累計1900社が入社している。施設の多くは給排水や動力電源などを備えたラボタイプで実験や研究開発に対応。また各施設にはインキュベーションマネージャーが常駐し、事業計画や知財戦略の策定など経営面についてのアドバイスも受けられるのが特徴だ。

 FASTARは、6カ月の短期集中で事業成長の支援をするプログラム。経営分析や開発、知財戦略、マーケティング、資本政策など、中長期的な事業計画を伴走支援する内容で2019年からの3年間で55社を支援している。

 Japan Venture Awardsは、ベンチャー企業の経営者に対する表彰制度。ロールモデルとなるような経営者を表彰することで、新たな事業の創出や育成を促進することを目的としている。過去には、株式会社ユーグレナの出雲 充氏が経済産業大臣賞を受賞している。

スタートアップで起こりやすい知財トラブルを防ぐには?

 後半は、今井氏、川上氏、大原氏、筒井氏の4名によるパネルディスカッションを実施。

 特許や商標に関する注意点として川上氏は、「身内だからといって安心できません。退職した元社員が同じ製品を開発・販売している、という相談をよく受けます。製品のリリース後は特許が取れないので、販売を差し止めるのは困難になります。商標については製品名やサービス名は登録されますが、会社名を登録していない方が多いので忘れずに取ってほしい」と指摘。

 スタートアップは人材の入れ替わりも激しいので情報管理は慎重になるべきだ。創業時から職務発明規定を制定して、従業員とは必ず契約書を交わすようにしたい。シード期はなかなか知財に費用が回せないが、トラブルになると特許以上に費用とお金がかかる。特許を持っていると融資審査が下りやすいなどメリットもあるので、研究費と同様に知財も会社経営に必要なコストとして予算に入れておこう。

 大原氏からは大学発ベンチャーの注意点として「大学で出願した特許は基本的に大学に権利が帰属します。また同じ研究室から複数のベンチャーが立ち上がったとき知財関係のトラブルが起こりやすい。資金調達の際には必ず知財について聞かれるので初期の段階から考えたほうがいい」とアドバイスした。

 他社との契約については、筒井氏から「秘密保持契約書を結んでも、現実には守られないことがままあります。まだ特許化していない機密情報を聞いてくる相手もいるので、何を機密にするのかを明確にし、損害賠償についても現実的な内容で取り決めておくことが大事です。ただ、企業によっては契約条件の変更を依頼しても応じてくれないこともあるので、何か公的なアシストがほしいです」と提案した。

 一般的に大手企業からの契約書はスタートアップにとって厳しい内容であることも多い。契約を交わす前に弁護士などの専門家にレビューしてもらうのがおすすめだ。費用はかかるが、自分たちでやるよりも時間がかからず、結果的には安上がりだ。信頼できる専門家を見つけて、うまく知財戦略に取り組んでほしいとした。

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