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熊本地震や熱海の土砂災害などで実績 災害現場で共通の課題をクラウドで解決

kintoneはなぜ災害現場で役立つのか? サイボウズが語る災害支援の10年史

2022年03月23日 09時00分更新

 2022年3月18日、サイボウズは第9回目となるメディアミートアップを開催した。「サイボウズとkintoneが支える災害支援の『今』」のタイトルで、サイボウズの柴田哲史氏が災害支援の10年史を披露。2016年の熊本地震や2021年の熱海市の土砂災害での支援の実例と、災害支援で役立つkintoneの特徴について解説した。

サイボウズ 社長室 災害支援チームリーダー 柴田哲史氏

東日本大震災をきっかけに災害支援へ そこで見た課題とは?

 今回登壇した柴田哲史氏は社長室 災害支援チームリーダーという立場でkintoneによる災害支援を推進している。柴田氏が災害支援と出会ったのは、2011年に起こった東日本大震災のとき。東京都が原発事故の避難者を調布市にある味の素スタジアムで受け入れると発表し、調布市の社会福祉協議会の知人から避難所の運営を手伝ってもらえないかと相談されたのがきっかけだ。

 柴田氏の知人が所属する社会福祉協議会は、全国の都道府県に設置されている民間団体で、全国に約2000ある。普段は地域の障害者や高齢者の福祉を担当しているが、災害時には自治体をサポートする。自治体が発災初期・応急期の人命救助や行方不明者の捜索を担うのに対し、社協ではおもに災害ボランティアの設置と運営、被災者の生活支援、被災家屋の復旧などを手がける。しかし、災害時は通常の福祉関連業務に加えて災害対応をしなければならないので、まず業務量が多い。またIT苦手な職員が多く、業務でも電話や紙、FAXが主流だったという。

災害フェーズごとの活動イメージ

 そして避難者を受け入れる調布市の避難所においては、「電話が殺到している」といった課題があった。柴田氏は、「『ボランティアをやりたい』とか、『物資を提供したい』など多くは善意の電話なのだが、職員がこれに対応していると避難所開設のための作業ができない」と語る。また、ボランティア担当者や運営支援者のメールのやりとりも完全に属人化しており、電話、FAX、メール、Twitterなどの大量の情報が点在し、最新の情報がどれかわからなかったという。

 これに対して柴田氏は避難所の状況や物資の募集を伝えるWebサイトを開設しつつ、ボランティア登録が可能なWebフォームを作成。さらに約3000名の登録ボランティアのマネジメントまで実現したという。避難所内の様子をWebサイトで見える化し、よくある質問を掲載することで、問い合わせの電話が半減したとのことだ。

 その後、柴田氏は調布での災害支援活動に関するセミナーを社会福祉協議会に向けて実施。その結果、2013年の伊豆大島、2014年の前橋市、広島市など大雨の被災地からのIT支援を依頼されるようになった。そして、2015年にはサイボウズに入社。ユーザビリティラボを構築することがメインだったが、災害支援活動も継続することで入社した。

 2015年9月には常総市の大雨では、サイボウズ入社後初の支援を行なったが、1日3000人にもおよぶボランティアの参加受付に時間がかかりすぎるという課題はあった。また、被災者ごとのニーズはほとんど紙のメモで記録され、情報共有もホワイトボードが使われていたため、現場に行かないと状況が伝わらないというのも悩みだった。そのため、なんらかのツールを用いて事務処理を効率化する必要性を痛感したという。

熊本地震の支援でkintoneを初投入

 災害支援のためのシステムやツールは数多くあるが、重要なのは現地のニーズに応じてシステムを変更できる変更できる柔軟さだ。「事前に作り込んだものを用意しても、職員さんは使いこなせない。現場ですぐに作れ、職員さんが変更できるツール。欲を言えば、日頃から使い慣れているツールにしたかった」と柴田氏は語る。

 こうした思いを胸に抱え、2016年4月に起こった熊本震災で初めてkintoneを導入した。この災害で特筆すべきは広域な災害だったため、災害ボランティアセンターが17箇所も設置されたこと。全国から数多くのボランティアが殺到し、各ボランティアセンターでは受付がなかなか進まないという事態が起こった。

 この熊本震災で柴田氏が手伝ったのは、大分県の竹田市に設置された「南阿蘇支援ボランティアベースキャンプ」。ここでは、阿蘇山を越えて熊本県側の南阿蘇を支援するためにボランティアを送迎する必要があったが、どれくらいのボランティアが来るのか予想できなかったため、バスも多めに手配していた。また、被災の現地で必要な資機材がわからないという課題があった。

大分県の竹田市に設置された「南阿蘇支援ボランティアベースキャンプ」

 そこで柴田氏はボランティアの参加予約システムをkintoneで開発した。ボランティアの参加人数があらかじめわかるだけで、バスの手配がスムーズになり、レンタル費用も数百万円レベルで削減できたという。また、熊本地震の特設サイトを構築し、現地の社協職員に代わって、各ボランティアセンターの募集状況や活動内容がわかるようになった。公開日には2万近くのアクセスがあったという。

 さらに、kintoneで問い合わせ管理システムを構築し、現場の職員に負担がかからないようにしたほか、ボランティア登録の仕組みも構築し、その登録状況をリアルタイムにグラフ化。災害支援が落ち着いた時期でも、つねに人員を確保することが可能になったという。

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