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Cybozu Days 2021で聞いたエンタープライズセッションの後編

長大な三菱重工でkintoneによる業務改善を事業部門とチャレンジしている話

2022年03月14日 10時30分更新

 幕張メッセでリアル開催された「Cybozu Days 2021」では、kintoneユーザーの三菱重工業(以下、三菱重工)のDX部門が異なるテーマの2つのセッションを繰り広げた。タイトルに「重厚な企業」を冠した前編に引き続く「長大な企業でDX部門と事業部門が一心同体でデジタル化を進めてみている話」では、三菱重工業 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループの山本浩道氏が、具体的なkintoneによる業務改善について紹介した。

三菱重工業 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループ 山本浩道氏

現場部門と連携することで実現したMAKANAI活動

 登壇したデジタルエクスペリエンス推進室の山本浩道氏は、まず重厚編で説明した3つのDXについておさらいする。すなわち従業員の働きやすさを追求するEX(Employee eXperience)、顧客満足度を向上するCX(Customer eXperience)、そして次世代製品の開発を可能にするPX(Product Transformation)という、業務、顧客接点、製品の3つのデジタル化だ。

 特にCXに関しては、今後の事業の成長につながる施策として重視。その一方、「EXで従業員満足度を上げていかなければ、お客さまのよい体験にはつながらない」との思考の元、EX向上にむけてkintoneで業務改善を進めているという。「いいEXを実現した暁には、われわれがお客さまに対して俊敏な組織になれる」と山本氏は語る。そのためにDX部門が行なっているのが「MAKANAI」と呼ばれる業務改善活動だ。

 従来の業務改善は「じっくりコトコト、カンペキに業務改善する」というアプローチだったため、事業部門が課題を発見しても、失敗できず、100%のシステムを作らなければならないというマインドセットに陥っていたという。そのため、仕様書作りに時間がかかり、中身も膨大になり、開発は外部に委託することになる。外部パートナーとのコミュニケーションを繰り返し、見積もりに至るまでにはかなりの時間が経っており、社内決済のためにさらに時間をかけなければならない。「社内決済に至るまでに業務改善の約半分くらいの徒労感がある。時間も労力もかかる」と山本氏は指摘する。

 ここからようやくシステム開発に着手。しかし、外部パートナーに開発を依頼するので、どうしてもブラックボックスができてしまう。また、完成度も100%にはならないため、100%に近づけるため、何度も手戻りが発生。結果的に、業務改善のために、膨大な時間とコストをかかってしまう。「このように業務改善は一大プロジェクト。怖いのは、大変だから業務改善はあきらめましたということでふたをしてしまうこと。そうなってしまうと、EXの改善が進まない」と山本氏は語る。

 こうした課題を解決すべく、三菱重工のDX部門が進めているのが、「今欲しいものを、手早く提供する」ためのMAKANAI活動だ。

従来の業務改善とMAKANAI活動

 事業部門が課題を解決するという入り口は、MAKANAI活動でも同じ。しかし、最初から100%を求めず、やりながら答えを見つけていく。DX部門は事業部門の要望を聞きつつ、60点を目指してkintoneでプロトタイプを作成。そしてプロトタイプを試用しながら、事業部門の声を聞き、改善を続ける。「kintoneを使いながらぱっと内製で改善していく。こうしたことをイテレイティブ(反復的)に続けることで、正解に近づくことができる」と山本氏は語る。この「作る、試す、直すを繰り返す。そして早く正解にたどり着く」がMAKANAI活動のコンセプトだ。

MAKANAI活動を事業部門とやりきるための5つのストップ

 MAKANAI活動を事業部と一心同体でやりきるためには、5つのステップがあるという。

 1つめの「方針を作る」は、いわばMAKANAI活動の「型」のようなもの。事業部門の課題解決依頼を受けたDX部門は、kintoneで部門ごとのスペースを作成し、最短1日でアプリをリリースしている。60点のアプリを作るため、kintoneは標準機能のみを使用。事業部門での試用の結果、どうしても機能強化が必要なときにのみカスタマイズを行なうという。

 とはいえ、この「型」は三菱重工が作ったわけではなく、成功企業のプラクティスを踏襲している。具体的にいうと、京王グループ・京王電鉄でのやり方を真似た結果だという。「記事を読んでいるだけだとわからない部分も多いので、実際に京王グループさんにお邪魔し、大事なポイントを聞かせてもらった」とは山本氏は語る。kintoneにおいても、エンタープライズ向けのユーザーグループがスタートしているが、こうしたコミュニティの存在感が大きかったと言えるだろう。

成功事例のプラクティスを踏襲

 2つめの「まずはともかく」は、DX部門が事業部門に常駐することを指す。常駐することで、業務を見ることで、課題を把握し、まずは現場を理解する。業務課題を理解した段階で、kintoneでプロトタイプを作り、現場とともにビルド・スクラップを繰り返す。3つめの「最前線で」は、こうしたMAKANAI活動の認知だ。具体的には全国にある拠点にDX部門のメンバーが出向いて、活動を紹介しているという。

 4つめの「継続的に」は、kintoneのコミュニケーション機能を使って、アプリ開発や運用のためのやりとりを繰り返すことだ。アプリ開発の依頼もkintoneでいつでもでき、開発されたアプリの使い勝手に関してもコメント機能でやりとりしている。「1つのアプリで100回以上のやりとりを繰り返し、機能を固めたり、レビューをお願いすることもある。こうしたことを繰り返すことで、現場との信頼感を作ることができ、事業部門のkintoneスキルも挙がってくる」と山本氏は語る。

 そして5つめの「共有しながら」では、社内テックブログの活用。DX部門から毎日なにかしらの情報を発信することで、事業部門から気軽に相談できる雰囲気作りが生まれるという。

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