多様な通信主体、通信種別で構成されるゲームでの「IPv6対応」とは?
大谷:そもそもの話なのですが、ゲーム業界にとってIPv6対応の現状ってどうなんでしょうか? 佐藤さん、説明してもらえますか?
佐藤:実は「IPv6」という広いくくりだと、なかなか説明しにくいところです。
一口で「IPv6対応」といっても、サーバーの場合はセグメント対応、サーバー自身、プログラムの話など、クライアントの場合は家庭内のネットワークやOSの話などさまざまです。また、ゲームの通信に関しても、単純にゲーム自体をダウンロードする際の通信と、ゲームをプレイするための通信は違いますし、プレイ中も動画や音声、チャットなどさまざま通信が飛び交います。通信する主体や種類が多岐に及んでいるので、どの部分のIPv6対応なのかでIPv6対応の意味が異なります。
大谷:なるほど。ゲームを構成する要素ごとで、IPv6対応の意味が違うんですね。
佐藤:CDN経由でのダウンロードのように、ゲーム会社がまったく意識しなくても、IPv6対応している箇所もありますし、ゲーム会社自体が対応しなければならない独自サーバーのやりとりやリアルタイム通信などのIPv6対応もあります。ただ、このゲーム会社で対応すべき部分のIPv6化に関しては、現状はIPv4ベースがほとんど。もちろん、IPv6に対応しても、ユーザーみんながIPv6を使えるわけではないので、当然IPv4とIPv6のデュアルスタックという対応です。
弊社も、デュアルスタックのタイトルか、IPv4前提かはタイトルによります。デュアルスタックにすると通信のパターンが増え、検証コストもかかるので、対応するタイトルは限定されます。基本的には、コスト的に余裕があり、なおかつプレイヤーの体験向上が見込めるものだけです。なので、IPv6対応したほうがよいのはわかりつつ、IPv4オンリーでしか動作しないタイトルも存在しています。
大谷:IPv6対応したからといって、売上が上がるわけではないので、開発の優先度は難しいですね。
佐藤:ゲームの中には通信の主体や種類がさまざまというお話を先ほどしましたが、IPv4とIPv6オンリーで行けるのか、マイグレーション技術で問題ないのか、デュアルスタックにすべきなのかはそれぞれ違います。通信の特性によっても違いますし、利用するユーザーの規模や使い方によっても違う。
当然、通信によってどれを使えばよいのか異なりますし、年によって変化することも多い。そのときどきのインターネットの状態によって、今はどの技術を使うべきなのか、数年後にはどの技術を使うべきなのか、迅速に追従しなければなりません。その一方で、どれを使うべきなのかは正解がない可能性も高いと思っています。
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