WGの活動で得られたマイグレーションの知識、企業としての課題
大谷:これまでのWGの活動の経緯を教えてください。
松本:まずはコナミさんの会議室を借りて、少人数で意見交換を行ない、その後、正式な第1回の会合をA10ネットワークスさんの会議室を借りて開催しました。そのときは50人くらいの参加で、イスが足りないくらいでした。
大谷:まずはなにをやったのですか?
松本:問題の洗い出しですね。いくつか仮説を立てて、検証する場を設けました。NATの対称性やポートの枯渇など、テーマを絞って議論しました。あとは議論するだけではなく、毎回スピーカーをお呼びして、有用な講演をいただきました。
大谷:みなさんWG活動を通してどのようなメリットがありましたか?
佐藤:私はマイグレーション技術の理解が進んだことですね。それまではわりとふわっとしていたのですが、MAP-EやDS-Liteの実装レベルの技術のお話をいただいたので、こういう実装は危ないとか、トラブルにつながりそうというのがわかるようになりました。
キャリアグレードNATやマイグレーションの中身って、なかなか公には公開されていないとか、とっつきにくい。でも、詳細なレベルまでお話しいただけたので、弊社内でもMAP-EやDS-Liteの検証環境を構築できるようになりました。
大谷:では、議論する場でもあったけど、勉強する場でもあったということですね。
佐藤:はい。特に1年目に関しては、ゲームメーカーとしても、ルーターベンダーとしても、お互いに知らなかった情報を交換し、知識を深めるということが大きかったと思います。
大谷:川島さんはいかがですか?
川島:このWGを通して、ゲーム会社が抱えている問題を共有できたことで、わりとクリアに見えたことが多かったんです。WGの活動報告書に書きましたが、具体的な問題を整理できました。
ルーターベンダーとしてわれわれに届くお客さまの情報って、お客さまがきちんと説明できないことも多いですし、カスタマーサポートを経由し、バケツリレーになってしまうと、どうしても本質的な問題が見えずぼんやりとしてしまいます。しかも、エンドユーザーにとってはIPv6ってまだまだ新しいし、技術的にも難しい。だから、IPv4と同程度のサポートができているかというと、正直まだまだです。
その点、WGの議論の内容は社内にフィードバックをかけていますので、カスタマーサポートの品質向上に役立っていますし、以降にカスタマーサポートのサブWGも立ち上がりました。カスタマーサポートの担当者同士が、お互いに困っていることや課題を情報交換して、議論しあう場ができたのは大きな成果だと思います。
松本:カスタマーサポートの方々も、日々新しい問い合わせを受けるので、テーマを決めることなく、ラフに情報交換できる場として立ち上げました。
大谷:ルーターの製品開発にも活きているのでしょうか?
川島:たとえば、「MAP-EのUPnPのポートマッピングをきちんとやってくださいね」みたいな実装レベルのリクエストをゲーム会社からいただくことで、ユーザーニーズを認知し、開発の優先度が上がったりしました。だから、サポートだけでなく、開発面でもメリットを得られたと思います。
大谷:WGの雰囲気ってどんな感じなんでしょうか?
松本:私はみなさんをグングン引っ張っていくタイプでないので、ご迷惑をおかけしたり、戸惑うことも多い。主査ではありますが、のんびりした単なるおじさん(笑)。周りの方々の助けがあってようやく運営できている感じなんです。
でも、以前WGの活動が停滞していた時期、大手ゲーム会社から「有意義なWGなんだから、しっかり活動してくれないと困る」とご意見をいただいたことがあって、「これはちゃんとやらなければならない」と責任感を感じて、自分を奮い立たせています。
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