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“夜の部”は技術コミュニティが主役、マイクロソフト社員も自らのコミュニティ経験からアドバイス

コミュニティを通じて技術をもっと楽しもう!「Microsoft Developer Night」が伝えたこと

2022年02月25日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp
提供: 日本マイクロソフ

パネルディスカッション:コミュニティ活動のエネルギーはどこから?

 パネルディスカッションにはマイクロソフトから3氏が登壇し、それぞれのコミュニティ経験から「活動を始めたきっかけ」「モチベーションの維持」「活動と会社(本業)との関係」といったテーマで率直な意見やアドバイスが語られた。マイクロソフトがなぜ技術コミュニティの存在を大切にしているのかもわかる内容だ。

パネルディスカッション「マイクロソフト中の人が語る 開発者コミュニティの歩き方」には、大田一希氏、大森彩子氏、上坂貴志氏の3氏が登場。モデレーターはマイクロソフト コーポレーション グローバルブラックベルト Azure App Innovation スペシャリストの井上章氏が務めた

 上坂氏、大田氏はそれぞれ、マイクロソフトへの入社前にMicrosoft MVPを受賞した経験を持つ。両氏とも、活動の中心はブログへの技術記事の投稿だった。

 「自分が調べて得た知識は、きっとほかの誰かも同じように悩んで、調べているに違いない。それならば、とりあえず発表したほうが誰かのためになる――と考え、そんなに深く理解できていない段階であっても、ポイポイと(気軽に)記事を出すことを心がけていました」(上坂氏)

 「.NETを中心としたWindowsアプリ開発系のブログ記事を書いていました。もともとブログを書いていたのは、自分用の『メモ書き』として。書かないと忘れちゃうので。それを何年か続けると、仕事の中でわからないことを調べていたらわかりやすいブログが出てきて、読んだ後で自分の記事だったと気づくこともありましたね(笑)」(大田氏)

大田氏。MVP受賞後にはコミュニティでの登壇機会が増えたという

 たとえば大田氏の場合、ピーク時には年間で370本ものブログ記事を執筆していた。マイクロソフトに入社した現在も執筆は続けているが、「仕事」として技術情報を調べる時間ができた一方で、対外的な(コミュニティへの)アウトプットの数は減ったという。上坂氏もやはり同じで、それだけに、日常業務の外でコミュニティ活動を継続している開発者たちの「エネルギー」には驚かされると語る。

 「現在は仕事として調べ、資料を作ったり発表したりするのが当たり前の立場になりましたが、逆に『業務以外で』それをしていたエネルギーは相当なものだったな、と思います。今日のDeveloper Nightもそうですが、コミュニティの皆さんが情報をまとめて発表する、そのエネルギーはすごい! とあらためて思います」(上坂氏)

上坂氏。コミュニティのイベントには「ちょっと出て、やりたいことだけやっていなくなる」スタンスだったと笑う

 そうしたコミュニティ参加者のエネルギーはどこから生まれるのか。Azure Cognitive ServicesやBot Frameworkを扱う「Cogbotコミュニティ」の運営に携わる大森氏は、マイクロソフトの“中の人”という立場ではなく、一個人として「技術的に面白いもの」を皆で楽しみたいという気持ちで動いているという。

 「自分が本当に好きな技術があって、ほかの人にも『これ楽しくない?』と伝えたい、皆でワイワイやりたいというのが基本的なスタンス。この気持ちに関しては“中の人”も“外の人”も関係ないと思っています。現在でもCogbotコミュニティでは、わたしの視点で、わたしが面白いと思うことを話しています」(大森氏)

 一方で、“中の人”としてコミュニティ活動に参加していると、会社から「それがどれだけセールスにつながるか」などと目的を求められることもある。だが、それは自分の考えるコミュニティ像とは違うものだと、大森氏は強調する。

 「(会社としての目的を持ち込むと)“売りつけモード”になってしまう。わたしは面白いから、超楽しくて超便利だから『やろうよ!』と言って、『うん、いいよね!』と反応してほしいんですよね。コミュニティでいるときは、あくまでも自分が好きだから一緒にやる仲間を見つけたい、というスタンスは変えないようにしています」(大森氏)。

大森氏。「Cogbotコミュニティのほか、JAZUGやLINE Developer Communityなどにも出没しています」

大森氏がシェアした、企業の“中の人”がコミュニティに参加するうえで注意すべきこと

コミュニティ活動を「無理なく」継続するためのコツは?

 コミュニティ活動を通じて新しい技術を知り、開発者としてスキルアップしていくことは間違いなく楽しい。しかし、日常の仕事とは離れた場でコミュニティ活動を継続していくには、前述したとおり大きな「エネルギー」が必要で、なかなか大変なことでもある。

 そうしたコミュニティ活動を「無理なく継続していく」ためのアドバイスはあるかとモデレーターの井上氏が話を振ると、大森氏は笑いながら「『無理なく』はできてないかもしれない」と答えた。

 「(最新情報のキャッチアップのために)マイクロソフト本社がやっている『Microsoft Build』や『Microsoft Ignite』などのイベントを、徹夜で見ていたんですよね。無理して徹夜で見なくてもいいんだけど(笑)、やっぱり最新情報を知って、真っ先に自分がブログを書きたいという気持ちがあるんですよ」(大森氏)

 一方で、大田氏は「継続していくための心構えとしては、やっぱり『大変だと続かない』ということ」だと答えた。

 「自分はMicrosoft Buildでも、自分の好きなものだけを見てとっとと寝ます(笑)。やっぱり自分が好きなものは気になるので、それだけは見て残りは翌日や時間のあるときに、という感じ。自分が『楽しい』と思えるものを追いかけていくのがベースラインです」(大田氏)

 上坂氏も、まずは自分の興味がある、好きな技術の情報を追いかけることを大切にしているという。

 「自分の場合は、興味がある情報を『早く知りたい』というよりも『深く掘ってしまう』タイプ。興味がある、好きなネタは(発表された)その場で追っかける。後回しにしたくないんです。どこで発表するかわからないけど、その場で情報を深掘りして、とりあえずPowerPointなどにベタベタと貼ってまとめています」(上坂氏)

 パネルディスカッションのまとめとして井上氏は、コミュニティ活動は何よりも「楽しく」やることが重要であること、出席した3氏はマイクロソフトの“中の人”だがそのモチベーションはほかのコミュニティ参加者と変わらないこと、そしてコミュニティ活動を通じた「インプットとアウトプットのバランス」が開発者としてのスキルアップを助けること、の3つをメッセージとして伝えた。

 「人間も、食べてばかりいて出さないと、成長もしないし体にも良くない。それと同じように、技術をきちんとインプットしてアウトプットすることで、自分の中で消化されて自分のものになる、自分の“栄養”になっていく。そういうインプットとアウトプットが、技術に追いついていくためのバランスになるのではないかと思います」(井上氏)

* * *

 3時間半超えの長丁場となったMicrosoft Developer Nightは、こうして幕を閉じた。筆者は初心者レベルの開発知識しか持たないのだが、それでも最新のサービスや技術動向、知見に触れることのワクワク感、楽しさを十分に味わうことができるイベントだったと思う。

 またパネルディスカッションで井上氏が語った、「開発者としてのスキルアップにはインプットとアウトプットのバランスが大切である」という指摘はとても重要なポイントだ。言い換えれば、開発者のスキルアップにとってコミュニティ活動は欠かせない要素の一つということになる。この2年ほどでイベントがオンライン化し、参加のハードルも下がっている。マイクロソフトでも、開発者向けのさまざまな公式チャンネルを通じて技術コミュニティの活動を紹介している。気軽に、そして積極的に参加して、楽しみながらスキルアップを目指していただきたい。

(提供:日本マイクロソフト)

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