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マツダ・ロードスターの新技術「KPC」はロードスター乗りとして許せるのか?

2022年02月23日 12時00分更新

違和感はあったのか? 作動は気が付くのか?

 今回の試乗会では、複数のグレードを試すことができました。ロードスターは、外から見るとどれも同じようですが、実はグレードによって、走りの味付けが異なります。

試乗した「990S」。レイズの鍛造アルミホイールとブレンボのブレーキ、ネイビーのソフトトップが特徴となります

 大きいのが、LSDと後輪のスタビライザーのアリナシです。LSDは、左右の車輪の回転差を制限する装置です。ブレーキング時に車体が安定し、加速時によりトラクションがかかりやすくなります。スタビライザーは左右の車輪につながった鉄の棒です。直進時は、働きませんがコーナーリング中に車体が傾いたときに、左右の車輪のストロークの差を制限して、ロールを抑えます。

 新規に導入された「990S」グレードは、そのどちらも装着されていません。一方、ほかのグレードは、すべて装着されています。また、「RF」グレードはパワフルな2リッターのエンジンが搭載されており、車両重量は1100~1130㎏もあります。最軽量の「990S」よりも最大で140㎏も重いのです。

 そして今回の試乗では、それらすべてのグレードでKPCのオンとオフを乗り比べてみました。

 まず、最も気になっていた違和感はあったのか。答えは、うれしいことに「NO」でした。

 注意深く走らせてみても、KPCが作動していることに気づけませんでした。しかし、DSCをオフにすれば、その差は歴然。「あ、こんなにも効いていたんだ」と、オフになって初めてわかるのです。この自然さには脱帽するのみです。

 そんなKPCの効き目が、最も大きかったグレードが「990S」。次が「RF」です。一方、足を固めた「RS」グレードでは、効き目が小さいことにも気づきます。考えてもみれば、それは当然です。なぜなら、左右の回転差が大きく、ロールが大きいほど、KPCはよく効くのです。LSDは、左右の回転差を小さくする装置ですし、スタビライザーはロールを抑える装置。その両方のない「990S」が最も効果を発揮し、次に重量があってロールの大きい「RF」が続くのも当たり前の話。また、LSDとスタビライザーがあってロールの少ない「RS」グレードでKPCがあまり働かないのも、原理的に当然のことです。

ベーシックな「S」グレードをベースにしているためカーナビは装着できません。エアコン吹き出し口の青いリングも特徴です

 つまり、車高を下げたり、サスペンションを固めたりした「走り重視」のカスタムをしたロードスターには、KPCは、あまり働きません。逆に、重い「RF」や、なにもついていない「990S」のための装置という意味合いが強いのではないでしょうか。

 結論は、長年のロードスター乗りとして、今回のKPCの採用は「あり」だと思います。だって、効いていることに気づかないほど自然だったし、嫌ならオフにできます。しかも、チューニングするほどに効果が薄くなるというのもよいところです。「スポーツカーに余計なお世話」とモヤモヤしている方は、とりあえず乗ってみること(試乗)をオススメします。きっと納得できると思いますよ。

「990S」は、軽量化のためにボンネットの裏に装着する防音用のボンネットインシュレーターは未装着となります

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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