福岡スタートアップコミュニティーと考える ソフトウェア系スタートアップのための知財戦略のポイント by IP BASE in 福岡
DXも攻めの特許へ ソフトウェア企業に必要な知財戦略とは
特許庁ベンチャー支援班は2021年10月29日、スタートアップ向けの知財戦略オンラインセミナー「福岡スタートアップコミュニティーと考える ソフトウェア系スタートアップのための知財戦略のポイント by IP BASE in 福岡」を開催。福岡のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」の協力のもと、「ソフトウェア企業の知財戦略」をテーマにした講演とパネルディスカッションを無料配信した。
セミナーは3部構成で、第1部は特許庁のスタートアップ向け施策の紹介、第2部は、ソシデア知的財産事務所 代表弁理士 小木智彦氏による講演「ソフトウェア系スタートアップのための知財戦略のポイント」、第3部は、小木氏と株式会社ヌーラボ代表取締役 橋本正徳氏、株式会社サイノウ代表取締役 村上純志氏が参加し、「ソフトウェア開発、若手経営者に響くスタートアップ向け知財戦略」をテーマにディスカッションを展開した。
特許庁のスタートアップ向け施策
最初のセッションでは、特許庁企画調査課(ベンチャー支援班) 藤本康輔氏が登壇し、特許庁のスタートアップ向け施策について説明した。
スタートアップの企業価値は技術・アイデアといった知的財産に集約され、海外VCからの出資や大手企業とのM&Aでは知財が重視される。しかし、国内スタートアップコミュニティにおける知財戦略の不足が資金調達やイグジット機会逸失の要因になっている。
特許庁では、スタートアップの知財戦略構築や専門家との出会いを支援するために、2018年度から知財アクセラレーションプログラム(IPAS)を実施。創業期のスタートアップに対して、ビジネス専門家と知財専門家からなる知財メンタリングチームを5か月間派遣し、ビジネスモデルに連動した知財戦略の構築を支援するプログラムで、2021年は20社が採択されている。
スタートアップ向けサイト「IP BASE」では、知財専門家によるコラム、先輩スタートアップや投資家へのインタビュー記事、セミナーイベント情報などを掲載している。IPASの成果事例集、知財メンタリングのポイントをまとめた専門家向け事例集も公開されている。また、2021年にはYouTubeチャネルを開設し、知財の基礎情報や支援施策を紹介する番組を作成。1番組5分間程度なので、空き時間に視聴してみては。
そのほか、最短2.5ヵ月のスーパー早期審査、手数料が3分の1になるスタートアップ向け減免制度などの施策、経済産業省と特許庁の作成した「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」、47都道府県に設置されている知財総合支援窓口について紹介した。
講演「ソフトウェア系スタートアップのための知財戦略のポイント」
第2部は、ソフトウェア特許が専門のソシデア知的財産事務所 代表弁理士 小木智彦氏が登壇。ソフトウェア系スタートアップならではの発明発掘、ビジネス活用のポイントを解説した。
現代は、あらゆる業種がICT、DXが導入され、世界的にもソフトウェアを用いたビジネス手法がビジネスモデル特許として認められるようになってきた。日本の特許庁は「新規のビジネスモデルが、ICTで実現されていれば特許の取得は可能」としている。
ビジネスモデル特許は、住友銀行パーフェクト特許、Amazonのワンクリック特許などが有名だが、スタートアップでも新規性がある技術があれば、特許の保護対象となる。例えば、佐賀大学ベンチャーの株式会社オプティムは、400件近くの特許を出願し、2014年にはIT分野の日本人特許資産規模No.1を達成している。
ソフトウェアは実際に製品として完成していなくても、アイデアさえあれば出願できる。アイデアを発明にするためのポイントは、発明を1つの点ではなく、方向性を持ったベクトルとして捉え、その過程に複数の発明を仕込むこと。「従来技術」の「課題」を「解決する手段(アルゴリズム)」と得られる「効果」の4つの要素を記述できれば特許になる。
特許は攻めにも活用する時代へ
これまで特許は、企業や研究機関が自社技術を守ることが主な目的だったが、最近では攻めへの活用へと比重が変わり、特に起業家が業界の未来を予測して特許出願をするケースが増えてきている。実際の製品はまだできていないこともあり、着想が新しく、概念的で広い権利が形成される傾向が強い。
今は、不動産や機械といった有形資産よりも、知的財産のような無形資産が圧倒的に評価される時代。特許は、世界中にない特別な技術であることの客観的な証明書であり、投資家への未来提案書、利益継続を保証するツールになる。これからのスタートアップは自社の強みと業界の未来を想像して、攻めの特許戦略を狙っていくことが重要だ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります