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【連載】東京都の誇るKing Salmonたちをご紹介します!

2022年01月05日 11時00分更新

※新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。

 新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省や首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。

 東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部です。(旧 次世代通信推進課note)。デジタルサービス局は、デジタルの力を活用した行政を総合的に推進し、都政のQOSを飛躍的に向上させるため、新たに設置した組織です。その中で、ネットワーク推進課は、東京の成長戦略やICT利活用の更なる推進のため、2019年(平成31年)4月に新たに設置された組織です。その中で、次世代通信推進課は、TOKYO Data Highwayの構築を推進し、いつでも、誰でも、どこでも「つながる東京」の実現に向け、取り組んでいます。

 都民の皆様がどこにいてもサクサクつながる環境を構築するため、全国初となる5Gアンテナ基地局を搭載するスマートポールの試行設置や通信事業者が5Gアンテナ基地局を設置しやすいように、行政財産を開放するなど様々な取組みを展開しています。こうした日々の取組みを都民の皆様に情報発信していきます。

■前回の紹介記事はこちら。
【連載】5Gを活用し西新宿を先端技術の実証フィールドへ!

※過去の連載記事はこちら:東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部ネットワーク推進室(旧 次世代通信推進課note)連動企画

 みなさん、こんにちは! スマートシティ推進担当です。

 今回は、スタートアップのプロダクトを都政現場に導入し、その現場の課題をスタートアップの力で解決をしていくことを目指している「King Salmon Project(キングサーモンプロジェクト)」と、そこから生まれた輝くスタートアップ「King Salmon」たちについて、ご紹介したいと思います。

 そもそも、King Salmon Projectって、「なに、これ!?」「なんなの、この名前!?」と思った方も多いかと思います。この名前にも実はちゃんとした理由があるのですが、それはまたの機会にお話しすることにしまして、今回は昨年度行なった実証実験を取り上げたいと思います。

 実証実験の詳細に入る前に、King Salmon Projectの流れをお話しします。

① まず、都政現場の課題を各局等にヒアリングの上、スタートアップの力で解決が図られる可能性のある課題を設定

② そして、その課題解決に挑むスタートアップを公募

③ 採択されたスタートアップのプロダクトを活用して、都政現場で実証実験を実施

④ 実証実験後に、King Salmon認定企業として、一定期間、公共調達により優遇

 では、どのような実証実験を行なったのかお伝えしたいと思います。

 まず、令和元年度に医療・介護分野、ICT利活用分野、インバウンド観光分野の3分野で公募を実施し、株式会社イノフィス、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社、Holoeyes株式会社、WAmazing株式会社の4社のスタートアップを採択し、令和2年度に実証実験を行ないました。

※Wamazing株式会社については、訪日観光客の激減を受け、時期等を見直し、今年度中の実証実験の実現を目指して準備を進めています。

株式会社 イノフィス

 株式会社イノフィスについては、東京都社会福祉事業団 日野療護園で、介助職員による「マッスルスーツEvery」の効果検証を行ないました。

 電気を使わないため、いつでも使える利便性があるマッスルスーツなのですが、実際の介護現場で非常に効果的であることが検証できました。

 まず、介助職員からのアンケート結果では、「マッスルスーツEvery」の装着により、通常介助時に発生している腰などの痛みや業務による疲労が減ったなど、負荷が軽減される効果が確認されました。

使用前後の比較(対象業務全般)

 また、節電計によるシミュレーションでは、介助業務における背中の筋肉(部位①~④)の活動量を計測しました。その結果、「マッスルスーツEvery」装着による補助ありの状態と補助なしの状態を比較して、筋肉の活動量が減っていることが確認できました。特に、被介助者を抱えながらイスから床にゆっくりと下ろす動作で筋肉の活動量が大きく減少しており、定量的な身体負荷軽減が確認できました。

業務 「移乗:床からイス」における筋肉の活動総量(補助なしの場合の活動総量を1とした場合)

 さらに、3Dモーションキャプチャーを用いた業務負荷の計測では、腰椎付近への負荷(腰椎間圧迫力)が介助業務において低減していることも確認できました。特に、ベッド上における体位交換をする動作においては、腰椎付近への負荷(腰椎間圧迫力)が大幅に軽減できていました。

 このように、看護・介護従事者の業務負担軽減に対して、株式会社イノフィスの「マッスルスーツEvery」は有用性が高いことがわかりました。

 令和3年度に入ってからは、福祉施設3ヵ所(東京都社会福祉事業団 日野療護園、七生福祉園、希望の郷東村山)に加え、福祉系の学科がある都立学校2校(都立赤羽北桜高等学校、都立野津田高等学校)でも導入することとなり、活用が進められています。

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

 トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社については、都立広尾病院、都立墨東病院で、入院患者さんに排泄予測デバイス「DFree」を装着いただき、「DFree」アプリに記録される排泄状況から排尿に関する自立度※1や排泄状態を計測、排泄支援を行なう看護師に対するアンケートにより排泄ケアに対する負担感・意識の変化を計測し、効果検証を行ないました。

※1:自立排尿率(自立排尿成功回数/排尿回数)として算出


 入院されている方には、思うように動けない方が多数いますが、デバイスが膀胱内の状態を計測してくれることで、看護師が的確なタイミングで排泄ケアをすることを可能にしてくれる効果が検証できました。

 まず、排尿に関する自立度では、「DFree」の装着により、入院患者の過半数の排泄自立度が改善するなど、入院患者の皆さんの排泄自立度の改善における「DFree」の有用性が確認できました。

排泄自立度(自立排尿率)の改善比率

排泄自立度(自立排尿率)の改善度合い

 また、排泄状態の改善効果では、「自立排尿回数」、「失禁排尿回数」などの1日あたり平均回数を検証し、全ての項目において大きな改善効果を確認しました。

平均自立排尿回数

平均失禁排尿回数

 排泄支援を行なう看護師に対するアンケートでは、看護師の70%以上が「DFree」を活用して排尿パターンを把握し、排尿ケアを実施することは看護業務負担軽減につながると回答するなど、 排泄ケアにおける看護師の負担を軽減する効果を確認しました。

排泄ケアに対する負担感の軽減

 このように、入院患者の排泄自立度の改善や看護師の業務負担軽減に対して、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社が提供する排泄予測デバイス「DFree」の有用性は高いことが確認できました。

 令和3年度に入ってからは、都立病院3か所(大塚病院・広尾病院・墨東病院)で導入し、活用が進められています。

Holoeyes 株式会社

 Holoeyes 株式会社については、都立墨東病院、都立多摩総合医療センターの2ヵ所の都立病院で、実証実験を行ないました。Holoeyes 株式会社が提供するCT撮像データをVR空間上に3D化するサービス「Holoeyes MD・VS」について、実証実験では肝胆膵手術の症例に対する解剖学的理解度や腹腔鏡肝切除手術における有用性の検証を医師に対するアンケートやインタビューを通じて行ないました。

 VR空間上の3Dで臓器などの確認ができることで、困難な手術をこなす医師の手術前・中の支援に役立つことがわかりました。

 まず、肝胆膵手術の症例に対する解剖学的理解度に係るアンケートでは、解剖学的理解度を10段階で医師が評価し、従来手法である2Dモニターによる2次元画像・3次元画像と比較して、本実証実験にて実施した3D空間による3次元画像により理解度の向上を確認しました。

解剖学的理解度(全体)

解剖学的理解度(医師の経験値別)

※上記2グラフは術野を10とした時の解剖学的理解度を示しています。
※医師の経験値別カテゴリーの定義は以下の通り。
・後期研修医:専門医資格を取得前の3~6年目の医師。
・専門医:外科の専門医資格を取得し、さらに経験を積む7~14年目の医師。
・ベテラン専門医:専門分野の手術経験を一通り持つ、15年目以上の医師。

 腹腔鏡肝切除手術における有用性に係るアンケートでは、サービスの有用性を5段階で医師が評価し、全項目の平均値として4.28という評価となり、 3D空間による3次元画像が有用であることを確認しました。項目別でみると、特に「腫瘍位置の把握」で高い評価が見られました。

腹腔鏡手術における有用性の評価(項目別/平均値)

 サービスの有用性に係るインタビューでは、手術シミュレーション及び手術前カンファレンスにおける有用性として、医師からは「良いシミュレーションになった」や「エフォート(目的を達成するために使われる精神的・肉体的エネルギーの量)が下がるように感じた」などといったコメントをいただいており、解剖学的理解度の向上におけるサービスの有用性を確認しました。

 このように、手術の効率化や研修効果の向上等について、Holoeyes 株式会社が提供するVR空間上に3D化するサービス「Holoeyes MD・VS」の有用性は高いことがわかりました。

 令和3年度に入ってからは、都立病院2ヵ所(駒込病院・墨東病院)に導入され、活用が進められています。

こんな時代だからこそスタートアップの力が求められる

 いかがだったでしょうか?

 スタートアップの力を都政現場に取り入れることで、現場の課題を解決すると同時に、サービスの向上に役立つ取組が進められている状況をご紹介しました。

 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、新しい日常への対応も迫られる等、今までの我々の常識では乗り越えられない事態に直面しています。そんな時代だからこそ、アイデアに富み、機動的にソリューションを構築・展開していくことができるスタートアップの力を借り、この危機を乗り越えてくことが重要であると思います。

 これからも、我々は、スタートアップとの協働による取組を加速させて、都政の現場をスタートアップの力で変えていきますので、ぜひご期待ください!

◆この記事は、下記より転載しています
https://note.com/smart_tokyo

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