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エプソンのプリンター、新機種投入せず「むしろ善戦」と言える根拠は?

2021年12月28日 18時30分更新

環境負荷低減に向けての施策

 小川社長は、「半導体をはじめとする部品、原材料不足の深刻化、海上物流のひっ迫などによる供給制約が継続しており、それに伴う、部材費の高騰、輸送コストの高止まりは、しばらくの間、懸念材料になる」とするのに加えて、「国や地域によって濃淡はあるが、総じてコロナ危機による落ち込みから回復傾向にある。だが、新型コロナウイルス影響の収束時期を見通すことは困難である」と指摘する。

 そして、「エプソンは、調達先の拡大や代替部品活用のための設計対応、工場の分散化などによる対応を実施。価格対応や費用抑制を継続していくことになる」と語る。

 さらに、「新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、分散型社会への移行や、ライフスタイルの多様化など、様々な社会課題に直面している。エプソンは、『持続可能でこころ豊かな社会を実現する』ことを、『ありたい姿』として定め、5つの解決すべき社会課題に取り組んでいくことになる」と語った。

主要社会課題

 エプソンが、解決すべき社会課題としているのは、「環境負荷の低減」、「労働環境の改善」、「分散型社会をつなげる」、「インフラ・教育・サービスにおける質の向上」、「ライフスタイルの多様化」である。

 そのなかでも、「環境負荷の低減」は、プリンタメーカーとして、重要な取り組みだと位置づける。

 エプソンは、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を目指す「環境ビジョン2050」を策定。さらに、利用者にとって、環境負荷低減につながる商品の提供を行っていく姿勢を打ち出している。

 たとえば、「地下資源消費ゼロ」に向けた取り組みのひとつとして、プリンタの小型化がある。

 プリンタは、スキャナー機能や、多様な紙供給機能などの搭載によって大型化する傾向にあったが、エプソンは、2008年に大幅な小型化を実現し、その後も、機能を向上させながらも小型デザインを追求してきた。

小型化と環境負荷への取り組み

 「小型化は使い勝手をよくするだけでなく、投入資源や廃棄物を減らし、輸送エネルギーも減らすことができる。つまり、資源の問題や気候変動への対処として、必須の取り組みが小型化である」としたほか、「商品の小型化だけでなく、自社の取り組みとして、業務で使用する紙の削減活動を推進している。これは使用する資源を減らすだけではなく、電子化などによる業務効率化を図り、同時に社員の環境意識の向上も目的としている」とする。

 目標としていた2021年度上期までの社内の紙半減目標は達成することができたという。

 紙の使用によって売上げが増加するプリンタメーカーが、自ら紙半減を達成するというのは、まさに異例の取り組みだが、そこにも環境を重視するエプソンの姿勢が感じられる。

 プリンタの梱包箱も、コートボールの利用をやめ、必要な表示はラベルに変更。ここでも紙の使用量を削減し、CO2排出量を約10%削減することに成功したという。

 さらに、今後は、プリンタ本体に再生材を使用することで、石油由来プラスチックの使用量を削減し、資源循環に貢献することも目指すという。

リサイクルに対する取り組み

 そのほか、インクジェットプリンタが、レーザープリンタに比べて圧倒的に消費電力が少なく、オフィスでのランニングコストを抑制。他社カラーレーザー複合機に比べ、年間消費電力量を平均で約80%削減できること、大容量インクタンクモデルの世界累計販売台数が6000万台に達し、カートリッジの主原料であるプラスチックなどの使用を減らすことができるため、これらすべてがインクカートリッジモデルだった場合と比べて、CO2排出量を約18.3万トン削減したことなども示してみせた。

世界累計6000万台突破

 こうした環境への取り組みは、「エプソンの差別化につながる」と、小川社長は自信をみせる。

 エプソンは、2022年5月に、創業80周年を迎えるという。

 「良いもの作るだけでなく、社会課題の解決に主眼を置き、創業以来培ってきた『省小精の技術』をベースに、持続可能な社会や、こころ豊かな生活など、未来の人々が望む社会を実現するため、新しい発想や、新しいやり方で挑戦していく」と語る。

 2022年のエプソンの事業の方向性も、これまでとは変わらないといえそうだ。

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