日本だけではなくグローバルで中国メーカーのスマートフォンの存在感が目立っています。しかし、その一方で大手以外のメーカーにとっては厳しい時代になっています。中堅どころのメーカーはタフネススマートフォンなどで差別化を図っていますが、ターゲット層がニッチであり、なかなかヒット製品を生み出せていません。
大手メーカーと対抗していたメジャーどころを見てみると、Meizu(魅族)はなんとかハイエンドモデルを出し続け生き残っています。現行最上位モデル「Meizu 18s Pro」は5000万画素+3200万画素+800万画素メインカメラに4400万画素フロントカメラなどハイスペックなカメラフォンとして頑張っています。
一方、一時期は騒がれていたメーカーが今年もひっそりと消えてしまうようです。日本参入も一時は騒がれたSmartisanは2020年10月に5Gスマートフォン「Jianguo R2」を出しましたが、2021年にはスマートフォンの開発中止を発表。現在もECサイトは残っていますが製品はすべて品切れ状態のままで、事実上市場から撤退したと言えます。大手メーカーにはない独自UIのスマートフォンを展開していただけに残念なところです。
MeizuもSmartisanもハイエンドモデルを出していたので、日本でも知名度はそこそこあったと思われます。デザインや価格重視の製品に特化していたメーカーはそれこそシャオミやrealmeの低価格機に対抗できず、市場で生き残ることはもはや難しそうです。たとえばSugarというスマホブランドを知っている人、覚えている人はどれくらいいるでしょうか? スワロフスキーのクリスタルで本体を覆った「お姫様スマホ」とも言える製品を出して中華圏やアジアで話題となりました。
しかし、その後は大手メーカーの新製品ラッシュに対抗できず、今は細々と製品を出しているにとどまっています。宝石をちりばめた製品が売れなかったあとは、中華圏で人気の男性アイドルを広告に使うなどやはり女性向けを意識していましたが、もうその面影もありません。中国では1年前に5Gスマホを出しましたが、今は本物かどうかわからないSugarブランドのスマートフォンやフィーチャーフォンが販売されており、生存していないのが実情です。唯一生き残っているのが台湾市場で、アイドルの後は翻訳機能を売りにした製品を出し「旅スマホ」という分野に進出したものの、コロナ蔓延によりその道も閉ざされてしまいました。
現在のSugarは6000mAhの大容量バッテリーを売りにした「C60」、パンチホールフロントカメラで全画面表示が可能なうえに、4800万画素の高性能カメラを搭載した「S55」などを台湾で販売していますが、これら2製品も発売されたのは今年の夏以前。このまま新製品を出さずに消えてしまう可能性は大きそうです。両製品ともチップセットはソニーの「Xperia Ace II」と同じMediaTekのHelio P35と聞けばパフォーマンスも想像できるでしょう。しかも、これらモデルが最上位機種なのです。
12月になっても積極的に新製品を発表する中国大手メーカーの動きは見ていて楽しいものの、一方ではマイナーなメーカーが次々と消えていくのはちょっと悲しいところでもあります。とはいえ、そんな感傷に浸っている時間などないのが激しい争いをしている中国市場、価格だけではなく最新技術を惜しげもなく投入するなど高性能モデルの開発に力を入れているメーカーだけが生き残れるわけです。
去っていくメーカーもあれば、realmeなど日本にまだ未上陸のスマートフォンも残っているだけに、2022年は新しい製品が日本でも販売されることを期待したいものです。
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