OPEN異能(Inno)vation 2021開催!
ICT分野において地球規模の価値創造を生み出すために、奇想天外でアンビシャスなICT技術課題に挑戦する人を支援する「異能vationプログラム」。その授賞式「OPEN異能(Inno)vation 2021」が12月15日、東京ミッドタウン日比谷BASE Qにて開催された。
会場は12時にオープン。BASE Q内には昨年度を中心に過去の受賞者の展示ブースが並んでおり、画像の食べ物の味を再現する宮下芳明氏の「味わうテレビ」や発達障害者の困難を疑似体験する宮崎英一氏のMRシステムなど、異能の持ち主による作品を実際に体験した来場者から次々に驚きの声が上がった。
そして、13時にはメインステージで授賞式がスタートした。司会を務めるのは、プログラム推進大使に就任して4年目となる古坂大魔王氏。角川アスキー総合研究所代表取締役会長で異能vation事務局長を務める福田正氏も壇上に上がり、共に式を進めた。
まず、福田事務局長がプログラムの状況を紹介した。2021年度の応募総数は前年から4010件増え、2万2164件。応募者の年齢は6歳から86歳までにわたり、異能vationの芽が確実に広がりを見せていることを感じさせた。
式の開会にあたり、総務省を代表して中西祐介・総務副大臣が登壇。「ポストコロナ時代を見据えて、破壊的なイノベーションをいかに起こすかが日本のみならず世界の大きなテーマになっています。この会が、皆さんと破壊的イノベーションの芽を大きく育てられる機会となるように」と期待を語った。
イノベーションの原石を輝かせるプログラムに
続いて、「破壊的な挑戦部門」の挑戦者に選ばれた35名が発表された。それぞれの技術課題を見ると、「魚拓型ビデオカメラ」「『ウザい恋するロボット』の制作」「文字を描画する生物ロボットの開発」など、奇想天外でアンビシャスであることが伺える研究ばかりだ。
この「破壊的な挑戦部門」は、異能な先駆者である10名のスーパーバイザーによって挑戦者が選ばれる。また異能vationプログラムには業界を牽引する6名の異能のトップランナーがプログラムアドバイザーに就き、概括的なアドバイスを送っている。
この計16名の中から今回の授賞式には会場、オンライン、ビデオメッセージで13名が参加し、総評を行なった。プログラムアドバイザーの一人、元Facebook CTOでQuora創業者兼CEOのアダム・ディアンジェロ氏は「異能vationプログラムには、引き続きクリエイティブな発想を支援していって欲しいと思います。なぜなら、さまざまな障害がある中、イノベーションは長期的な視点で、長い期間で育む必要があるからです」とプログラム継続の必要性を訴えた。
この間、自民党政務調査会長代理の新藤義孝氏が会場を訪れ、挨拶を行なった。新藤氏は元総務大臣で、異能vationプログラムの生みの親とも言える存在。「世の中には世界を変える天才がたくさんいるが、その天才がチャンスを得られるか、原石が光り輝くかは周りの支えにかかっています。異能vationの授賞を通じて世の中の変革が成し遂げられることを心より期待しています」と熱いエールを送った。
変わらない社会の岩盤に穴を開ける
ここで、スーパーバイザーの委員長を務める高須クリニック院長の高須克弥氏が会場の展示ブースを訪れた。高須氏は、日中にソーラーパネルで蓄電した電気により夜になると花が開く花園園恵氏の「ソーラー花電」などを見学。読み込んだ患者のCTデータを即座に3D CG化できる瀬尾拡史氏の研究では、「せっかく勉強した(X線写真の)読影の知識がすべてムダになる」と舌を巻いた。
高須氏がメインステージに戻ってからも、来賓が次々に会場を訪れる。内閣府特命担当大臣の野田聖子氏は、「イノベーションに取り組んでいる人は、単に技術や知恵があるのではなく、誰かのために役立とう、誰かを幸せにしようという思いにあふれています。ここでそういう人達に出会えることを嬉しく思います」と、総務大臣の座を退いたあともプログラムをファンとして応援していることを言明。
元総務副大臣で現在は自民党広報本部長代理を務める柴山昌彦氏は、「いまは破壊的なイノベーションがますます求められている時代です。多様性と言いながらなかなか社会に風潮として根付かない中、こうした取り組みで固い岩盤に少しずつドリルで穴が開いていることを実感します」と異能vationプログラムの社会的な意義を指摘した。
各地域に広がる異能vationプログラムの輪
異能vationプログラムでは、地域の企業、地方公共団体、教育機関、個人事業主、塾、コワーキングスペース運営者などと連携して国内50ヵ所、海外2ヵ所にネットワーク拠点を設け、各地の異能の発掘・育成に努めている。
今回の「OPEN異能(Inno)vation2021」と併行して、全国6ヵ所のネットワーク拠点がイベントを開催。東京会場に設けられたブースに各拠点の担当者が来場してオンラインでつないだほか、随時、授章式会場にオンライン中継された。
ユニークだったのは、高校連動特別イベントだ。ネットワーク拠点となっている北海道の札幌日本大学高等学校、山形県の県立米沢東高等学校、そしてネット高校のN高校、S高校をオンラインで結び、プレゼン会などが行なわれた。授章式にも各校の参加者からコメントが届き、若い異能の息吹が育ちつつあることを実感させた。
また、2021年度に新たにネットワーク拠点に加わった4団体が授賞式に登壇。「多くのイノベーションが生まれる場にしていきたい」と抱負を語った。
リアルとオンラインで感じられたイノベーションの可能性
そして、多彩なプログラムが組まれた「OPEN異能(Inno)vation 2021」もいよいよクライマックス。ジェネレーションアワード企業特別賞・分野賞の発表を迎えた。
このアワードは、これまでにないアイデア・技術・課題を持つ人と企業を結び、実現を目指すことで日本の未来を創っていこうとするもの。企業特別賞では、アワードコミッティーとなった23社がそれぞれで受賞者を選んだ。壇上には、アワードコミッティー23社の代表者が登壇。「実際に投資してみたい」「弊社のブランドとコラボを」などとアイデア実現への期待を表した。
また、分野賞は「食に関する分野」「新たな視点の分野」「新たに観える分野」「匂いに関する分野」でそれぞれ受賞者を発表。食に関する分野は、「「ご当地非常食」の開発とデータベース化」が受賞となった。これは福島県福田小学校6年生による提案で、災害時の対策のアイデアとして高く評価された。
今回の授賞式は、受賞者はオンラインで参加。海外に駐在中のスーパーバイザーもオンラインでコメントを寄せ、ネットワーク拠点からもオンラインで中継が行なわれた。そして、最後にはプログラムへの応募があるインドネシアから教育文化研究技術省・ニザーム局長のビデオメッセージが届き、オンラインでのつながりを存分に活用したイベントとなった。
一方、過去の受賞者の展示ブースでは開発の担当者と直接話をし、実際に作品を体験できる機会となった。また、ネットワーク拠点のブースでも担当者と熱心に話をする参加者の姿が見られている。
リアルで感じる感動とオンラインでの広いつながり。そこから破壊的なイノベーションの可能性を存分に感じながら、「OPEN異能(Inno)vation 2021」は閉会を迎えた。
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