画面UIの意匠権取得での狙いやメリットとは
アプリなどのGUIそのものも保護対象に 法改正後の「画像意匠」の動向紹介(使いどころ、影響)
スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人による本連載では、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントをお届けします。
目次
■画像意匠(画面表示に特徴的なUI)が保護できるようになったのご存じですか?
■新たに保護されることになった画像意匠の出願・登録状況
■実際に登録された画面UIの意匠の紹介
■意匠登録の狙いとメリットについて
■今後の画面UIの意匠について
本稿では、最近法制度が改正され、新たに保護されることになった画面UIの意匠について、および実際の登録例を紹介します。
画像意匠(画面表示に特徴的なUI)が保護できるようになったのをご存じですか?
ビジネスや研究分野などで聞く「知財」ですが、一般的には、特許、商標、著作権などが認知されていると思われますが、製品・サービスのデザインを保護する「意匠制度」をご存知でしょうか。
意匠制度とは、特許制度のように、デザインについて特許庁に出願することにより、意匠権として保護を受けることが可能であり、独占的な実施を可能にするものです。
「意匠制度で保護されるデザイン」とは、例えば、以下に示すようなダイソンの扇風機(送風機)のように、新たなデザインの製品を保護するために存在する制度です。
今回のテーマである意匠制度ですが、2019年に大幅な法改正があり、2020年4月1日より保護対象が拡充され、従来は保護対象ではなかった画像意匠(画面表示に特徴的なUI)が保護されることになりました。
具体的には、従来はスマートフォン等の物品に記録・表示されてその物品と一体として用いられる画像のみが保護対象でしたが、物品を離れた画像のみでも保護されることになりました。
例えば、最近話題となったバルミューダフォンでの、特徴的なアプリのような画面UIについても、意匠登録の可能性があるようになりました。また、壁や床等に投影させる画像や、操作用のアイコンも保護対象になっています。
新たに保護されることになった画像意匠の出願・登録状況
2021年11月1日時点で、特許庁から出された資料によると、新たに保護されることになった画面デザインについて、1,707件出願され、605件登録されています(「改正意匠法に基づく新たな保護対象等についての意匠登録出願動向」特許庁審査第一部意匠課資料より引用)。
そこで、実際に登録されている意匠について抽出しました。
・抽出日:2021年11月26日
・抽出条件:日本意匠分類にN3(画像デザイン)が付与され、意匠に係る物品が「画像」、「GUI」(グラフィカルユーザインタフェースを含む)、「アイコン」で終わる登録意匠。
・抽出件数:681件
画像UIの登録意匠を10件以上保有している出願人は以下の15社です。
画像UIの登録意匠の月別登録件数は、以下のように推移しています。
このように、国内外の有名企業が画面UIの登録意匠を保有していることがわかります。ただし、まだまだ件数としては多いとはいえず、10件以上保有している意匠権者は15社しかない状況です。
また、画像UIの登録意匠の月別登録件数は、おおむね50件前後、毎月新たに登録されていることが分かります。
本稿では、法改正から1年以上経過し、新たに保護されることになった画像UIの意匠について、どのような登録例が見られるか紹介し、使いどころ、効果について考察したいと思います。
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