日本テレビ系で毎週水曜よる10時から放送中の「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」は、弱視の高校生が主人公のドラマです。その舞台に横浜市立盲特別支援学校が使われています。本校は、およそ130年の歴史ある学校です。視覚に障害のある幼児児童生徒への教育活動を行っています。
まったく見えない全盲の人と、見えにくいロービジョンといわれる弱視の人がいますが、本校では在学者の多くが弱視です。この弱視について、本校公認キャラクター「しもん」と、弱視の職員で「みゆき」と「まちこ」の3人が弱視あるあるについて話をしていきます。
第8回は、お出かけや待ち合わせ、カラオケボックスについてです。
もしもお目めに合いましたら、読んでみてください。
前回の記事はこちら:
【連載】まっ平なタッチパネル。ドキドキ冷や汗が止まらない(汗)
※過去の連載記事はこちら:「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある
しもん:ドラマでユキコちゃん(赤座ユキコ:杉咲花)がバスに乗って出かけるシーンがあるよね。
みゆき:お出かけの前にはおしゃれをしなきゃね。
まちこ:バッチリメイク
しもん:お化粧するの??
まちこ:当然!
みゆき:するよ!
まちこ:私はリキッドファンデーションを使って、スポンジで塗るなぁ。アイシャドウは指で塗って、アイラインとマスカラは手の感覚でね。
しもん:へぇー、失敗とかしないの?
まちこ:出勤してマスカラが目の下についていることを指摘されます…
しもん:あらー。
まちこ:アイシャドウ濃すぎて、「殴られたの?」ってこともね…
しもん:ドンマイ!
みゆき:私もリキッドファンデーションで手を使って塗ります。アイシャドウや口紅も指を使って塗ります。眉毛やアイライン、マスカラは30倍の鏡を見ながらメイクします。
しもん:この間、渡り鳥の友達が遠くまで出かけたから疲れたって言ってたなぁ。
みゆき:弱視も知らない場所へ出かけるのは疲れるよね。
まちこ:私は同伴がいないと知らない場所へは出かけられないなぁ。
みゆき:私は行く場所を事前に調べまくってから出かけます。
しもん:点字ブロックのないところはどうしてるの?
まちこ:歩行訓練を数回して、歩数を数えたり光を頼りに歩くのよ。
みゆき:全盲の人は聴覚だけでなく、嗅覚、おでこやほほの感覚も使ってるよね。
まちこ:そそ。マスク生活になったら歩きにくいって言ってたね。
しもん:ほほー。顔面の感覚だねえー。
まちこ:おでこには第三の目ね。
しもん:感覚の総動員なのですね。
みゆき:まちこと2人で出かける時は私が手引きをして歩くけど、行先の表示はまちこに見てもらってる。
まちこ:電光掲示板とかは見やすいんだよね。
みゆき:案内板がもう少し低い位置にあれば近づけるけど、背の高い人はぶつかっちゃうか。
しもん:最近は壁に大きく案内文字が書かれているよね。
まちこ:視野の狭い網膜色素変性症の人で多いけど、まぶしい外から屋内に入ってくると、真っ暗でいきなり歩けなくなるんだよね。
みゆき:そう。そういう人は視力があるし白杖持たないことが多いから、屋内でいきなり歩けなくなるからビックリされる。
しもん:そういえばこの間、横浜駅で人にぶつかったけど、あの人視野狭かったのかなぁ。
まちこ:そそ。人混みでは視野が狭いとぶつかるのよ。
みゆき:人混みだけ白杖を持つ人もいるもんね。
しもん:白杖持ってないとわからないもんなぁ。目が見えにくいって。
みゆき:私も人混みを歩くときは誰かに手引きされて歩くと楽だなあ。
まちこ:みゆき、白杖持ちましょ!
みゆき:ドラマ見てたら、白杖持ちたくなってきた。
まちこ:細くて短い白杖のシンボルケーンでもいいんじゃない?
みゆき:でも片手がふさがるのはなあ。
しもん:助けを必要とする人が持ってる「ヘルプマーク」もあるよ。
みゆき:うちの学校にも「ヘルプマーク」カバンに付けている人いるね。
しもん:白杖持たないでマークだけつけても視覚障害ってわからないから、白杖のかわいいキーホルダーとか一緒にカバンにぶらさげるのはどう?
みゆき:そういうのあったらカバンに付けようかな。もう少し考えます…。
まちこ:横浜駅での待ち合わせ、定番は「みどりの窓口」前。略して「みどまど」
みゆき:いい匂いも目印よね。
しもん:待ち合わせってどうやるの? みどりの窓口っていっても広いし、柱もいっぱいあるよねぇ。
みゆき:すぐ横にいるのに、携帯に電話したら隣で鳴ってビックリ! ってことも。
まちこ:携帯電話のないころの視覚障害者の待ち合わせって、想像しただけで大変そう。
みゆき:携帯電話命よー。
まちこ:白杖を持っている人同士の待ち合わせは、近くでわざと白杖をカンカン鳴らすよ。
しもん:なるほどー。
まちこ:待ち合わせ相手が弱視であれば、なるべく正確な位置、その日の服装なんかをメールするよ。
しもん:お・も・い・や・り! 思いやり。
しもん:タクシーを拾ったりはするの?
みゆき:まず道で拾うことは考えません。駅に停まっているタクシーなら使うけど。
まちこ:タクシーかどうかわからないから、ひたすら手を上げて待ってます!
しもん:そりゃ大変だ。
まちこ:それが最近便利なアプリがあってね。「Go!」っての。
みゆき:聞いたことあるー。
まちこ:迎えに来てくれるの。手をずっと上げてなくてもいいのー。
しもん:すごいねえ!
みゆき:タクシーは乗ったとしても、目的地の近くで降ろされてすぐにたどり着けないこともしばしば。違う方向に歩いて迷子になったり…
まちこ:飲んで帰った後、タクシーで降ろされて家の近くで迷子になったことあるなぁww
みゆき:目の前が目的地だと、恥ずかしくて、さらに詳しく聞けないのよね。
しもん:どうして?
みゆき:「目の前にあるでしょ」とか言われるのが辛くて。
まちこ:親切な運転手さんは入口の前まで誘導してくれたりするよ。
みゆき:そうそう、親切な人はたくさんいるのもわかってるんだ。道をきいても、今は携帯で調べてくれて途中まで一緒に行ってくれる人もいるよ。
しもん:やっぱり勇気を出して援助依頼することだね!!
しもん:誘導するのって難しいよね。
まちこ:「お手伝いしましょうか?」って言われて、断るのは申し訳ないから、知ってる道だけど、お願いしたら、誘導してもらった先で、自分がどの方向を向いてるかわからなくなって、そのあと迷ったりするんだよね。
しもん:じゃあどうしたらいいの?
まちこ:「ありがとうございます。でも大丈夫です」って断るか、誘導してもらった場所で周りの位置関係を教えてもらって別れると、自分の立っている位置がわかるかな。
しもん:タクシーを降りた時と同じだね。
みゆき:援助を断るのも「せっかく声をかけてくれたのに」と思うと、断りづらいね。
しもん:席を譲る時もそうだけど、声をかける側も、勇気を出して声をかけたのに、断られたらがっかりしちゃうね。
みゆき:断る事情を理解してくれていたら、断られても嫌な気分にならないかもね。
みゆき:横断歩道は音響信号機がない場所は信号機が遠すぎると赤か青かわからないなあ。
まちこ:最近は車の音も小さいし、人も少ないと、青になったかどうかわからずに渡っちゃう。
しもん:危ないよぉ!
まちこ:あと、真っすぐ渡れなくて方向がわからなくなることもある。
みゆき:エスコートゾーンは増えてきたけど、まだまだ少ないからね。
しもん:解決策はないの?
まちこ:「青になりましたよ。一緒に渡りましょうか?」って声かけてもらえたらうれしいな。
みゆき:駅のホームとかはすごくたくさんの人が「お手伝いしましょうか?」って声かけてくれるようになったけど、横断歩道はみんな気付かないよね。
しもん:ドラマのユキコちゃんも車にひかれそうになったけど、駅のホームと同じくらい危険な場所だね。
しもん:どうして誘導はひじや肩を持つの?
まちこ:自分の身を守るため!
しもん:?
みゆき:腕を組んだり、手をつないだり、腕や肩を持たれたりすると、障害者自身の意志で手をはなせないでしょ。
しもん:なるほど。
まちこ:それから誘導する人の腕の動きで、道幅が狭いのか、止まった方がいいのか、段差の高さとか伝わりやすいからね。
しもん:よく考えられてるなあ。
しもん:カラオケとかは行くの?
みゆき:もちろん!
まちこ:時々ね。
しもん:どうやってるの?
まちこ:見える人に歌詞を直前で言ってもらって。
みゆき:もちろん画面にめっちゃ近づいて。
しもん:ほほーなるほどね。
みゆき:画面の文字サイズが選べて大きくできたらいいのにって思う。
しもん:それいいね。
みゆき:部屋は少し暗くすると画面が見やすいのよね。
まちこ:それヤダなぁ。部屋を暗くすると見えなくなる。ドリンクこぼしちゃうよぉ。
しもん:ケンカはやめてー。
まちこ:全盲の人は点字ディスプレーに歌詞を入れて、それを読みながら歌ってるよね。
みゆき:そうそう。
まちこ:トイレに行ったあと、間違えて違う部屋に入ったこともしばしばあるよ。
しもん:それ、見えててもやるよ。
みゆき:部屋番号見えにくいから、ドアの数を数えて覚えておくよね。
しもん:文字がもうちょっと大きければいいのにって思うことが街にはたくさんあるね。
まちこ:しもんさん。歌は好き?
しもん:はい、もちろん! さえずりますよー♪
こうしてまだまだ3人、いやっ2人と1羽の話は続きます。
次回も読んでいただけたらうれしいです。
もしも、お目めに合いましたら。
「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」
日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送中。
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