ナーヴギアと呼ばれるVR機材を活用して、視覚・聴覚・触覚まで再現された完全没入型の空間に「フルダイブ」する。
先日アップルが取得したUS特許「11,170,139」と「11,172,320」は、SAOで描かれた世界に一歩近づくような、未来を思わせる内容だ。アップルの特許をウォッチしている「Patently Apple」によると、アップルが取得した特許は、光線の反射をシミュレートすることで、リアルな3D空間を描く“レイトレーシング”(Ray Tracing=光線追跡)のような計算を聴覚の世界で実践するもので、空間オーディオ拡張し、VR空間内でリアルタイムに処理できる技術だという。
これを本特許では"visualization(視覚化)"に対して"auralization(聴覚化)"と呼んでいる。例えば、下図(fig6)のように、(仮想的に作成された)部屋で音がどのように反響するかをリアルタイムに解析するfig6において602は音源で604が聴いているユーザーを示している。興味深いのは、空間をシミュレートすることで「聴覚」だけでなく「触覚や嗅覚」にも拡張できるとしている点だ。
仮想的に想定した人間が部屋の中で動き回れば、当然その状態も変化する。そのため静的ではなく動的なシミュレーションが必要で、かつリアルタイムの計算が求められる。アップルの特許では、窓を開閉することで変化する音響空間の容積にまで踏み込んでいる。
これがもし製品化されるなら、こうした音響情報を空間オーディオのフォーマットに落とし込んでおく必要がありそうだ。ただし、特許は企業戦略的な側面もあるので、特許を取得したからといって、その技術を応用した製品がすぐに出てくるわけではないという点も注記しておく。
最近は「空間オーディオ」という言葉がバズワーズ化してやたらと多く使われている。定義もバラバラだ。その中でアップルの言う空間オーディオは、モバイル用途に重点を置いている。例えばユーザーがiPhoneを持ったまま車で移動しているとすれば、その状況をリアルタイムに計算して、空間再現に反映するという発想だ。動的な処理である点もポイントである。仮に車内空間をVR空間と置き換えてみると、本特許からアップルが考えている「空間オーディオの未来」が垣間見てくるかもしれない。
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