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JR東日本スタートアップのオープンイノベーション事例

ロボットで実現する、いつ食べても安定して美味しい駅そば

2021年11月05日 18時30分更新

 この記事は、民間事業者の「オープンイノベーション」の取り組みを推進する、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)との連動企画です。

 社外からの技術やノウハウを取り入れ、イノベーティヴなビジネスを創出しようとするコンセプトを「オープンイノベーション」と呼ぶ。

 国内でも、大手企業とスタートアップ企業、大手企業同士、企業と大学などの研究機関が組織の枠を超えて連携することで、革新的なプロダクトやサービスが登場する機会が増えてきた。また、アクセラレーションプログラムなどを通じて、協業先の企業や研究チームを発掘しようとする動きも、近年盛んだ。

 本連載では、編集部が独自に取材を進めた内容を元に、大手企業のオープンイノベーションに関する取り組みを紹介していく。


 連載第1回となる今回は、JR東日本スタートアップの事例として、同社 営業推進部 隈本 伸一氏と、協業しているコネクテッドロボティクス 取締役COO 佐藤 泰樹氏に話を聞いた。(以下、本文敬称略)

JR東日本スタートアップとコネクテッドロボティクスのメンバー

――JR東日本スタートアップは、スタートアップ企業のアイデアや技術と、JR東日本グループの経営資源をつなぎ、新たなビジネスを生み出すことを目的に設立されました。立ち上げのより詳しい経緯と、これまでの取り組みについて教えてください。

隈本「JR東日本スタートアップは、2018年の2月に設立されています。JR東日本では、2017年から『JR東日本スタートアッププログラム』として、スタートアップ企業との事業の共創を目指すアクセラレーションプログラムを実施していましたが、オープンイノベーションを一層活性化し、世の中の変化のスピードに対応していくという狙いから、JR東日本から外に出す形で、設立されました。JR東日本スタートアッププログラムでは、2017年のスタートから数えて、これまでに90件以上の実証実験を実施しています」

――御社のオープンイノベーション事業の、最も大きな特徴はどこにあるのでしょうか。

隈本「私たちの母体となるJR東日本は、駅や鉄道を中心としたインフラを持っています。採択した技術を持つ組織と事業の共創プランを練り上げ、その後、すぐに私たちや、グループ企業の持つアセットを使って実証実験に移れるという点が、大きな強みです」

――これまでに事業化しているプロジェクトには、どのようなものがありますか。

隈本「最近の例では、無人AI決済店舗の分野で、サインポストとの合弁会社『株式会社TOUCH TO GO』を設立しています。また、VILLAGE INCとは、群馬県の上越線土合駅で無人駅のグランピング施設「DOAI VILLAGE」を実証実験というかたちで展開しました。

 2020年の12月には、コネクテッドロボティクスと資本業務提携を締結し、エキナカの飲食店施設のロボット化、そばロボットの開発や展開に向けて動いています。2020年の3月にプロトタイプの制作で協業関係をスタートして、プロトタイプの検証を9月に行ない、12月に資本業務提携を結んでいます」

――コネクテッドロボティクスの立場から見て、JR東日本スタートアップとの協業には、どのような感想をお持ちになりましたか。

佐藤「僕は、アクセラレーションプログラムに応募するときは、採択されることを前提にして準備するのが、マナーだと思っています。絶対に採択されるぞという気持ちで、JR東日本さんの持つアセットや店舗のことを調べ上げ、その後の協業までスムーズにつなげられそうなアイディアとして、そばロボットを提案しました。その甲斐もあって、採択後、順調に協業関係が進み、実際の店舗でそばロボットが動いている段階までスピーディーに進んだと思っています。特に、隈本さんは私たちの要望を丁寧に聞いてくださり、私たち任せにしてくださる部分も多かったので、プロジェクトが進めやすく、ありがたいと思いました」

隈本「2017年からアクセラレーションプログラムをしていますが、これまでを振り返っても、コネクテッドロボティクスほど、事業化までの道筋のイメージを具体的に固めてきた企業は珍しかったと記憶しています」

そばいち ペリエ海浜幕張店で稼働しているそばロボット

――そばロボットは、すでにどこかの駅で動いている様子が見られるのですか?

佐藤「JR東小金井駅でJR東日本フーズが運営する『そばいちnonowa東小金井店』に1号機を、『そばいち ペリエ海浜幕張店』に2号機を導入しています。2号機は2021年の3月から導入されていますが、アームの数を2本に増やし、作業効率を高めています。そばロボットは、いつでも状況をモニタリングできるようになっていますので、毎日様子は見ています。今日も元気に動いてくれていますよ」

――人の作業をロボットに置き換える最大のメリットは、どこにあるのでしょう。

隈本「もともと、このプロジェクトには、飲食店の人手不足を解消しようという狙いがありました。スタッフが足りなくて、困っていたんです。シフトの状況などにもよるので一概には言えませんが、2号機は、おおむね1人分の作業を担うことができます。コロナ禍になってからは、厨房に人が密集することを防げるというメリットも生まれました。

 そして、作業を均質化し、商品のクオリティーのばらつきを無くせる点も、飲食店にロボットを導入するメリットになると思います。マニュアル化していても、人の手による調理では、どうしても作業者によって微妙に味が違ってしまいますから」

佐藤「そばロボットは、生そばを茹でザルに投入し、ロボットアームで揺らしながら茹で、洗い、冷水で締めるという調理工程に対応します。毎回、時間も加減も正確なので、日によって味が変わるということがありません。そばロボットの様子を視察しに行くと、『最近、ここのそばがすごく美味しくなったんだよ』って、お客様が話しかけてくださることがあるんですよ」

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、非接触のニーズも高まっている。JR東日本スタートアップとコネクテッドロボティクスでは、今後もそばロボットの導入を拡充し、2026年までに、JR東日本クロスステーションが運営する30店のそば店で導入することを目指しているという。

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