ASCII編集部の貝塚によるSORACOM体験記をお送りする。第2回はソラコム IoTストアで購入できるCO2センサーで、車内の空気を可視化してみる。密閉空間である車内は、時にモヤっとした空気が気になるが……。
「部屋の空気が薄い気がする」は気のせいではなかった!
ソラコムの直販サイト「SORACOM(ソラコム)IoTストア」で購入できる「LTE-M CO2センサー RS-LTECO2 スターターキット」を試用する本連載。
前回は、狭い寝室の空気が、時間帯や状況によってどのように推移するのか計測することをテーマに、初期設定や設置方法を含めて解説した。慣れないコードの記述など、一部不安を感じる点もあったが、公式のレシピを参考に、寝室の空気を24時間モニタリングする環境を構築することに成功した。
一度設定してしまえば、LTE-M CO2センサー RS-LTECO2の扱いはものすごく簡単だ。電源に繋いでおくだけで、絶えず空気の状況を記録してくれ、「SORACOM ユーザーコンソール」と呼ばれるブラウザ上の管理画面でいつでもチェックできる。
電源を抜いた場合、そのあいだのみ計測がストップするが、電源に繋ぎ直せば、わずか1分前後で、いつでも計測が再スタートする。「IoTデバイス」と聞くと、まだまだ個人利用は盛んでない印象もあるが、興味さえ持っていれば、また、ほんのわずかな手間さえかければ、誰でも簡単に扱えるものだと感じる。
上の画像はある日の我が家の寝室のCO2濃度だ。
LTE-M CO2センサーはCO2の濃度を「ppm(100万分の1)」で表す。この単位は、空気1リットルの中に、どれくらいCOが含まれているかを表しており、上のグラフからでは、12時1分のピーク濃度が1300ppm弱であることが読み取れる。1リットルの中に、0.000013%ほどCO2が含まれているという意味だ。
その後12時46分には400ppmまで下がっている。この日はというと、前日深夜の取材があったので、昼過ぎまで私が寝室で寝ていたのだ。目が覚めてすぐに換気を始めたが、40分ほどでCO2の濃度が下がり切り、そこからあまり変化しなくなっている。
つまり、私の自宅の寝室のCO2濃度は(人がいないときで)400ppmほどがおおむねの平均値であると推測できる。そして、人がある程度の時間寝ていた場合など、状況によって、3倍以上ものCO2濃度になることがあるとも説明できる。日常生活の中で「なんとなく息苦しいな」「なんとなく部屋の空気が薄いな」と感じることが、これまでにも何度もあった。あれは気のせいではなくて、本当にCO2濃度が上がっていたに違いない。
CO2センサーを車載化して、車内のCO2濃度をチェック!
LTE-M CO2センサー RS-LTECO2を使うと、部屋の空気がかなり高い精度で計測できることはわかった。こうなると、ほかの場所でも使ってみたくなる。私が目をつけたのは「車内」だ。
私は首都圏からやや外れた郊外に住んでいる。公共交通機関も十分に発達しているエリアなので、車がなくても生活することはできるが、どちらかというと車社会に寄っているエリアで、大型スーパーへ行くときなど、日常の足として車を便利に使っている。家族で出かけようと思えばチャイルドシートに子どもを乗せて、密閉状態の車内である程度の時間を過ごすわけだが、車内の空気は時折、とても薄くなっているような気がする。
子どもの体調はちょっとした環境の変化に敏感だから、LTE-M CO2センサー RS-LTECO2を使って、車内の空気が日常的にどのように変化しているのかを知っておくことで、今後の空調の管理に活かせるかもしれないと考えたのだ。
LTE-M CO2センサー RS-LTECO2の電源は、多くのスマートフォンなどと同じく、USB Type-A端子がACアダプターに接続されている形式。電圧さえ足りていて、USB経由で電源を供給できれば、どこでも駆動させることができるのだ。
LTE-M CO2センサー RS-LTECO2を車内で駆動させるにあたって、家電量販店やカー用品店などで販売されている、シガーソケットをUSB Type-A端子に変換するアダプターを用意した。とある国内メーカーの製品だが、実売1500円前後とそれほど高くない。2.4A出力の製品で、問題なくLTE-M CO2センサー RS-LTECO2を駆動させることができた。
念のため、車内といった環境においてメーカーとしてはこのような使い方を積極的に推奨しているわけではなく、すべての環境で問題なく動くとは限らないので、試す場合は、事前に相性や安全性に関して調べた上、自己責任で試してほしい。
LTE-M CO2センサー RS-LTECO2を車載する場合、運転の邪魔にならない、ダッシュボードやコンソールボックスの周辺に設置するのがベターだろう。私の車の場合、ダッシュボードに備え付けのカーナビ部分に、物を置ける程度のスペースがあり、LTE-M CO2センサー RS-LTECO2をピッタリと設置できた。
想定よりもかなり上下している車内のCO2濃度
さて、一定時間、車内の空気を計測した結果を紹介しよう。
SORACOM ユーザーコンソールでは、「MM月DD日のXX時XX分から、MM月DD日のXX時XX分まで」といった具合に、任意の時間幅でグラフを表示できる。「直近30分」といった短時間や、「直近40日」といったかなり長いスパンにも設定できるので、計測期間に応じて、都度適切なスパンに設定しよう。
下の画像は、14時30分前後から、17時前後までの2時間30分程度の車内のCO2濃度を計測した結果のグラフだ。
運転を開始した14時30分頃から15時10分頃にかけて、激しくCO2濃度が上下していることがわかるだろうか。これは、「少しでも息苦しさを感じたら、窓を開けて換気をし、空気が十分に入れ替わったと感じたら再び窓を閉める」という動作パターンを繰り返した結果である。
はじめは600ppm前後だったCO2濃度が、一度500ppm強まで下がり、次いで750ppm前後まで上昇し、600ppm以下まで下がり、再び900ppmまで上がり、最後に600ppm前後まで下降している。
その後、薄く窓を開けたまま運転した15時10分頃から16時10分頃までは、緩やかにCO2濃度が下がり続けている。つまり、車の窓の開閉と、車内のCO2濃度は完全に連動している。当たり前と言えば当たり前だが、窓の開閉で換気をすることの重要性がよくわかる結果と言えるだろう。
その後16時10分頃から16時30分頃までは、某牛丼チェーンの駐車場に車を停めて、かなり遅めの昼食をとった。もちろん、エンジンは完全に停止していた。
注目したいのは、駐車場に車を停めていて、車内に誰も人がいない状態でも、CO2濃度が緩やかに上昇している点だ。その間、当然窓は締め切っていたが、車内に人は誰もいなかった。誰もCO2を呼気として吐き出していないのに、なぜCO2濃度が上がるのだろう。
適切に換気していた影響で、CO2濃度が低めにキープされていた車内に、自然とCO2が流れ込んできたと捉えるべきか、停車しているあいだ、エンジンルームなどからCO2がわずかに車内に流れ込んでくるのか……化学や工学に詳しくない私にはその真相はわからないが、ともかく、窓を締め切った状態では、たとえ人がいなくても、またエンジンがかかっていなくても、CO2濃度が上昇することもあるというのは事実だ。
せっかくなので、湿度と気温のグラフも見てみよう。上の画像の黄色が湿度、青が気温を示している。
湿度はCO2濃度の動きとよく似ており、換気をして新鮮な空気が取り込まれるたびに、下がる傾向にあるようだ。確かに、複数人で車に乗っていると、呼気に含まれる水分の影響で、モヤっとした空気を感じることがある。湿度管理の意味でも、換気は重要だ。
面白いのは気温の変化だ。15時10分頃に少し暑さを感じたので、エアコンをの風量をオートモードにして25度の設定温度で運転を開始した。そこから牛丼屋の駐車場に車を停めるまでの1時間近くをかけて、緩やかに設定温度まで気温が下がっていることがわかる。
車のエアコンの気温調整性能がかなり正確であるとも言えるし、設定温度まで下がるには、ある程度の時間を要するとも言えるだろう。そして駐車場に車を止めているあいだ、湿度、気温ともに、やはり緩やかに上昇している。いずれにしても言えるのは、車内では、CO2の濃度だけでなく、気温、湿度ともに刻々と変化しているということだ。
適切な換気の重要さを、視覚で知る面白さ
LTE-M CO2センサー RS-LTECO2を車載化することで、これまで肌で感じていただけだった車内の空気の状態が可視化され、想定していた通りに、あるいは想定以上に、激しく変化していることを知った。車内の空気の状態は、密閉空間である分、窓の開閉の状況やエアコンの運転の有無がきっちりと反映される。
おそらくこれまで「なんとなく空気が薄くて、頭がぼーっとするかな」と感じていたときは、実際にCO2が過多になっていたのだと思うし、「すこしジメジメしてきたな」と感じていたときは、湿度が激しく上昇していたのだと思う。運転中のいいコンディションを保つためにも、家族の健康状態を心がける意味でも、適切な換気や空調の管理が重要であると改めて認識した。
また、見えなかったものが見えるようになる面白さも、改めて強く感じられた。次はどの空間の空気を可視化してみようか。
(提供:ソラコム)
週刊アスキーの最新情報を購読しよう