世界の最初期のコンピューターでもゲームは動いていた
世界最初のコンピューターの1つ、EDSAC(エドサックと読む=1946年のENIACが先だがストアドプログラム方式を採用した現在のコンピューターの祖先としては英国ケンブリッジ大学で1949年に動いたこれになる)でも、ディスプレイ画面で「noughts and crosses」(3並べゲーム)が動いてる。
日本の大学で開発されたコンピューターというと1958年に稼働した東大のPC-1がある(パラメトロン式コンピューター=8月10日発売の『週刊少年ジャンプ』に掲載された「Dr.STONE」には日本独自の論理素子パラメトロンが登場して業界を驚かせたが)。これに関わられた和田英一さんに「ゲームはやらなかったのですか?」とあるとき聞いたら、「nim(三山崩し)はやりましたね」と言われた。
三並べゲームも三山崩しもコンピューターの動作を試すために作られたような感じかもしれないが、開発者たちに「ちょっと遊ばせてもらいたい」という気分があったんじゃないか? コンピューターとゲームは、とても相性がいいと思う。
日本最初の家庭用ゲーム機「テレビテニス」は意外にも燃える!
家庭用ゲーム機で世界最初に発売されたのは、1972年の米マグナボックス社の「Odyssey」だが、日本最初のゲーム機は、1975年のエポック社「テレビテニス」だ。エポック社は、1977年にはカートリッジ式家庭用ゲーム機「カセットビジョン」を発売。初期の日本の家庭用ゲーム機をリードした。
Odysseyは、カートリッジ式の回路モジュールを差し替えることでブラウン管の表示を歪ませて複数のゲームが遊べるようになっていた。ドイツ生まれの天才発明家ラルフ・ベアによるものだが、オデッセイの発売元マグナボックス社の技術協力のもと「テレビテニス」は作られたものだそうだ。
ちなみに、任天堂の「カラーテレビゲーム15」(ゲームをダイヤル式で切り替える方式)が1977年。「ファミリーコンピューター」の発売は、テレビテニスの8年後の1983年の発売だ。
私は、たまたま自分が持っていた「野球盤」(エポック社が1958年から発売している超定番オモチャ)がとても生産台数の少ないモデルで、あるときエポック社の広報さんに「譲ってほしい」と言われた。そのときに、物々交換式にいただいたのが「テレビテニス」だった。
テレビテニスが発売されたのは、1975年。その後、テレビゲームに使えるチップが出回りはじめると電子機器を作る会社なら誰でもテニスゲームなどは作れるようになる。しかし、1975年というのは、かなり早いといえる。野球盤を売りまくったエポック社には、スポーツゲームを電子化したいという発想があったのだと思う(個人的には同社の「バスケット」も大好きだが)。
テレビテニスの発売価格は、1万9500円。玩具としては安くはないが、家庭用ゲーム機として買い頃なお値段を模索した結果だと思われる。そのためか、Odysseyのようにカートリッジ式回路モジュールを差し替えてゲームを変えることも、ダイヤルでソフトを切り替えるしくみにもなっていなかった。
ところが、このゲーム機、本体には「Epoc's Electric Game Series ELECTROTENNIS」と書かれているのに、なんと「ピンポン」、「テニス」、「サッカー」が遊べるようになっていた! カートリッジ式の回路モジュールでも、ダイヤルでもなく、どうやって3種類のゲームを遊んだのか? これがなんとも、遊びの原点といえる感じのする工夫で楽しいのだ。
今回の「デジタルdeガジェット」では、そんな、日本最初の家庭用ゲーム機であるエポック社の「テレビテニス」を作る。テレビテニスの魅力を語りながらプチプチ組み立てるようすをご覧あれ。
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遠藤諭(えんどうさとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。
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