あなたが劣っているのではなく、映えない写真は投稿されていないだけ
Instagramで若者が自殺願望や体型コンプレックスに陥る可能性?
2021年09月28日 09時00分更新
インスタを見て落ち込む若者
大学生に聞いたところ、「Instagramを見て落ち込んだことがある」という学生が何人もいた。「みんなキラキラしているのに自分だけ……と落ち込んだ 」「みんな恋人や友だちに囲まれて、楽しそうで羨ましいと感じた」「見ていると落ち込むから見なくなった時期がある」――このような声に共感する人も多いのではないか。Instagramの真実と向き合い方について考えていこう。
自殺願望や体型コンプレックスにつながる?
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)2021年9月14日の報道が注目を集めている。Facebook社の研究者たちが過去3年間調査したところ、Instagramは若者、特に10代女子のかなり大部分に対して有害であると明らかになっていたというのだ。
この「ティーン・メンタルヘルス・ディープ・ダイブ」という社内調査が流出したことで米国では議員等が非難、Facebook社に対して新たな調査が実施されるとの発表があった。
件の調査によると、10代女子の32%が、Instagramによって体型コンプレックスを悪化させ、同時に10代ユーザーはInstagramによって不安になったり落ち込んだりする頻度も増えているとのこと。さらに10代ユーザーのうち、米国では約6%、英国では約13%が、Instagramが原因で自殺願望につながっているという。
なお、Instagramユーザーの40%以上が22歳以下であり、年間売上高が1000億ドル(約11兆円)に上るFacebook社にとって若者の存在はとても大きい。
Instagramの投稿は真実ではない
Instagramを見ていると、みんなが幸せそうで、良い生活をしているように見える。それに比べて自分だけ……と落ち込む人は少なくない。
けれど、Instagramはキラキラしたリア充写真、いわゆるインスタ映えする写真を投稿する場のため、そのような写真が多くなっているだけだ。日常生活や映えないことは投稿していないだけなのだ。周囲の友だちとコミュニケーションをとることで、決して自分が特別ではないこと、落ち込む必要はないことに気づけるのではないだろうか。
また、Instagramでは自撮り写真が多く投稿されている。ほっそりしたきれいな自撮り写真が目立つが、こちらもインスタ映えするように加工されたものも多い。つまり、それを見て落ち込む必要はまったくないのだ。
かつて体型コンプレックスを抱いていたというフィンランド人女性サラ・バトー(@saggysara)は、Instagramに「リアル」と「Instagram」を比較した写真を投稿している。Instagram写真はポーズや加工などで手が加えられていること、我々はそのままでよいということが伝わる写真が多いので、ぜひ見てほしい。
Instagramは日本でも若者の間で広く人気になっており、コミュニケーションのメインツールとなっている。しかし、Instagramに投稿されたものがすべて真実ととらえてしまうと、メンタルヘルスを悪化させることがある。周囲の大人は、10代の子どもたちが利用する場合は、適切な向き合い方についてアドバイスしてあげてほしい。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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