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アップル、iPhone 13シリーズにTouch ID、USB-Cを採用しなかった理由【石川 温】

2021年09月17日 10時30分更新

Lightningケーブル周辺に広がる巨大なエコシステム

 Lightningケーブルか、それともUSB-Cケーブルか、という問題については、アップルとしてはLightningケーブルのままで十分という判断をしていそうだ。

 そもそも、Lightningケーブルでもそこそこ高速で充電ができる。表裏関係なく、何も考えずにケーブルを挿入して充電ができる。「別にUSB-Cじゃなくてもいいじゃん」というのがアップルのスタンスなのではないか。

 USB−Cに変えたくても、すでに世界中には何億というLightningケーブル対応のiPhoneが出回っている。それに対して、サードパーティも充電ケーブルなどを販売している。Lightningケーブル周辺は巨大なエコシステムが広がっているのだ。

 アップルが懸念しているとすれば、充電における安全性ではないか。ちょっと前まで、一部の国では「充電していたらスマホが燃えた。爆発した」なんてニュースが続出していた。粗悪なバッテリーや充電器などを使うことで、事故が多発していたのだ。事故が起きれば、充電器が悪くても、スマホのメーカーが悪者にされてしまいがちだ。

 アップルとしては粗悪品での充電はできるだけ避けたいというのが本心だろう。

  

 サードパーティがLightningケーブルを作り、販売するにはアップルの認証が必要となる。アップルが認証した製品に対してはMFi(Made For iPhone/iPad/iPod)というロゴがつけられることになる。アップルの認証を受けていると言うことで、製品に対して安全に充電することが可能となる。ユーザーを充電時のトラブルから守るという意味で、iPhoneでLightningケーブルが使われ続けているのではないか。

 もちろん、MFi認証を取得するには、メーカーがアップルにライセンス料を払う必要がある。世界中で売られるMFi機器からのライセンス収入のことを考えると、アップルが意地でもUSB-Cにしたくないと考えるのが自然だ。

 一方で、iPadはUSB-Cになりつつある。

 タブレット市場では価格競争になりがちだ。iPad miniは価格競争から逃げようと、高機能化に舵を切った。コネクタ部分もLightningからUSB-Cに切り替わった。USB-Cに変えることで、デジタルカメラや他の周辺機器との接続性が向上する。アップルとしてはiPadをパソコンに代わるデバイスに位置づけたいため、iPad miniでもUSB-Cに変更したのだろう。

 

 欧州では充電端子の統一化という動きも出ている。今後、アップルがiPhoneでどのような対応するか、見ものといえそうだ。

 

筆者紹介――石川 温

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)、『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

 

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