2021年8月31日、Sansanは2022年1月に施行予定の改正・電子帳簿保存法に関するメディア勉強会を開催した。勉強会では改正・電子帳簿保存法に関する認知度調査結果が共有されたほか、同社の「Bill One」を活用した改正・電子帳簿保存法への対応に関しても説明された。
2022年に行なわれる電帳法改正を僕たちはまだ知らない
2022年1月に電子帳簿保存法(電帳法)が改正され、請求書に関する業務は大きな転換期を迎える。電子帳簿保存法は帳簿書類を電子データで保存することを認めるもので、1998年7月に施行されたもの。その後、「e-文書法」や2015年と2016年の電帳法改正を経て、3万円以上の取引に関する書類にも対応したり、デジカメやスマホで撮影してもOKになるなど、いろいろな要件が緩和されてきた。
Sansanの「電子帳簿保存法に関する意識調査」では「あなたは、電子帳簿保存法が2022年1月に改正されることを知っていますか」というという問いに「改正内容まで理解している」と答えたのはたった8.8%にとどまった。「知ってはいるが内容は理解していない」でも18.8%。72.4%は「知らない」という回答だった。
「現在、あなたの務めている企業は、2022年1月の改正電子帳簿保存法に向けて対応を行っていますか」という問いには「対応している」が17.8%、「対応に動いている」企業が42.8%と合計すれば半数は超えていた。約4割が動いていない、もしくはわからない、というのは不安なところだ。
電帳法改正の規制は「緩和」だけではない
2022年1月の改正では規制の緩和と強化が同時に行なわれる。実はこの「強化」が問題で、多数の企業に影響を与える内容となっている。
これまで、紙で郵送されてきた請求書は、税務署に申請すれば電子保存がOKだったが、改正電帳法では申請が不要になる。紙でも電子でも好きな方式で保存してOKということだ。その代わり、メールなどで電子データとして送られて来た請求書は、電子で保存することが必須となる。現状、電子データの請求書を印刷し、紙の請求書と共に一元管理している企業は多い。これまでは電子保存が原則で、印刷して紙での保存も容認されていたのだが、NGとなると影響が大きい。
しかし、Sansanによると現状の理解度は10%以下にとどまっているそう。SansanのBill One Unit プロダクトマーケティングマネージャー公認会計士 柴野亮氏は、「請求書業務に携わる1000名に対してアンケートを行ないました。その結果、請求書をすべて紙で受け取っているのは約4割。紙とPDFというような電子形式の請求書を混在して受け取っている人が54.7%と半数以上いました」と語る。
「あなたが受け取る請求書の形式について、下記のうちどれが一番近いですか」という問いで、「すべてが紙の請求書」が39.9%、「すべてがPDFなど電子形式の請求書」が5.4%となり、過半数の54.7%が「紙の請求書、PDFなど電子形式の請求書が混在」だった。
また、「取引先からあなたが受け取る請求書を、すべて紙形式で受領するように統一することは可能ですか」という質問には「はい」が40.8%。確かに、紙に統一できるなら、紙での請求書管理が可能になる。今のところ、取引先に請求書を郵送しろというのは無茶ぶりというほどではないということだろう。ちょっと心配になる調査結果と言える。「取引先からあなたが受け取る請求書を、すべて電子データ形式で受領するように統一することは可能ですか」という問いでは「はい」が30.3%。紙より割合が低いのが、紙文化の日本っぽいところだ。
どちらにせよ、相手企業にどちらかを押し付けるのはよろしくない。先方の好きなようにさせて、受領側はクラウド請求書受領サービスを利用し、すべて電子で管理するのがスマートだろう。
電帳法で定義される電子保存の要件とは?
電子で保存するといっても、適当にデジタル化すればいいわけではない。電帳法では請求書の電子保存に求められる要件を定義されているのだ。要件は2つあり、1つ目が「真実性の確保」。
国税庁の一問一答では、4つの措置が認められている。送付企業からタイムスタンプ付で請求書を送ってもらうか、自分たちで受け取ったらすぐタイムスタンプを付与する。もしくは訂正削除ができないシステムを導入するか、訂正削除の防止に関する事務処理規程を企業自身で備え付けなければいけない。
「タイムスタンプは非常に実装するのが難しいです。タイムスタンプを発行できる企業は認定を受けており、実際はその企業からタイムスタンプを購入し、システム連携をしなければなりません。請求書を出す企業に『すいませんタイムスタンプ付で請求書を発行して下さい』というお願いはしづらいです」(柴野氏)
2つ目が「可視性の確保」だ。可読性に関しては、解像度を確保して読めればよい。問題は検索機能の確保だ。取引年月日や金額、会社名で検索できなければならないのだ。
たとえば、自社でこの真実性と可視性を確保しようとすると、ファイル名を検索性の要件を満たすように、「20210831_(株)トゥールビヨン_176,000」などと付ける必要がある。ファイル名を別ルールで付けるなら、索引簿を用意してもいい。その上で、取引相手先や各月などのフォルダに保存し、事務処理規程を作成して備え付ける必要がある。
電子データの請求書を電子保存しなければならないので新たな管理工数が発生する。そして、一元管理したいなら、紙に集約することが無理なので電子で対応するしかない。一元管理せずに、紙と電子データを別々に管理する場合、請求書業務の運用が複雑化し、ミスや混乱が起きる原因となってしまう。
Sansanの技術力を活かしたクラウド請求書受領サービス「Bill One」
これらの課題をまるっと解決してくれるのが、Sansanが手がけるクラウド請求書受領サービス「Bill One」だ。
「国税庁が出している規定を自社だけで対応しようとすると新たな工数を生みますし、業務をより複雑にしてしまいます。クラウド請求書受領サービスを活用して、手間なく電帳法に対応する企業が増えてきています」と語るのはSansan 執行役員/Bill One Unitゼネラルマネージャー 大西勝也氏。クラウド請求書受領サービスのBill Oneの説明を行なってくれた。
クラウド請求書受領サービスとは、請求書の発行企業と受領企業の間に位置するサービスのこと。発行企業から請求書を代理受領してデータ化し、受領先企業に渡す。受領企業は請求書をクラウド上で一元管理できるようになる。さらに、クラウド請求書受領サービスを使うことで、真実性と可視性の両方を確保できるのが特徴だ。
Bill Oneは2020年5月にリリースされ、クラウド名刺サービス「Sansan」として培ったアナログ情報をデジタル化する技術を活用し、請求書情報の電子化を行なっている。2021年5月時点で239社、来年5月には1000社の導入を目指しているという。
「クラウド請求書受領サービスに必要な要件は3つあります。1つ目はあらゆる請求書を正確にデータ化できること。2つ目が取引先に負担をかけないこと。3つ目が請求書処理のスピードをあげること」(大西氏)
「Bill One」ではAIと人力をかけあわせてあらゆる請求書を99.9%の精度でデータ化する。メールであればBill One専用のメールアドレスに送付先を変更、郵送であれば「Bill One」センターに送り先を変更してもらえばいい。もちろん、請求書の様式などは従来のままでOKだ。さらに、請求書が届いたら、すぐに受領側の経理がクラウド上で確認することができる。紙の請求書のデータ化に関しても、数時間で電子化できるスピード感がウリだ。
とは言え、中小企業ではITシステムの導入が予算的に難しい。そこでBill Oneは100名以下の企業向けにスモールビジネスプランを用意。なんと無料で利用できるようにしたのだ。無料で索引簿を作成でき、CSV出力もできるので、工数なしで改正電帳法に対応できるのはありがたいところだ。
「私たちは、今回の改正を機会ととらえ、様々な企業の働き方をテクノロジーの力でよりよいものにしたいと強く思っています。そのためには、認知度が低い改正電帳法をしっかり浸透させ、当社が率先して新しい働き方実現を先導していきたいと思っています」と大西氏は締めた。
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