家族で使うリビングパソコンにも最適、気になる温度もチェック
超小型PCでテレワークやリモート学習が快適、パワーアップした最新「Ryzen 5000G」搭載「Radiant SPX2800X300A」の性能をチェック
サイコムが販売する、コンパクトサイズが魅力の「Radiant SPX2800X300A」(関連記事)が、Ryzen 5000Gシリーズの採用でさらにパワーアップ。ビデオカードは搭載できないとはいえ、ノートパソコンを遥かに凌駕し、タワー型マシンに迫る性能を発揮できるというのがメリットだ。
家族で使えるパソコンがほしいけれどタワー型は反対されている、高性能パソコンがほしくても置き場所がない、といった人にピッタリなモデルといえるだろう。
今回、APU(AMDのグラフィック内蔵CPU)に最上位となるRyzen 7 5700G(8コア/16スレッド)を搭載したモデルが借りられたので、この構成における性能を定番ベンチマークで探っていこう。
試用機の主なスペック | |
---|---|
CPU | Ryzen 5700G(3.8GHz~最大4.6GHz)、8コア/16スレッド |
CPUクーラー | Noctua NH-L9a-AM4 |
グラフィックス | Radeon グラフィックス |
メモリー | 16GB[8GB*2枚] DDR4-3200 SO-DIMM Dual Channel |
ストレージ | Crucial CT480BX500SSD1 [SSD 480GB] |
内蔵ドライブ | ー |
通信規格 | 有線LAN(1000BASE-T) |
インターフェース | USB 3.1(Type-C)、USB 3.1×2、USB 2.0、マイク入力、ヘッドフォン出力、DisplayPort出力、HDMI出力、D-SUB 15ピン、有線LAN端子 |
サイズ | およそ幅80×奥行155×高さ155mm |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
CPU性能は文句なしにハイエンド! 多くの用途で快適に
まずは、Radiant SPX2800X300Aのもっとも気になるCPU性能から。前回も紹介したが、「CINEBENCH R23」を試した結果を再度掲載しよう。このベンチマークソフトは、CGレンダリング速度からCPUの性能を計測、独自のptsという単位でスコア表示してくれるもの。CGレンダリングはマルチスレッド処理に向いた用途となるため、CPUの最大性能を調べるのに向いている。
結果はみてのとおり非常に高いスコアとなっており、インテルのCPUでいえば、Core i7-11700K相当(Multi Coreが13400pts、Single Coreが1584pts)となっていた。
また、1世代前のハイエンドとなるRyzen 7 PRO 4750Gを検証した際のスコアは、Multi Coreが11472ptsで、Single Coreが1293ptsだ。とくに注目してほしいのが、Single Coreのスコア。Zen2世代となるこのAPUではインテルに大きく差をつけられてしまっているが、Zen3となったRyzen 7 5700Gなら、若干負けているとはいえ、肉薄していることが分かる。
一般用途ではマルチスレッド性能の恩恵が少ないが、シングルスレッド性能は、どんな用途でも性能に大きく影響してくる。それだけに、このシングルスレッド性能の上昇はうれしいポイントだ。
続いて、Radiant SPX2800X300Aの総合性能を「PCMark 10」でチェックしよう。このベンチマークソフトは総合スコアだけでなく、アプリの起動時間やビデオ会議といった用途の「Essentials」、表計算やワープロといったオフィスソフトを使った「Productivity」、動画や写真編集、CGレンダリングなどをあつかう「Digital Content Creation」という3つのスコアも計測してくれるものだ。
総合スコアは6740で、ビデオカードを搭載しないパソコンとしては高め。ノートパソコンだとハイエンドモデルでも5000台となるだけに、小型とはいえ、デスクトップパソコンの実力の高さがよくわかる。
各スコアに注目してみると、Essentials、Productivityが高く、やはりCPU性能の高さが大きく出ていることは明白だ。逆に2つの高スコアと比べて少々見劣りしているのが、Digital Content Creation。ほかの2つと比べるとスコアが振るわない印象となってしまった。
とはいっても、これの原因はあくまでビデオカードを搭載していないためだ。ビデオカードを搭載せずに7000を超えるのは、むしろ、かなり高性能な部類に入る。
軽量ゲームなら十分遊べるグラフィックス性能
グラフィックス性能は、定番ベンチマークとなる「3DMark」と、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下、FF XIVベンチ)の2つを見ていこう。
「3DMark」はAPIや解像度などの違いにより、複数のテストが用意されているが、まずはデフォルトとなる「Time Spy」から。DirectX 12を使ったもので、解像度は2560×1440(WQHD)となる。比較的重ためなゲームを想定したもいのだ。
重たいテストなので、スコアは低め。グラフィックのスコアを個別にみても、足を引っ張っているのが分かる。いくらCPU性能が高くても、重量級ゲームはこのグラフィック性能には荷が重い。
DirectX 11を使用した軽量な「Fire Strike」など、ほかのテストの結果はまとめておくので、性能比較の参考にしてほしい。
より実ゲームに近いベンチマークとして、「FFXIVベンチ」も試していこう。画質はプリセットから「最高品質」、解像度は1920×1080ドット(フルHD)としている。
結果はみてのとおりで、無理をすれば遊べなくはないものの、ガクガクした画面でストレスを溜めてまでこの設定にこだわる理由はない。FFXIVは比較的軽めなゲームとなるが、フルHDの解像度、最高設定で快適に遊ぶには、少し性能が足りていないようだ。
試しに解像度を1280×720ドット(HD)へと落とした場合もチェックしてみた。結果は、HD解像度であれば、内蔵グラフィックでも十分遊べるように。画面は多少粗くなってしまうが、それでもHDだ。文字が潰れるといたゲーム進行に影響する変化はないため、たまにゲームで遊びたいという人であれば満足できるだろう。
温度は高くなりがちだが、騒音はそこまで大きくない
今回試した構成では、CPUクーラーにNoctuaの「NH-L9a」が搭載されており、騒音も比較的抑えめとなっているのが特徴だ。もちろん、抑えめといっても高負荷時……とくにCINEBENCH R23実行中はかなりファンの回転数も上がり、それなりの駆動音となる。
といっても、一般的なタワー型パソコンと比べてもそこまでうるさいわけでもなく、確かに騒音は聞こえるけれど、エアコンをつけていればわからない程度。妙な高音で鳴り響くことも、頻繁に回転数が変わって音が変化するといったこともないので、日中であれば、まず気にならないだろう。
騒音が抑えられているとなると、冷却性能が低いのではないかと少々心配になってくる。そこで、CINEBENCH R23のマルチスレッドテスト中のCPU温度と、動作クロックの変化をチェックしてみた。
テスト時間は、約10分間。このときの温度と動作クロックを「HWiNFO」を使って取得し、グラフ化したのが次の図だ。なお、動作クロックは全コアの平均となっている。
CPUの温度は80度半ばまでは急速に上がるものの、そこから動きが鈍化。4分ほどで90度を突破したあとも少しずつ上昇を続け、最終的には95度前後となっていた。
Ryzen 7 5700Gの詳細をみてみると、最大温度が95度。つまり、これ以上温度が上がるようなら、動作クロックが低下していくことになる。
まだ飽和しきっていないようにもみえるが、CPU温度が95度に達していること、動作クロックの変化がわずかだということを考慮すると、4.1GHzから大きく下がることはなさそうだ。
上限ギリギリの温度になっているとはいえ、それでも4GHz以上の動作をキープ。物理的な制限から搭載できるクーラーが限られている小型PCとしては、かなり優秀な結果といえるだろう。
テレワークやリモート学習用のPCを探している人に
小型といってもデスクトップパソコンなので、利用するにはディスプレーが別途必要になるし、キーボードやマウスなどを置くスペースも必要となる。手軽さではノート型のほうが上だが、性能の高さでは上回る。また、移動して使うことはできないものの、テレワークやリモート学習のようにしっかりと腰を据えて使うのが前提であれば、問題ない。
感染症の影響もあり、自宅でパソコンが必要となるシーンはまだ続くだろう。パソコンの台数が少ないと利用したい時間帯が被ってしまい、マシンを家族で取り合うことにもなりかねない。自由に使える高性能パソコンが増えれば、こういった問題を未然に防げるだけに、パソコン不足で悩んでいる人にこそRadiant SPX2800X300Aをオススメしたい。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう