週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

自動運転の基礎 その29

自動運転のセンサー、新世代の4Dイメージングレーダーへの期待

2021年07月03日 12時00分更新

自動運転のセンサーにニューカマー
はたしてその実力は?

 自動運転のレベルを高めていくときに必須となるのが優れたセンサーだ。これまで実用化され、利用されていたのが「レーダー」「カメラ」「ソナー」、そして「ライダー」だ。「レーダー」は電波で、カメラは「可視光」、ソナーは「音波」、そして「ライダー」は赤外線を使っていた。それぞれのセンサーは、得手不得手があり、それを組み合わせることでクルマの周囲の認識度を高めてきたのだ。

コンチネンタルの「アドバンスト・レーダー・センサーARS540」に、ザイリンク社のZynq UltraScale+MPSoCプラットフォームを搭載する4Dイメージングレーダー

 そんなセンサーに期待の新顔が加わった。それがコンチネンタルの4Dイメージングレーダーだ。これは文字通り、電波を使うレーダーなのだが、4Dというところがポイントになる。従来のレーダーは「距離」「速度(ドップラー)」「方位角(水平方向)」の3つを識別していた。それに対して、4Dイメージングレーダーは、これまでの3つだけでなく、「高度(上下方向)」をプラスしたのだ。

 これにより、レーダーであっても対象物の形を認識することが可能となった。そもそもレーダーは、天候に左右されない、遠距離まで識別できる、低コストといった利点を持っていた。一方で対象物の詳細な形を識別するのが苦手だ。

 しかし、4Dイメージングレーダーであれば、左右だけでなく上下方向も高い解像度で認識できる。ガードレールをバックにした遠い場所にあるクルマや、橋梁の下にあるクルマたちまでも認識する。道路わきにある縁石だけでなく、道に面した土手の斜面までわかる。

 また、路面にある落下物や路面の穴まで認識可能だ。さらに驚くのは、道路の上をわたる橋のその奥行までわかるという。そして検知範囲は300mにも及ぶのだ。

 ちなみに、これまでこうした周囲のクルマやインフラなどを詳細にセンシングする役割は、ライダーに期待されていた。しかし、ライダーは自動車センサーとして新しい製品であり、低コスト化が難航していたのだ。一方で、レーダーはすでに普及しており、低コスト化が進んでいる。しかし、物体の上下方向の形がうまく認識できなかった。そんなところに登場したのが4Dイメージングレーダーというわけだ。

 どこかの小さなベンチャーではなく、メガサプライヤーであるコンチネンタルが開発したことも重要だ。つまり、まだまだ普及の進んでいないライダーの代わりに4Dイメージングレーダーが自動運転用センサーの主役になる可能性が生まれたのだ。

 しかし、コンチネンタルは「自動運転レベル3以上では、ライダーと4Dイメージングレーダーを同時に使うだろう」と慎重だ。実際にライダーを開発するベンチャーへの出資や共同研究も並行している。

 とはいえ、そんなコンチネンタルの4Dイメージングレーダーは、自動車メーカーのお眼鏡にかなったようで、近く量産モデルに搭載されるという。ドイツでは2021~2023年の間にレベル2もしくは3用として、アメリカでは2024年にレベル2+用として登場する。

 はたしてライダーが自動運転センサーの主役となるのか、それとも4Dイメージングレーダーがとって代わるのか。もしくは両者が共存するのか。この先の動きに注目しよう。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事