週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ナチュラルでストレスフリーの快楽! HondaのコンパクトSUV「VEZEL」は圧倒的完成度だ

2021年06月13日 15時00分更新

土砂降りの雨がレビューには絶好のコンディション?

取材時の交差点の様子。雨が強く降り、路面が鏡のように水が浮いているのがわかると思う

 取材日当日はドカ雨という言葉が相応しいほどの豪雨。前走車の水煙で前が見えない状態で、普通なら雨が止むまでコンビニで雨宿りするところ。ですが試乗時間は限られているので、雨天決行するしかありません。既に乗る前から心が完全に折れた私は、VEZELに申し訳ないのですが、マイナス状態からe:HEV搭載の四輪駆動車仕様のステアリングを握ることになりました。

e:HEVの走行モードは3種類。主にNOMALモードで走行し、SPORTも試したが、アクセルレスポンスが向上する以外、モーター出力が上がるといったことはないようだ

 機嫌が悪いと、重箱の隅をつつきたくなるイジワルモードになってしまうのが人の性。走り始めてエンジン動作音が、同系統のエンジンを搭載するFITより大きい事が気になってしまいました。おそらく車体が大きいから、よりモーターの出力を必要として、エンジンを回して発電しなければならないのかもしれません。そして遅いクルマではないのですが、エンジン音の割にはガツンと来ないなぁ、もっとガツンと来てほしいと思った次第。これはSPORTモードに切り替えても同じ。とはいえ普段私は愛車のS660は常時4000回転以上、愛馬CBR250RRに至っては1万1000回転までキッチリ回すような走りをする人間が言うことですので、話半分に思っていただければと。

 さらに今回、原稿を書いているうちに、ドカ雨の中を独りずぶ濡れになりながら一人で撮影取材したことに対する腹立たしさが蘇ってきたので、さらに半分の話四分の一で。普通に走る分には、不満を抱くことはありません。私も普段ならこんな事は感じないかも。

Honda/VEZEL e:HEV

 と、冒頭にネガティブな事を書いたのは、ほかの部分が良すぎるから。つまり、この後に並ぶのは絶賛の嵐です。ですが、決して「提灯記事」や「Honda車に乗っているから贔屓している」わけではありません。もちろんHondaからお金を貰っているわけでもありません。イイから褒めたくなるのだから仕方がないこと。許してください。

 では何が良いのか。まずはハイブリッドの制御技術がイイのです。ハイブリッド車の場合、回生ブレーキ制御や、エンジン動作タイミングなどで生理的に引っかかる部分があったりするのですが、VEZELは実にナチュラルかつシームレス! 特にブレーキが素晴らしい! この手の制御技術は、10年近く前からモータードライブ一筋で頑張っている日産が最も進んでいると思っていたのですが、完全にHondaが追い抜いたと声を大にして言いたくなるほど。ブレーキを積極的に使って減速したくなります。エンジンとモーター駆動の切り替えているポイントも、まったくもってわかりません。こんな体験、初めてです。

 さらに試乗車は四輪駆動モデルなのですが、どこかFRのように感じることが。つまりコーナーリング時が四駆特有の動き方ではないですし、加速時も前に引っ張られる感より背中から押されている感が強いというか、要するに後輪の駆動配分が高い模様。自然なフィーリングで、これは走っていて気持ちがイイ”! これにパワーが付いてくれば言う事なし!

Honda/VEZEL e:HEV

 その上、電子制御の介入も自然で、というより制御されている感覚がまるでワカラナイ。ドカ雨の中、結構な勢いで峠道を走ったりしたのですが、他社でしたらブレーキをつまんだとか気づくところ、VEZELではまったくわかりませんでした。試しに横滑り防止をオフにしたりして同じ勢いで走ろうとすると、結構怖い思いをしたので、電子制御が働いているのは確か。これまた凄い!

タイヤはミシュランを採用

 まず制御技術レベルの高さと走りの良さについて褒めましたが、まだまだ続きます。乗り味が先代VEZELと大違いで、一言で言って最高! 前作はどこかゴツゴツした硬い乗り味という印象だったのですが、これが一転して実にマイルド。地に足がしっかりついた、芯のある、それでいて柔らかな弾性を感じさせる上質感。シャシー剛性も上がっているそうで、シッカリ感も文句ナシ。さらにタイヤはミシュランを採用! ミシュランのタイヤはホントに乗り心地とグリップがイイんですよ。Honda eのAdvanceグレードも抜群の足の良さで、履いているタイヤがミシュランだったなぁ……。ミシュランとホンダのコラボは現代最高の組み合わせ、と言わせて頂きたいと思います。

 とにもかくにも、VEZELの乗り心地、乗り味を超えるコンパクトSUVを私は知らないのです。だから褒めるしかありません。何に似ているかといえばModulo Xになるのですが、あちらはスポーツテイストですので、よりマイルドにした印象。Hondaにとってもブレイクスルーといっても過言ではない乗り味の良さで、まるでアルファ・ロメオやアルピナのような味付け。サスペンションの美味しい部分を上手く使っているという形容がピッタリ、と言ったら大げさかしら? とにかくそういいたくなるほどイイ! Hondaさん、今後もこの方向でお願いします。

 ですから、ドカ雨の中で走っていても制御技術と相まって前方視界が悪いという事以外、恐怖感が少ないのです。Modulo Xに乗る度に、ホンダアクセスの担当者に「最初からコレで売ってよ!」と言っていた筆者としては、ようやく実現したのかとうれしくなります。逆にホンダアクセスがVEZEL Modulo Xを作るとしたら、これを超える足にしないとダメというわけで、このハードルは相当高いなと老婆心ながら心配してしまいました。でも出たら面白そう。

エンジン仕様のVEZEL

 もう1台、ガソリンエンジンモデルも試乗しました。こちらは、スペック通りちょっと出足が鈍いかなという印象。乗り味というか質感も少し硬めの印象。一方でフロントの荷重が少ないためか、ノーズの入り方はよりシャープになった感もあります。悪いクルマではないのですが、購入者の9割がe:HEVを選んでいるのも納得しました。先代はTOURINGという1.5リットルのVTECターボエンジンモデルを用意していたので、VEZEL TOURINGとしてラインアップに加わったらイイナと思ったり。ですので、VEZEL TOURING Modulo Xというモデルが出たら、走りも乗り心地も使い勝手も、環境性能を除きすべてが五つ星のSUVになりそう。もはや何の原稿かワカラナイですが、とにかくそんな想像をしてしまうほど、新型VEZELの完成度が恐ろしく高いのです! 

【まとめ】コンパクトSUVの新たなベンチマークか!?
このデキで300万円はお買い得すぎる!

 VEZELのステアリングを握りながら、口から出てくる言葉は「ストレスフリー」「ナチュラル」という言葉ばかり。褒める言葉しか出てこない自分の語彙力のなさが嫌になるほどです。とにかくVEZELの走りの上質さ、クルマとしての使い勝手の良さには文句のつけどころがなく、多分目隠しをして乗っていたら、思わずドイツ御三家の名前が口から出るのでは? お世辞抜きに肩を並べるどころか、完成度の高さで上回っているとさえ思えます。それでいて300万円前後というプライス。コスパ最強で、まさにコンパクトSUVのベストバイ、新たなるベンチマークといった1台と断言します。

VEZEL(写真はエンジン仕様車)

 とにかく気に入ってしまったVEZEL。あとは雨が降っていなければ……担当編集が同席していたら……というのが心残りな部分。ですので今度は担当編集を連れて、晴れた日に再度取材したいと思います。このクルマについて、紹介しきれていない部分が数多くありますから! 

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事