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高品質オンラインイベントと課金インフラが合体

双方向オンラインイベントを身近にする「Zoom Events」が米国でサービス開始

2021年06月09日 10時00分更新

 Zoomは5月19日、米国でバーチャルイベントのプラットフォームである「Zoom Events」を発表した。現在米国でベータ版を公開している「On Zoom」サービスを発展させ、本サービスとして開始する。この新サービスの内容と、日本でのリリース予定などについて、ZVC Japanのカントリーゼネラルマネージャーである佐賀文宣氏、ソリューション エンジニア マネージャーの八木沼剛一郎氏に聞いた。

ZVC Japan カントリーゼネラルマネージャー 佐賀文宣氏

ZVC Japan ソリューション エンジニア マネージャー 八木沼剛一郎氏

企業内のビデオ会議ツールからビジネスインフラへ

 現在公開されている「On Zoom」ベータ版のサイトを見ると、オンラインイベントをはじめ、ヨガ、音楽、料理などの講座のサムネイルが並び、その中に「無料」「20ドル」などの表記がある。一見するとYouTubeの有料版のようなイメージだが、決定的な違いは、双方向のコンテンツであることだ。つまり習い事であれば、生徒を集めてオンラインで教室を開き、全員に対するレッスンと同時に、個別の指導や生徒からの質問を受けることもできる。

 単に双方向のオンラインコミュニケーションをするだけなら、これまでもZoomのサービスを使えばよかった。だがオンライン講座などの有料サービスとする場合、「参加費」「月謝」などの決済手段や講座の参加者、スケジュール管理など、主催者には講座のコンテンツ作り以外に準備しなければいけないことが山ほどある。

「Zoomは企業内でビデオ会議をするためのツールでしたが、この1年半のコロナ禍で、企業がオンラインサービスを提供する手段として使われるようになりました。ところが実際にやってみると、ただインターネットにつなげばできるというものではありません。どこで告知するかに始まり、集客や顧客を管理していく仕組みも必要でした。多くの企業がそこで苦労をしています。Zoom Eventsは、その仕組みをまるごと提供し、企業を支援していくものです」(佐賀氏)

 たとえば、有料のオンラインイベントの主催者は、申し込み後にキャンセルした人へ返金しなければいけない。その処理だけでもかなりの手間がかかるものだ。

「いつまでのキャンセルなら100%返金、当日の場合は返金できないなどのキャンセルポリシーを決めておく必要があります。こうしたことを含め、小規模な企業や個人がオンラインビジネスを考えたときに、課金や会員管理のサービスを個別に組み合わせることは非常に負担です。そこで、イベント運営に関わる手続きを一括で管理できるサービスを提供するのが、Zoom Eventsです」(八木沼氏)

小規模企業や個人でも、オンラインイベントの運営が可能に

 佐賀氏が言うように、コロナ禍で、オンラインイベントだけでなく、さまざまな会員制のサービスがオンライン中心のビジネスモデルにシフトしている。日本でも、英会話教室のGABAや家庭教師のトライなど大手のサービスでは、自社でオンライン会員の管理や課金の仕組みを持っており、そこに動画の双方向サービスのエンジンとしてZoomをインテグレートしている。

「習い事や教育の分野でもオンラインサービスが急速に広がっていますが、その品質が問題になっています。たとえば英会話教室では、音声が途切れ途切れではレッスンにならず、致命的なクレームになります。そのため、最近ではオンラインコミュニケーションのエンジンとしてZoomのプラットフォームを組み込む企業が増えています」(佐賀氏)

 大手の企業であれば、自社のシステムにZoomを組み込む開発をすることもできるが、小規模な塾、教室や個人が行うサービスの場合は難しい。そこで、決済手段をはじめ、会員の管理を1パッケージにして主催者に提供し、コンテンツの制作と運営に専念してもらおうというのが、Zoom Eventsの狙いである。参加者側からすると、高品質なZoomの動画、音声のサービスをWebブラウザから簡単に利用できるため、ストレスが少ない。

 またZoom Eventsは、企業内での利用も想定している。イベントを非公開にすれば社内限りになるため、企業の全社オンライン会議や営業会議などのインフラとして利用することができる。管理部門は、出欠の管理や統計情報などを使えるので、会議の運営が効率的になりそうだ。

 もう1つ興味深いのは、このサービスはZoomミーティング、またはZoomウェビナーの有料ライセンスを持っていれば、追加料金なしで利用できることだ。Zoom側は、このサービスで追加のアカウント料や手数料を取ることはない。このところZoomでは本サービスを含め、ユーザーへの課金よりも利用拡大に向けた取り組みを進めていると、佐賀氏は言う。

「2年前は、我々も日本で企業の有償ライセンスを増やしていくことに力を入れていました。ですが、コロナの経験を経て価値観はまったく変わりました。今は、Zoomを利用していただいているのは大企業ばかりでないいうことがわかり、有料、無料に関係なく、1億3000万人すべての人にどう使い続けてもらえるかを考えています」

米国で6月にサービス開始、日本は2022年の予定

 Zoom Eventsは米国版が6月中にリリースされる。英語版であれば日本からも利用できるが、日本語での案内文は掲載できず、課金方式はPayPalのみということで敷居が高い。日本語版の提供が待たれるところだが、ZVC Japanでは、サービスサイトの日本語化をはじめ、決済手段を日本の事情に合わせるなどの対応をして、約1年後の開始を目指している。

 八木沼氏は、「日本のいいところを世界に伝えていく基盤にしていきたいですね。Zoom Eventsを通じて日本を知ってもらい、コロナが収束したら日本に来てもらうきっかけになればいいと思います」と話す。

 佐賀氏も、「Zoomには、人間の同時通訳者による双方向のコミュニケーションが可能な機能があります。日本語で説明すれば、海外の人は同時通訳者が訳した音声のチャンネルの言語で聞くことができるので、世界へサービスを提供することができます。日本発のオンラインコミュニケーションが加速することを期待しています」と語る。

 オンラインイベントへの参加が当たり前になった時代に、Zoom Eventsは、企業の規模を問わずオンラインコミュニケーションをビジネス化できるプラットフォームとして期待される。

画面は「On Zoom」サービス(ベータ版)。これが「Zoom Events」として6月中に米国で正式リリースされる。誰でも有料の双方向オンラインイベントを開催できる、今までになかったサービスだ。

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