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就職活動を控える学生・若手ITエンジニア必見の人事担当者インタビューをお届け!

“高度IT人材”獲得について企業へ取り組みを尋ねると「日本が求めているこれからのITエンジニア像」が見えてくる

2021年06月04日 18時30分更新

グラフは2019年に経済産業省が実施した「IT人材需給に関する調査(概要)」より引用。最大で79万人のIT人材が不足する可能性があるという試算結果だ

 昨今、業態を問わず企業各社にとって重要な戦力として「高度IT人材」とも呼ばれる、ITエンジニアの獲得が重視されている。DX改革やAI・機械学習などの事業導入がこれまでにないスピードで進められているなか、高度なプログラミングスキルやデータサイエンスへの理解など、ITエンジニアの活躍が必要となるフィールドは、各社が事業領域を拡大する状況と比例するように増えている。事実、経済産業省が2019年に発表した『IT人材受給に関する調査』における試算では、2030年に最大で79万人のIT人材が不足するという結果も出ている。

 また学生時代などにプログラミングを学ぶ機会が増えていることや、eラーニングなどプログラミング言語習得におけるハードルが下がっていることから、ITエンジニア志望者の裾野が広がっていることもあり、就職や転職などにおいて応募者のスキルや志望と、各社が求める人材像のマッチングは、これまで以上に重要な採用時観点にもなっている。

 今回ASCII編集部は、日本を代表する企業各社のエンジニア職採用担当者へ、ITエンジニア人材の採用についての取材を実施。各社がどのようにITエンジニア人材獲得へ注力をしているか、求める人物像はどのような人材か、どのようなスキル・志向を持った人材が活躍できるか、など多岐にわたって回答いただいた。自身のプログラミング能力などを生かした就職機会を探しているITエンジニア職志望の方々に、是非お読みいただきたいインタビュー内容をお届けする(なお今回は各社の取り組みを取材順に掲載する)。


大日本印刷株式会社:チームと共にスキルで課題解決できるエンジニア人材を求める

 出版印刷や商業印刷物、身近な製品の包装などでおなじみのDNP(大日本印刷株式会社)だが、現在の事業領域を尋ねると、DNPは印刷と情報の強みを掛け合わせて幅広い分野に事業展開をしており、現在では事業のさまざまなところでITが活用されているという回答。印刷会社という印象からか、学生さんから「AIをどのような用途で活用しているのか」と質問されることもあるそうだが、むしろ「AIなしに、いまどうやっていくのか」という状態なのだという。

大日本印刷株式会社 人財開発部採用・キャリア育成グループ リーダーの飯田拓氏

 ITエンジニア職を志望する場合、新卒においては技術系の総合職としての採用となる。特定の分野に特化しているだけではなく、自ら描いた未来を見据えて、AIやプログラミングの知識などを活かしていきたい方を採用したいと考えているとのこと。DNPは『未来のあたりまえをつくる。』というブランドステートメントを掲げており、それに見合う人材の獲得を重要視しているのだそうだ。

 中途採用は事業で必要としている役割(ポジション)に特化しており、「これを担いたい」という人の採用。ITエンジニア職で⾔うと次の2分野において、特に優秀な⼈材を求めているという。

 ひとつは、生活者の意思のもとでパーソナルデータを預かり、預かったデータを生活者の同意を取得した上で、どの企業にどの情報を渡すか管理運用する「情報銀⾏」事業。もうひとつは、購買履歴・⾏動履歴を取得・管理・分析することで、顧客にとっての最高の体験価値を追求し、最適なコミュニケーションを実現する「デジタルマーケティング」事業だ。

 新卒・中途採用ともにITエンジニア職を志す人材へ必要とするのは、ビジネスの課題や得意先の顧客の課題、ソーシャル課題を捉え、それを解決するための論理的な思考能力。さらにデータを分析・洞察する能力も必要だという。

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部ICTセンターシステムプラットフォーム開発本部DX基盤開発部 部長の和田剛氏

 開発の現場はアジァイル開発にシフトしており、スクラムでチームとして課題を解決していこうとしている。スクラムでは全体としてデザインシンキングを活用しながら、課題の本質を共有するという考え方をする。技術系の面接官も担当する和田氏は「だからこそプログラマーであっても言われたことをやるだけなのではなく、チームと一緒になって、自分の得意分野であるプログラミングによって課題解決していくことが大事」だと語った。

 DNPは、非常に大きな事業フィールドを持っている会社。国と一緒にやっている仕事もある一方で、小さなお店と一緒に取り組むような企業活動まである。どんなフィールドであれ、何らか活躍できる場所を提供できる会社なので、ものづくりに興味がある人は是非来てほしいということだ。

TIS株式会社:ITアーキテクトやフルスタックエンジニアを積極的に採用中

 総合ITサービス企業であるTIS株式会社では現在、社会解決の課題をテーマとしたテレビCMを打ち出したり、Fintanというサイトで技術情報や実際の働き方をオープンにしたりするなど、企業広報についても多岐にわたるアプローチを実施しているとのこと。エンジニア職として求める人材を尋ねると、ITエンジニアの採用を担当する田伏氏は「2軸に分かれる」と語る。

TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 テクノロジー&エンジニアリングセンター センター長の田伏裕氏

 ひとつはシステムを設定・構築できるITアーキテクト人材。従来の受託開発のほか、新たにサービスを開発するシーンにおいても不可欠で、引っ張りダコの状態だとのことだ。

 もうひとつは、フルスタックエンジニアだ。近年はサービス開発のスピードについていくためにアジャイルで開発するニーズが高まっており、技術も多様化している。こうしたなか、一人でさまざまな技術をもち、自分で技術の選定もできるし開発もできるようなエンジニアが必要とされているそうだ。

 こうした人材は社内においても強い需要があり、顧客の課題解決に日々取り組む、いわゆる「現場部門」からも、技術のエキスパートとして常に声が掛かり続けているような状態なのだという。

 そこでTISではITエンジニア志向の高い学生を射止めるため、新卒向けには「ちょっといけていない仮想的なシステムをチームで取り組んで直していく」という擬似的なチーム開発をインターンとして用意している。

 また中途採用についても、経験がありすぐに即戦力となる30代は市場の競争が高いため、若くてもOSSへのコントリビュートやイベントに参加している人などは、多少経験が浅くても、これからの成長を見込んで積極的に採用しているとのことだ。

TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 テクノロジー&エンジニアリングセンター エキスパートの前出祐吾氏

 求める人材は、周りとの関係をきちんと作り、みんなで決めたことに対してやりきれる人。技術力については、あるに超したことはないが、新卒の場合は技術力だけがすべてではなく、仮に技術力がなくても、チームのなかで自分がどう立ち回りができるか、コミュニケーションをとって皆をリードしてゴールに向かって推進できるヒューマンスキル的な力も確認するという。

日鉄ソリューションズ株式会社:技術力を社会課題解決へとつなげられるものづくり人材を評価

 日本製鉄という技術とものづくりを重んじる企業グループに属する日鉄ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)は、新卒採用のうち80パーセントが理系、そして90パーセントがエンジニア職であるというSIerだ。

 採用担当を務める鹿島氏にITエンジニア採用について尋ねると「プログラミングできない人はSEとしての活躍にはつながりづらい。文系でプログラミング経験をお持ちでない志望者も選考に参加されてはいるが、技術への志向性は厳しく確認している」と回答を得た。

日鉄ソリューションズ株式会社 人事本部 人材開発部 採用グループリーダーの鹿島亜紀彦氏

 出自が製鉄業というものづくりの会社なので、技術力・実装力をエンジニア志望者に対しては重視。SIerは協力会社のプログラマーやエンジニアを管理するプロマネ的な仕事がメインというイメージを持たれることも多いが、NSSOLのエンジニアは実装力を大事にしており、新卒入社後2〜3年は育成も兼ねて実装する業務を経験してもらうのだという。このため面接でも「プログラミング習得度や、IT技術に興味・関心があるかどうかを何度も確認する」(鹿島氏)とのことだ。

 ITエンジニア人材として注目しているのは、アジァイルまでできるトップクラスの人材。これからのNSSOLにおける事業を牽引できるような、プログラミングを使った社会課題を解決したり、学生時代から成果物を誰かに利用された経験があったりする、貴重な能力を持っているITエンジニアを探しているのだという。実際こうした人材はこれまでの採用活動だけではなかなかアプローチがしづらいため、NSSOLでは「こんなものを実装した」というプレゼンテーションに対して企業側から求人者へアプローチしていく「逆求人」のイベントなどで人材発掘しているとのこと。「逆求人イベントに参加する企業の多くはWeb系の企業。SIerである当社は珍しがられることも多い」(鹿島氏)が、希少なITエンジニア人材を積極的に採用したいと試みているそうだ。

 NSSOLでITエンジニアとして仕事をすることの魅力を尋ねると、コンサルから実装まで幅広く手がけられることが挙げられた。Web系企業の場合は自社サービスに仕事が限られることに対して、SIerであるNSSOLなら、転職することなくさまざまなお客さんのプロジェクトに参加できる魅力があるということだ。


富士通株式会社:主体性を持って周囲へ良い影響を与えられる人材を積極的に採用

 IT企業からDX企業へと変革しようとしている富士通株式会社。事業の変革などについて積極的に社外へ広報している影響もあるからか、最近では以前なら富士通に興味が低かったような人材の入社も増えてきているのだという。

 富士通が求めるのは、AIエンジニアやサイバーセキュリティエンジニア、データサイエンティストをはじめとする専門性の高い人材。しかし、そもそも日本はもちろん世界でも対象となるような人材の数は限られており、他社との取り合いも生じているとのことだ。

富士通株式会社 Employee Success本部 Engagement&Growth統括部 人材採用センター シニアマネージャーの原田剛志氏

 

 中途採用で求めるのは、スキルと知識、それにブラスして経験。その経験を富士通で再現できるかを重視する。担当する原田氏によると、以前は、富士通のカルチャーに合うかどうかを見ていたが、近年では富士通のカルチャーに合うか合わないかにこだわらず「仮に現状の富士通に合わなくても、社内へ良い影響をもたらすような人物か、その方が入社されることで新しい何かが生まれそうかという変化を見るように視点が変わった」(原田氏)のだそうだ。

富士通株式会社 Employee Success本部 Engagement&Growth統括部 人材採用センター シニアマネージャーの渡邊賢氏

 いっぽう新卒採用は中途採用と違って、業務としての経験や大規模プロジェクトへの参加もないので、その卵として資質を判断する。そのひとつとして挙げられるのが、社会人も含めたコンテストなどの場における経験。コンテストのような力を発揮する場があると評価しやすく、実際、良い成果を修めた人には、新卒一律の給与体系ではなく、個別の給与体系を提示することもあるという。

 新卒採用における判断基準として見るのは「伸びしろ」だと言う。担当の渡邊氏は「まず自分が主体にあり、富士通に入るということが、どういうことか分かっている人。富士通に入れば、自分では持ち得ない資産を使って何かコトを起こせる。富士通を使って自分だったらどんなことができるか、自分のテクニカルな部分とフィットしている内容を理解できている人。そういう人は、富士通に入っても、主体的に物事を進めていけるし、そういう人に伸びしろを感じる」と語った。

株式会社日立製作所:世界中の社会課題を解決したい、そのような志を持った方と是非一緒に仕事をしたい

 株式会社日立製作所がここ十年で強化しているのは、顧客とともにグローバルで起きる社会課題を発見し、その解決を行う社会イノベーション事業。その中核として位置付けているものが、日立製作所のアセットである「モノづくり技術」と「デジタル技術」を組み合わせ、サービス化することでマネタイズするビジネスモデルである。

 そこに求められるのは「ソリューションを考えられる人財」。その定義を採用担当の若月氏に尋ねると「ビジネスに繋がるサービスを作ることができること。それはビジネスの初めから終わりまでをひとつのストーリーに書きあげ、さらに他者を巻き込むことができる人財」を指すのだそうだ。

株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部 タレントアクイジション部 主任の若月氏

 かつてのビジネスは製品やサービスの仕様が決まっていたため、SEはそこにコミットメントすれば良かった。しかしいまは違う。ソリューションの種は顧客のそば(近く・現場)にあるため、SEもフロントに立って顧客と会話を繰り返すことで、顕在化されていない課題を引き出して、提案していかなければならない。

 そのために必要なものはコミュニケーション力。それには発想力や聞き出す力、言語力といった「正しく情報を伝える能力」「相手がそれを認識できたかを確認できる能力」「相手が自分に対して何を言いたいのかを認識できる能力」が必要だと若月氏は語る。

 また日立製作所ではグローバルでさらなる成長をする上で、全社員に対して「専門性」「リベラルアーツ」「ダイバーシティ(多様性)を受け入れるマインド」を求めるアビリティとして定義している。特にグローバルでのビジネス環境で新しい価値を⽣み出していくためには、バックグラウンドの異なる多様な価値観を持った人財や顧客との「インクルージョン(包摂性)」が一連の価値創造の根幹をなすことから、ダイバーシティを受け入れるマインドは不可欠であるという。

 採用活動においては、スキルとともに志向性を重視している。志向性というのは言い換えると志望動機。日立製作所で何をしたいのか、そのマインドを重要視するという。スキルはあくまでも“道具”の使い方であり、やるべきことがあるときの手段。後から身につけられると言う。実際、ITのビジネスドメインに配属される新卒社員の場合、入社後3ヵ月間はプログラミング教育をし、さらに3ヵ月間、事業部ごとに研修。その後Off-JT研修で身につけたスキルの使い方を、職場の指導員によってOJTで学んでいくプロセスがあるそうだ。

 日立製作所のような規模が大きい組織で仕事をする魅力は、社会に対してインパクトのある成果を出すチャンスがあること。「当社には幅広いビジネスドメインがあり、それぞれのビジネスで直面する社会課題の解決を通して研かれた、知識とスキルを持った人財がたくさん活躍している。このような多様な人財を組織力としてひとつのベクトルに束ねることで、社会に対して大きなインパクトを与える仕事をしている。日立製作所で世界中の社会課題を解決したい、そのような志を持った方と是非一緒に仕事をしたい」(若月氏)というメッセージが語られた。

株式会社サイバーエージェント:技術への好奇心が強い“素直でいいやつ”がマッチする企業

 採用のミスマッチをゼロにしたいと考えるサイバーエージェント。エンジニア職として新卒採用する人数のうち半数は、サーバーのバックエンドエンジニアだという。それはゲーム・広告・メディアサービスなど、さまざまな事業を手がけているなかでも、バックエンドエンジニアはどの事業にも必要な人材であることが理由だそうだ。加えて機械学習・データサイエンティストの領域でも年々採用人数を増やしており、2018年度卒に比べて2020年度卒では2倍の人数を採用している実績があるとのこと。

株式会社サイバーエージェント 技術人事本部 新卒エンジニア採用責任者の峰岸啓人氏

 選考過程について新卒エンジニア採用を担当する峰岸氏に尋ねると、選考においては全5回の面接を実施。1回目の面接では現場のエンジニアがスキルをジャッジし、技術的な好奇心を確認。残り4回の面接で、いまの技術力とこれからの伸びしろを総合的に判断しているとの回答。またインターンシップを「適切なスキルジャッジできる場面」(峰岸氏)だと考えており、新卒採用者の40~60パーセントはインターンシップ経験者だという。

 選考方法については、現状有しているスキルだけでなく伸びしろを大事にするため、2018年度卒まで実施していたコーディングテストを、以降は取りやめた。コーディングテストはAPIの実装が中心であったため、ゲームクライアントエンジニアや機械学習エンジニア、データサイエンティストにとって不利で、貴重な人材を採用できない機会損失の可能性があると考えたためだ。

 欲しい人材は、シンプルに言うと「素直でいいやつ」。技術への好奇心が強く、仕事を任せられる素養があることを重視。また技術・組織・チーム、どの分野でもよいので、周囲をリードできる人。過去の実績から、そういう人は技術が伸びており、伸びしろが担保できるからだと言う。中途採用は新卒ほど伸びしろを重要視しないが、カルチャーへのマッチングは大事にしている。スキルがあってもカルチャーに合わなければ、なかなか採用にはつながらないのだそうだ。

 サイバーエージェントの強みを尋ねると、新卒採用を担当する峰岸氏は「事業領域が多岐に渡っていて技術的にもさまざまなチャレンジができること。挑戦・裁量権も高い」と語る。

 採用の幅を大卒以外にも広げており、専門学校・高専はもちろん、今年は高校生も採用した実績があるとのこと。また今後さらに採用を拡大していきたい人材として、主にSIerなどを志望するような理系研究室の学生に、サイバーエージェントで働くことの魅力を知ってほしいとのこと。そうした学生さんへこれまで以上に企業としての認知を高めることで、優秀な人材獲得に繋げていきたいと峰岸氏は語った。

株式会社ディー・エヌ・エー:高いスキルを持つエンジニアにとって成長環境として魅力的な職場

 DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)がエンジニア職として求めている人材は、「技術・モノづくりが好き」で「自走しつつ協働できる」素養を持っているかどうか。この2つを選考では特に厳しく確認している。

株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材開発部 新卒グループの村上僚氏

 上記の観点について新卒採用担当の村上氏に尋ねると、まず「技術・モノづくりが好き」という点についていえば、現在のエンジニア職採用においてはプログラミング未経験者を採用していないのだという。その理由として、インターネットとPCさえあれば無料でプログラミングができる昨今において、技術やモノづくりが好きなエンジニア志望者なのに、プログラミング未経験というのは「矛盾する」という考えがあるからだそう。面接では、自分がこれまでに作った成果物について、「それをどう作った」「どうして作った」「誰かに使ってもらったか」「フィードバックをもらったか」「フィードバックをどう反映したか」など深掘りすることで、思考の深さや、モノづくりへの関心具合を確認するとのこと。

 「自走しつつ協調できること」という観点を重視する理由については、DeNAという企業が持つカルチャーが大きく関わっている。DeNAは球型の組織であり、新卒であっても経験者であっても、DeNAという球の表面積を担い、自らの責任を果たすことが求められるためだという。あまりに保守的な志向を持つ人や、変化への順応が苦手な人だと、たとえ能力が高くても会社とマッチングしない可能性が高いことから、採用にはつながらない傾向があると言う。

 「DeNAはテックカンパニーであり、技術的なレベルは日本でもかなり高く、エンジニアが技術的に成長しやすい環境」だと、DeNAで働く魅力を村上氏は語る。また複数の事業領域において、新規事業である「0から1にするフェーズ」から、スケールする段階の「10から100にするフェーズ」まで、さまざまな段階を経験できることもポイント。DeNAで働くエンジニアは、こうした経験を踏んで、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、そして、セキュリティやインフラなどのスペシャリストなどそれぞれのキャリアを築いていくのだそうだ。

 加えてDeNAで働く魅力としては、人材の流動性や多様性を歓迎していることも挙げられるとのこと。実際、入社後エンジニアとしての能力を高め、そこから転職や起業の道を歩む人も多いのだそう。そうした起業意欲を企業として受け止めるべく、社内起業を支援するような制度も持っているとのことだ(編集部注:詳細はデライト・ベンチャーズを参照されたい)。


KDDI株式会社:通信を基盤に“やりたいこと”に取り組み、成果を出せる人材を求める

 KDDI株式会社は近年、新卒・中途採用ともにポテンシャル以外にプロフェッショナルとしてのスキルを持つ人物を求めるように変わった。その一環として、従来の新卒一括採用に相当するOPENコース以外に、経験やスキル・志望に応じて初期配属先を確約するという配属先を確約するジョブ型のWILLコースが用意されている。

KDDI株式会社 人事本部 人材開発部 採用グループ グループリーダーの山田幸功氏

 WILLコースでは、クラウドアプリエンジニアやセキュリティエンジニア、ネットワークエンジニア、データサイエンティストなどの分野で活躍できる⼈材を求めている。たとえばクラウドアプリエンジニアならスクラム開発をする環境に配属され、そのスキルをすぐに発揮できるという。そのためWILLコースでは採用の際、スキルを大きく評価。たとえば学生時代に「ビジネス用のアプリケーション開発をしていた」や「バイトのリーダーをして工程管理からコーディングまでやっていた」ということであれば、より高く評価すると採用担当の山田氏は語る。

 KDDIが求めるのは、やり抜く力を持った人。学生時代の研究やサークル活動でもよいが「単に所属していただけではなく、問題解決のために行動していたかどうか。それにプラスでスキルがあることで成果が出せる人材という評価になる」(山田氏)のだそうだ。よって面接においても「私はこのスキルがあります。こういうことができます」と単に話す人ではなく「私はこういうことがやりたくて、それを実現できるスキルがあります」と自分の思いを持って語れる人と一緒に働きたいのだという。中途採用はポジション採用のため、求められるスキルはポジションごとにさまざまではあるものの、ベースとして求める人物像として同じような観点があるとのこと。

 KDDIで働くことの魅力は、通信という基盤を中心に、ライフデザイン、スマートフォンなどのデバイス、金融などを組み合わせて、利用者へさまざまな価値を提供できることが挙げられるという。「自分のやりたい分野と掛け合わせて仕事に取り組めるので、やれることの幅が広い企業だ」と山田氏は語る。また事業会社なので、自分が考えたものが、そのままKDDIの事業に活きていくということを直に体験できること、自分の仲間がリリースまでもっていくところを体験できることも、大きい魅力としてあるのだそうだ。

株式会社NTTドコモ:事業方針に共感し、専門的なスキルを持つデータ活用人材を採用強化中

 NTTドコモでは今年の新卒採用から、従来通り配属先を定めないオープンコースのほか、学んできたスキルを活かす部署への配属を確約するジョブ型のWILLコースを用意した。WILLコースでは、一次面接・二次面接を現場の担当者が担当する。WILLコース設立の背景には「スキルの多様化がある」と新卒採用を担当する室住氏は語る。

(写真左から)株式会社NTTドコモ 人事部 人事採用・第二人事担当 担当課長の外村彩氏、同部 人事採用担当 担当部長の松野亘氏、同部 人事採用・人事採用担当 担当課長の室住篤子氏

 なかでも必要としているのは、データ活用人材。「dアカウント」をさまざまな企業と連携する戦略において欠かせないスキルとなるためだ。具体的には、データエンジニアリング・データサイエンティスト・デジタルマーケターの3職種。こうした職種は中途採⽤においても人材確保が難しいため、新卒での育成も含めて増やそうとしているとのこと。イベントや逆求人などを使った採用もしているのだそうだ。

 採用評価基準には、さまざまな軸を選考時に確認するものの、何らかの専門的なスキルを有していることに加えて、ドコモでやりたいことを持っていること/ドコモの事業方針に共感できることを重視。新卒採用において技術スキルは必須ではないが、「ドコモに興味がある」だけでなく「大学で研究に専念している」や「プログラミング⼤会に出ている」といった実績もあれば、面談評価が⼤きくアドバンテージになるのだという。

 また選考活動そのものを「会社をアピールする場」とし、ドコモから企業の魅力や風土を選考参加者へ伝えることを非常に大切にしているとのこと。選考が進むにつれて、よりドコモのことを知ってもらい、最終的に、相思相愛での採用を目指しているのだそうだ。

 中途採用は新卒採用と違い、即戦スキルを求めると担当の外村氏は言う。また採用全般を担当する松野氏によれば「たとえばフィンテックでの経験など、他業種での経験もその方の価値である」という考えを持っているとのこと。中途採用はポスト型の採用となるが、分野・部署によって風土や働き方が異なるため、個人での開発を得意とする人は、スキルを持っていても、チーム開発を主体とするポジションしか空いていない場合は採用を見送ることもあるそうだ。

 NTTドコモは事業範囲が広く、さまざまな活躍のフィールドがある。昨今では、5GとAIを組み合わせた社会課題解決や地域創生をしたいという志望者も増えてきているという。またIoTと農業・水産業を組み合わせた第一次産業にも力を入れており、そうした分野で活躍したい人材も採用したいということだ。

ソフトバンク株式会社:良質な仮説を構築し課題解決できる人材、尖った人材を求める

 新卒エンジニアの大半が何らかのプログラミングスキルを持っているというソフトバンク株式会社。プログラミングスキルを求めるのは、通信の上で提供される新規ビジネスにおいて、ソフトウェアが重要だからだ。

 こうした人材を集めるために実施しているのが、就労体験型で採用に直結するJOB-MATCHインターン。コロナ渦のため昨年はオンラインワークショップで代替となったが、参加した人材の40パーセントが入社見込みだという。またPayPayの決済データを用いたデータハッカソンやアプリ開発のハッカソンなど、エンジニアが面白いと思えるものを題材とした催しも多数実施。こうした採用イベントを通じて、特に高いスキルを持つエンジニアにアプローチしたいのだそうだ。

 通常の新卒採用選考では、内定期間中に配属を検討するOPEN選考と、希望業務での配属を確約するJOB-MATCH選考を用意。文章より技術力をアピールしたいという志望者には、エントリーシート選考をプログラミング技術のスキルテストに代替することもできるとのこと。

 またソフトバンクでは、キャリア採用も積極的に行っている。配属先で多いのは「法⼈事業統括」と「テクノロジーユニット」。法人事業統括は、クラウド・IoT・セキュリティの3軸。テクノロジーユニットは、通信技術やAI、ビッグデータ、その他先端技術、セキュリティなど、いわゆる新技術の企画・開発分野だ。ダイレクトスカウト、リファラル社員紹介、採用イベントのほか、オウンドメディアを使った訴求もしながら、転職市場においても貴重な高度IT人材を探しているということだ。

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長の足立竜治氏

「ソフトバンクの企業理念は“情報革命で人々を幸せに”。それはつまるところ、課題解決の繰り返しを意味する。どれだけ本質を問う力があって、良質な仮説が立てられて、課題に対して解決に導けるかというロジカルな思考力が求められる」と採用担当の足立氏は語る。

 

 志望者へのメッセージを尋ねると「ソフトバンクは事業範囲が広く、自分で細かいコードを書く部署から、設計だけして実装は委託する部署まである。尖ったスキルを持った人も、きちんとマッチングできる採用をしていきたいと考えているので、是非、門戸を叩いてほしい」(足立氏)との回答があった。

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