サムスン電子のスマートフォンといえばフラッグシップの「Galaxy Sシリーズ」、ペン対応の「Galaxy Noteシリーズ」、折りたたみディスプレーの「Galaxy Zシリーズ」、カジュアル路線の「Galaxy Aシリーズ」、コスパ重視の「Galaxy Mシリーズ」そして新興国で主にオンライン販売される「Galaxy Fシリーズ」と6つのブランドに分かれています。日本でも複数のモデルが展開中ですね。しかし「アルファベット+数字」というモデル名も、製品数が多いとどれがどんな製品なのかわかりにくく、親しみも持ちにくなりそうです。
そこでサムスンは韓国向けに新しいGalaxyとして「Galaxy Jump」と「Galaxy Quantum 2」を2021年4月に発売しています。
Galaxy Jumpは背面を見ると日本でも登場した「Galaxy A32 5G」とよく似ています。6.5型1600x720ドットのディスプレー、4800万画素+800万画素+500万画素+200万画素のクワッドカメラ、4GBメモリーと64GBストレージ、5000mAhバッテリーとすべて同じ。実はGalaxy JumpはGalaxy A32 5Gの韓国キャリア(KT)向けの製品で、ハードウェアは同じです。
韓国は日本や諸外国と比べスマートフォンの参入メーカーが少なく、LGが事業撤退するとサムスンとアップル以外で目立つメーカーはシャオミくらいしかありません。そのためサムスンは多数の製品展開をしています。MVNO向けなど低価格モデルとしてGalaxy Aシリーズの4Gモデルも積極展開しており、すでに「Galaxy A32」(4G版)も発売中。そこにほぼ同じ名前のGalaxy A32 5Gが投入されるとなると、消費者に混乱を招きます。国ごとに同じモデルで5Gと4Gの別モデル展開をうまくわけているのですが、韓国ではより多くの製品を出さなくてはならないため、このような状況になってしまうのでしょう。
Galaxy Jumpを販売するキャリアのKTにとっても、数字モデルよりニックネーム的な製品のほうが差別化しやすいというメリットもあるでしょう。Galaxy Jumpは低価格な5Gモデルなので、5G利用者を増やしたいキャリアにとっても戦略的な製品です。なお、韓国では39万9300ウォン(約3万8600円)ですが、韓国キャリアは定価販売時に基本料金の割引を行なうので、実質支払額はより安くなります。なお、料金割引を受けずに端末割引を受けると2年契約で22万6800ウォン(約2万1900円)です。
一方、Galaxy Quantum 2は「2」のモデル名が付くことからわかるように、先に2020年3月に韓国で発売された「Galaxy A Quantum」の後継機。初代モデルはGalaxy Aシリーズの一員として出てきましたが、これはベースモデルが「Galaxy A71 5G」だったからでしょう。Galaxy A QuantumとGalaxy A71 5Gは同一ベースの製品。ただし韓国キャリアのSKテレコムからの販売で、同社が力を入れる量子暗号(Quantum Cryptography)技術を使ったセキュリティーチップ「SKT IDQ S2Q000」を搭載。Quantumの名前はニックネームであるだけではなく、高セキュアな製品であることもアピールしています。
Galaxy Quantum 2も同様に量子暗号によりセキュリティーを高めています。一般的な暗号化技術では暗号を数値ジェネレーターで生成するため、その暗号を逆解析することを100%防ぐことができません。SKテレコムが採用するシステムはID Quantique社の量子乱数ジェネレーター(QRNG=Quantum Random Number Generator)を採用し、CMOSセンサーにあてた光のノイズから乱数を発生することで逆算できない暗号を生成できるといいます。
Galaxy Quantum 2はベースとなるモデルがありませんが、「Galaxy A82 5G」として出てくるだろうともいわれています。ディスプレーは6.7型の3200x1440ドットと高解像度ですが、カメラは6400万画素+1200万画素(超広角)+500万画素、フロント1000万画素とやや控えめ。バッテリーは4500mAhです。単体価格は69万9600ウォン(約6万7600円)。
Galaxy QuantumシリーズはSKテレコム開発のチップ搭載なので韓国国内だけの投入でしょうが、Galaxy Jumpのように、既存モデルのリブランド製品は今後日本でも投入があるかもしれません。Galaxy Aシリーズは世代ごとに一桁目の数字が「0」「1」「2」と上がっていきますが、日本では現在「Galaxy A41」(4Gモデル)、「Galaxy A51 5G」「Galaxy A32 5G」と、それぞれの製品名だけを見ても区別がつきにくいのが実情です。数年前のサムスンは固有名詞を付けたモデルの乱発で消費者を混乱させましたが、キャリアの目玉商品として固有名モデルの復活は十分ありではないでしょうか。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む
★ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります